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#3489 決算分析 : 株式会社フードプラス・ホールディングス 第54期決算 当期純利益 42百万円

九州・中国地方で「レストラン庄屋」や「定食屋百菜 旬」といった和食レストランを展開し、50年以上にわたって地域の食文化を支え、多くの人々に「和みの食卓」を提供してきた庄屋フードシステムグループ。その成長と変革の歴史を牽引し、グループ全体の羅針盤として未来への航路を描いているのが、今回焦点を当てる「株式会社フードプラス・ホールディングス」です。

1971年に長崎県佐世保市の一軒の食堂から始まったこのグループは、時代の変化の波に乗り、和食レストランから天ぷら専門店、海鮮飯屋へと業態を拡大。さらにはホテル事業や給食事業も手掛けるなど、果敢に多角化を進めてきました。今回は、近年の事業の「選択と集中」を経て、現在の中核事業である外食レストラン事業を統括する、この持株会社の最新決算を読み解きます。グループ全体の舵取り役として、どのような経営戦略を描いているのか、その驚異的とも言える強固な財務内容から探っていきます。

フードプラス・ホールディングス決算

【決算ハイライト(第54期)】
資産合計: 720百万円 (約7.2億円)
負債合計: 79百万円 (約0.8億円)
純資産合計: 641百万円 (約6.4億円)

当期純利益: 42百万円 (約0.4億円)

自己資本比率: 約89.0%
利益剰余金: 582百万円 (約5.8億円)

【ひとこと】
まず驚かされるのが、自己資本比率が約89.0%という、鉄壁とも言える驚異的な高さです。これは実質的な無借金経営であることを示し、財務基盤は盤石そのものです。42百万円の当期純利益は、主に子会社である庄屋フードシステムからの配当によるものと考えられます。グループ全体の司令塔として、極めて安定した経営を行っていることがわかる決算です。

【企業概要】
社名: 株式会社フードプラス・ホールディングス
設立: 1971年9月
事業内容: グループ会社(株式会社庄屋フードシステム)の管理・経営指導などを行う純粋持株会社

www.foodplus-hldgs.com


【事業構造の徹底解剖】
株式会社フードプラス・ホールディングスは、自らは直接的な店舗運営などの事業を行わず、傘下にある事業会社の株式を保有し、グループ全体の経営戦略の策定や管理、経営資源の最適配分を行う「純粋持株会社ホールディングカンパニー)」です。

✔グループ経営の司令塔
同社の最大の役割は、グループ全体の経営方針や中長期的なビジョンを描き、その実現に向けて舵取りを行うことです。傘下の事業会社である「株式会社庄屋フードシステム」の経営を監督し、財務戦略やブランド戦略、大規模な投資判断などを主導します。

✔中核事業会社「株式会社庄屋フードシステム」
グループの収益のほぼすべてを生み出す、事業運営の中核を担う会社です。
・総合和食「レストラン庄屋」
・健康志向定食「定食屋百菜 旬」
・天ぷら専門店「那かむら」
・海鮮飯屋「おさかな家族」
という、特徴の異なる4つの和食ブランドを、九州・中国地方を中心に約100店舗展開しています。この事業会社が生み出す利益が、配当などの形で親会社であるフードプラス・ホールディングスに還元され、グループ全体の成長投資の原資となります。

✔「選択と集中」の歴史が示すもの
同社の沿革を詳しく見ると、その経営戦略の変遷がうかがえます。過去には、長崎県佐世保市の「セントラルホテル佐世保」や「ホテルローレライ」、さらには佐世保重工業から買収した給食事業会社など、外食事業以外の分野にも積極的に進出していました。しかし、近年これらの事業を他社へ譲渡しています。これは、グループの経営資源を、創業以来の強みであり、最も競争優位性を持つ「和食レストラン事業」に集中させるという、明確な経営判断選択と集中)があったことを示しています。

✔本社移転が意味する未来への意志
2022年に、創業の地である長崎県佐世保市から、九州最大のビジネスハブである福岡市博多区へ本社を移転したことも、重要な戦略的決断です。これは、今後の成長戦略において、九州全域、さらには西日本へと事業展開を加速させていくという、強い意志の表れと解釈できます。


【財務状況等から見る経営戦略】
鉄壁とも言える財務数値から、同社の経営戦略を分析します。

✔外部環境
外食産業は、コロナ禍からの回復という追い風があるものの、深刻な人手不足、そして食材費・光熱費・人件費のトリプルコスト高という、極めて厳しい経営環境に直面しています。このような状況下で生き残り、成長を続けるためには、経営の効率化、DXの推進、そして変化し続ける消費者ニーズへの迅速な対応が必須条件となっています。

✔内部環境
当期純利益42百万円は、主に100%子会社である庄屋フードシステムからの受取配当金によるものと推察されます。事業会社である庄屋フードシステムの当期純利益(172百万円)の一部が、親会社である同社の利益として計上される構造です。そのため、ホールディングス単体の収益額の大小よりも、グループ連結での収益性が重要となります。

✔安全性分析
自己資本比率が約89.0%という数値は、企業の財務安全性を図る上で、これ以上ないほどに強固であることを示しています。負債が非常に少なく、実質的な無借金経営です。この鉄壁の財務基盤は、過去に譲渡したホテル事業や給食事業の売却益などが、純資産として内部に厚く蓄積された結果である可能性も考えられます。この潤沢な自己資金は、将来、新たな店舗を出店する際の投資や、魅力的なM&Aの機会が訪れた際に、銀行からの借入に頼ることなく、迅速かつ機動的に実行できる、グループにとって最大の「戦略的な武器」となります。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・50年以上の歴史を持つ「庄屋」を中核とした、地域社会における高いブランド力と強固な顧客基盤。
・多様な顧客ニーズや立地条件に柔軟に対応できる、子会社が展開する巧みなマルチブランド戦略。
自己資本比率89%という、いかなる経営環境の悪化にも耐えうる、圧倒的に強固で健全な財務基盤。
・過去の多角化から一転し、得意分野に集中するという「選択と集中」を断行できる、明確な意思決定能力。

弱み (Weaknesses)
・グループ全体の収益が、現在、子会社である株式会社庄屋フードシステム1社の業績にほぼ100%依存している事業構造。
・外食事業という、景気や消費者のマインドの変動を受けやすい事業がグループの収益の柱であること。

機会 (Opportunities)
・健康志向や専門性志向など、ますます細分化する消費者のニーズに対応した、新たな外食業態を開発・展開する機会。
・強固な財務基盤を活かした、新たな事業領域へのM&Aによる進出や、出店エリアの拡大。
・DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による、グループ全体の経営効率化と、それによって生まれる新たなサービス創出の可能性。

脅威 (Threats)
・外食産業全体で深刻化している、人手不足と、それに伴う人件費の高騰。
・日本の人口減少に伴う、特に地方商圏の長期的な市場縮小。
・全国展開する大手外食チェーンや、特定のメニューに特化した新興勢力との競争激化。


【今後の戦略として想像すること】
この事業環境を踏まえ、株式会社フードプラス・ホールディングスが今後取りうる戦略を展望します。

✔短期的戦略
まずは、グループの収益の全てを稼ぎ出す中核事業会社、庄屋フードシステムが直面する、人手不足やコスト高騰といった喫緊の課題に対し、ホールディングスとして資金面や経営ノウハウ面での支援を強化することが最優先です。店舗運営の効率化を図るためのDX投資(モバイルオーダーシステムの導入や配膳ロボットの実験など)を、ホールディングスが主導することも考えられます。

✔中長期的戦略
鉄壁の財務基盤を活かした「新たな成長ドライバーの模索」が、中長期的な最大のテーマとなるでしょう。過去の経験から、外食事業とのシナジーが見込める分野、例えば、セントラルキッチンの機能を活かした食品製造事業や、人気メニューを商品化して販売する中食・EC事業などが考えられます。また、これまで未進出であったエリアで強みを持つ同業他社をM&Aのターゲットとし、一気に事業エリアを拡大するという、よりダイナミックな成長戦略を描く可能性も秘めています。


【まとめ】
株式会社フードプラス・ホールディングスは、九州を地盤とする和食レストランチェーン「庄屋フードシステム」を束ねる、グループ経営の司令塔です。第54期決算では、42百万円の純利益を計上しましたが、その真価は、自己資本比率約89%という、鉄壁とも言える驚異的な財務基盤にあります。1971年に長崎で創業し、レストランからホテル、給食事業へと多角化を進めてきた長い歴史の中で、近年は事業の「選択と集中」を果断に実行。最も得意とする外食事業に経営資源を集中させるという、明確な戦略を描いています。

このスリム化された事業構造と、過去の資産売却などによって得られたであろう強固な財務は、次の成長に向けた強力な武器となります。人手不足やコスト高など、外食産業を取り巻く環境は依然として厳しいですが、この盤石な経営基盤を活かし、M&Aなども視野に入れた新たな成長戦略を、機動的に実行していくことが予想されます。九州発の和食チェーンが描く、次なる一手から目が離せません。


【企業情報】
企業名: 株式会社フードプラス・ホールディングス
所在地: 福岡県福岡市博多区博多駅前1丁目9-3
代表者: 代表取締役社長 小澤 俊治
設立: 1971年9月
資本金: 50百万円
事業内容: グループ会社(株式会社庄屋フードシステム)の管理、経営指導など

www.foodplus-hldgs.com

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