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#3348 決算分析 : 株式会社インターナショナルシステムリサーチ 第32期決算 当期純利益 20百万円


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Google Workspace、Microsoft 365、Salesforce...。現代のビジネスシーンでは、複数のクラウドサービスを連携させて活用することが、業務効率化の鍵となっています。しかし、その利便性の裏側で、私たちは新たな課題に直面しています。サービスごとにIDとパスワードを管理する煩雑さと、巧妙化・増大し続けるサイバー攻撃のリスクです。

この「ID管理」と「セキュリティ」という2つの重要課題を同時に解決する技術として、今や企業の必須インフラとなりつつあるのが、シングルサインオン(SSO)や多要素認証(MFA)です。今回は、このクラウドセキュリティ分野で、純国産の認証サービス「CloudGate UNO」を開発・提供する「株式会社インターナショナルシステムリサーチ(ISR)」の決算を読み解き、ゼロトラスト時代に求められる企業の姿に迫ります。

インターナショナルシステムリサーチ決算

【決算ハイライト(第32期)】
資産合計: 993百万円 (約9.9億円)
負債合計: 665百万円 (約6.6億円)
純資産合計: 329百万円 (約3.3億円)

当期純利益: 20百万円 (約0.2億円)

自己資本比率: 約33.1%
利益剰余金: 88百万円 (約0.9億円)

【ひとこと】
総資産約9.9億円に対し、自己資本比率が約33.1%と健全な水準を維持しており、安定した財務基盤がうかがえます。当期純利益は20百万円と控えめですが、これは顧客獲得のためのマーケティング費用や、サービスの機能強化に向けた開発費を積極的に先行投資している、成長途上のSaaSビジネスの特徴と言えるでしょう。

【企業概要】
社名: 株式会社インターナショナルシステムリサーチ
設立: 1993年
株主: メンデス・ラウル、京セラコミュニケーションシステム株式会社
事業内容: クラウドサービス向けのセキュリティサービス「CloudGate UNO」を開発・提供する、ID管理(IAM)およびシングルサインオン(SSO)専門のSaaS企業

www.isr.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、100%自社開発のクラウド認証基盤サービス「CloudGate UNO」の提供に集約されています。このサービスは、企業が利用する様々なクラウドサービスへの入り口(Gate)を一つにまとめ、その通行を厳格に管理することで、企業の重要資産をサイバー攻撃から守る役割を果たします。

シングルサインオン(SSO)機能
「CloudGate UNO」に一度ログインするだけで、連携しているGoogle WorkspaceやMicrosoft 365、Salesforceといった複数のクラウドサービスに、追加のID・パスワード入力なしでアクセスできる仕組みです。これにより、従業員はパスワード管理の煩わしさから解放され、情報システム部門のID管理負担も大幅に軽減されます。

✔多要素認証(MFA)とアクセス制限
サービスの中核をなす、強固なセキュリティ機能です。従来のID・パスワードによる知識情報だけでなく、指紋や顔といった「生体情報」、スマートフォンアプリや物理的なセキュリティキーといった「所持情報」など、複数の要素を組み合わせて本人確認を行うことで、パスワード漏洩による不正アクセスを強力に防ぎます。さらに、アクセス元のIPアドレス(場所)、会社が許可した端末(証明書)、時間帯などでログインを細かく制限することができ、「ゼロトラスト」(社内外問わず、何も信頼しない)の考え方に基づいたセキュアなリモートワーク環境を構築できます。

✔ID管理(IAM)機能
従業員の入社、異動、退職に伴うアカウントの作成・権限変更・削除といった、IDのライフサイクル管理を一元的に行う機能です。これにより、情報システム部門の運用負荷を軽減すると同時に、退職者アカウントの放置といったセキュリティリスクを未然に防ぎます。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進と、それに伴うクラウドサービスの利用拡大は、同社の事業にとって最大の追い風です。また、ランサムウェア攻撃やフィッシング詐欺の急増を受け、企業のセキュリティ意識は飛躍的に高まっており、SSOやMFAはもはや一部の大企業だけでなく、あらゆる規模の企業にとって必須のセキュリティ対策となりつつあります。経済産業省などが策定する各種セキュリティガイドラインでもMFAが強く推奨されており、市場の拡大が制度的にも後押しされています。

✔内部環境
当期純利益は20百万円。売上高は非開示ですが、同社のようなSaaS(Software as a Service)ビジネスは、一般的に月額(または年額)課金によるストック型収益が中心です。顧客数が増えるほど収益は安定的に積み上がりますが、その顧客を獲得するための広告宣伝費や販売代理店への手数料、そしてサービスの競争力を維持・向上させるための研究開発費が先行して発生します。利益水準が比較的控えめなのは、こうした未来への先行投資を積極的に行っている成長フェーズにあるためと考えられます。

✔安全性分析
自己資本比率が約33.1%と、財務健全性の一つの目安である30%を上回っており、安定した財務基盤を確立しています。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約112%と100%を超えており、資金繰りにも問題はありません。約8,800万円の利益剰余金を確保しており、1993年の創業以来、インターネット黎明期から着実に利益を蓄積してきたことがわかります。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
クラウド認証という、今後の企業ITインフラに不可欠な成長市場に特化していること
・1993年の創業以来、30年以上にわたって培われた高い技術力とセキュリティに関する豊富なノウハウ
・全てのサービスを100%自社開発していることによる、迅速な機能改善や顧客ニーズへの柔軟な対応力
・1,500社、70万ユーザー以上という豊富な導入実績と、99.99%という高いサービス稼働率がもたらす信頼性

弱み (Weaknesses)
・国内外の大手IT企業(Okta、MicrosoftGoogleなど)がひしめく、極めて競争の激しい市場であること
・販売をソフトバンクなどの代理店に依存する部分が大きく、自社の直接的な営業力が今後の課題となる可能性

機会 (Opportunities)
・これまでセキュリティ対策が遅れがちだった、中堅・中小企業におけるクラウド導入とセキュリティ対策の本格的な普及
・パスワードを使わない次世代の認証規格「パスキー(FIDO2)」への対応を業界に先駆けて進めており、技術的な優位性を発揮できること
・従来の社内システム(オンプレミス)とクラウドサービスを併用する、ハイブリッド環境の認証ニーズの取り込み

脅威 (Threats)
MicrosoftGoogleが、自社のクラウドサービスに標準で搭載する認証機能を強化し、サードパーティ製SSO/MFAツールの必要性が低下するリスク
・より低価格な海外製SSOサービスの日本市場への参入による、価格競争の激化
・自社が提供するサービス基盤へのサイバー攻撃や、大規模なシステム障害の発生リスク


【今後の戦略として想像すること】
今後、同社はクラウド認証のスペシャリストとして、さらなる技術的優位性の追求と市場拡大を進めていくと考えられます。

✔短期的戦略
パスワードレス認証の切り札である「パスキー(FIDO2)」への対応を最大の武器として、セキュリティ意識が特に高い金融機関や大企業への導入を推進するでしょう。同時に、販売代理店との連携を強化し、IT人材や予算が限られる中堅・中小企業市場に対して、導入しやすく管理しやすいパッケージプランの提案を加速させることが予想されます。

✔中長期的戦略
SSO/MFAという「認証」の領域から、より広範な「IDガバナンス」の領域へとサービスを拡張していくことが考えられます。従業員の役職や所属に応じたアクセス権限の付与・剥奪を自動化するなど、企業のID管理全体を効率化・高度化するプラットフォームへと進化させるでしょう。また、主要株主である京セラコミュニケーションシステムとのシナジーを活かし、同社の通信インフラや幅広い顧客基盤を活用した共同ソリューションの開発・販売なども有力な選択肢です。


【まとめ】
クラウドセキュリティの専門家集団、株式会社インターナショナルシステムリサーチ。その決算は、自己資本比率約33.1%という安定した財務基盤のもと、主力サービス「CloudGate UNO」の機能強化や顧客獲得に向けた先行投資を行い、着実な成長を遂げている姿を映し出していました。同社は、インターネット黎明期の1993年から培ってきた深い技術力を武器に、企業のクラウド利用に不可欠な「安全な入り口」を提供する、まさに門番(ゲートキーパー)です。同社は単なるソフトウェア開発会社ではありません。それは、日々巧妙化するサイバー攻撃の脅威から日本企業の重要資産を守り、安全で便利なデジタル社会の実現に貢献する、サイバーセキュリティのプロフェッショナル集団なのです。


【企業情報】
企業名: 株式会社インターナショナルシステムリサーチ
所在地: 東京都中野区中野四丁目10番1号 中野セントラルパーク イースト 4階
代表者: 代表取締役社長 メンデス ラウル
設立: 1993年9月24日
資本金: 1億4,450万円
事業内容: クラウド認証基盤サービス「CloudGate UNO」の開発・販売(シングルサインオン、多要素認証、アクセス制限、ID管理など)
株主: メンデス・ラウル、京セラコミュニケーションシステム株式会社

www.isr.co.jp

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