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#3893 決算分析 : 株式会社All Ads 第21期決算 当期純利益 554百万円

デジタル広告の世界は、単にクリック数や目先の売上を追い求める時代から、顧客一人ひとりが長期的にどれだけの価値をもたらしてくれるか、すなわち「LTV(顧客生涯価値)」を最大化する時代へと進化しています。この高度なマーケティング手法を事業の核に据え、大変革を遂げた企業があります。かつては恋活・婚活マッチングアプリ「Omiai」の運営元として知られた、株式会社ネットマーケティングです。

同社は「Omiai」事業をスピンオフし、2023年に「株式会社All Ads」へと社名変更。LTVマーケティングの専門家集団として新たなスタートを切りました。今回は、その変革後の初年度ともいえる同社の決算を読み解き、新たな船出を切った企業の経営実態と未来への戦略に迫ります。

All Ads決算

【決算ハイライト(21期)】
資産合計: 5,569百万円 (約55.7億円)
負債合計: 3,788百万円 (約37.9億円)
純資産合計: 1,780百万円 (約17.8億円)
当期純利益: 554百万円 (約5.5億円)
自己資本比率: 約32.0%
利益剰余金: 933百万円 (約9.3億円)

【ひとこと】
まず注目すべきは、5.5億円という非常に高い当期純利益です。事業の大きな転換期にありながら、力強い収益性を確保しています。自己資本比率も32.0%と健全な水準を維持しており、財務基盤は安定しています。事業の選択と集中が、見事に結果として表れている印象です。

【企業概要】
社名: 株式会社All Ads
設立: 2004年
株主: 株式会社Macbee Planet
事業内容: クライアント企業の顧客生涯価値(LTV)最大化を目的とした、データとテクノロジーを駆使する「LTVマーケティング事業」を展開。

www.net-marketing.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
株式会社All Adsの事業は、その名の通り「LTVマーケティング事業」に集約されています。これは、単発の広告効果で終わらせず、クライアントの事業成長に永続的に貢献することを目的とした、コンサルティング、テクノロジー、クリエイティブが三位一体となったサービスです。

✔LTVコンサルティング
同社の原点であるアフィリエイト広告代理店としての豊富な知見を活かし、クライアントのビジネスモデルに深く入り込んだコンサルティングを提供します。サービスの申込数や商品購入数といった目先のKPIだけでなく、その後の来店数、契約金額、課金金額など、事業の根幹となる指標までを追い、LTV最大化に向けた最適な戦略を立案・実行します。

✔独自開発のテクノロジー
LTVマーケティングを支えるのが、自社開発のテクノロジーです。24時間体制の広告監視システムや、RPAによる作業自動化、年間7,000件の施策結果をデータベース化したシミュレーションなど、データとテクノロジーを駆使してマーケティングの精度と効率を極限まで高めています。これにより、人力では不可能な規模での最適化を実現しています。

✔成果を追求するクリエイティブ
広告手法やメディアの特性に合わせて、最適なクリエイティブを制作します。顕在層に直接訴えかけるランディングページから、潜在層の心をつかむ動画広告まで、LTV向上という一貫した目的のもと、高速でPDCAを回し、成果を出し続けるクリエイティブを提供しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
5.5億円という高い純利益は、どのような経営環境と戦略によってもたらされたのでしょうか。

✔外部環境
デジタルマーケティング業界は競争が激化する一方、Cookie規制などのプライバシー保護強化の流れにより、データに基づいた本質的なマーケティング、すなわちLTVの重要性がますます高まっています。多くの企業が広告費用の最適化に悩む中、明確に「LTV最大化」を掲げる同社への需要は増加傾向にあると考えられます。

✔内部環境
2023年にマッチングアプリ「Omiai」事業を切り離し、LTVマーケティング事業に経営資源を集中させたことが、今回の好業績の最大の要因でしょう。かつて自社で大規模なBtoCサービスを運営していた経験は、クライアントの課題を深く理解し、実践的な提案を行う上で他社にはない大きな強みとなっています。また、同年から株式会社Macbee Planetの傘下に入ったことで、より強固な経営基盤とデータ・技術面でのシナジー効果が期待されます。

✔安全性分析
貸借対照表を見ると、総資産約55.7億円のうち、純資産が約17.8億円を占め、自己資本比率は32.0%と健全な水準です。流動資産・流動負債が大きいのは、クライアントの広告費を預かり、媒体社へ支払うという広告代理店特有の事業モデルによるものです。9.3億円に上る利益剰余金と、今期の5.5億円という高い当期純利益は、同社の事業が安定したキャッシュフローを生み出す力を持っていることを示しており、財務的な安定性は高いと評価できます。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「LTV最大化」という明確で専門性の高い事業領域
・自社サービス「Omiai」の運営で培った、実践的なマーケティングノウハウ
・広告監視や作業自動化を支える、独自開発のテクノロジー基盤
・親会社であるMacbee Planetとのシナジー効果

弱み (Weaknesses)
・「All Ads」としてのブランド認知度はまだ発展途上
・デジタル広告市場の景気変動や、特定の大口クライアントの動向に業績が左右されるリスク

機会 (Opportunities)
Cookieレス時代における、LTVマーケティングへの需要の高まり
・DX化の進展に伴う、あらゆる業界でのデータ活用ニーズの拡大
・親会社との連携による、新たな顧客層の開拓やサービス開発

脅威 (Threats)
・大手広告代理店やコンサルティングファームとの競争激化
・広告プラットフォームの規約変更やアルゴリズム変動のリスク
・クライアント企業によるマーケティングの内製化の流れ


【今後の戦略として想像すること】
「LTVマーケティング」のリーディングカンパニーとして、その地位を確固たるものにしていく戦略が考えられます。

✔短期的戦略
まずは「All Ads」のブランドを市場に浸透させることが最優先です。今回の好決算を背景に、セミナー開催やメディア露出を通じてLTVマーケティングの有効性を訴求し、新たなクライアントを獲得していくでしょう。また、親会社Macbee Planetとの連携を深め、両社の顧客基盤や技術を組み合わせた共同提案を強化していくことが予想されます。

✔中長期的戦略
単なる広告代理・コンサルティング業務に留まらず、自社開発のテクノロジーSaaSとして提供するなど、事業モデルの多角化も視野に入ってくるでしょう。また、特定の業界に特化したバーティカルメディアの運営をさらに拡大し、独自のデータ資産を構築することで、他社にはない付加価値を生み出していくことが期待されます。


【まとめ】
株式会社All Adsは、「ネットマーケティング」という社名と、その代名詞であった「Omiai」事業を過去のものとし、「LTVマーケティング」の専門家集団として力強い再出発を果たしました。今回の決算で示された5.5億円という高い当期純利益は、その経営判断が正しかったこと、そして同社の提供する価値が市場に強く求められていることの証明に他なりません。

デジタル広告が新たな時代を迎える中、データとテクノロジーを駆使してクライアントの持続的な成長を支援する同社の役割は、ますます重要になるでしょう。これからも、LTVマーケティングのパイオニアとして、業界をリードしていくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社All Ads
所在地: 東京都港区南青山一丁目2番6号
代表者: 靱江 佑介
設立: 2004年7月9日
資本金: 428,525千円
事業内容: ユーザーの利用金額・継続期間を最大化し、広告費用効果を最適化するためのデータを駆uscitaデジタルマーケティング(LTVマーケティング)事業
株主: 株式会社Macbee Planet

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