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#3279 決算分析 : iビジネスパートナーズ株式会社 第19期決算 当期純利益 82百万円

人手不足、業務の属人化、そして加速するDXの波。多くの中小企業から大企業までが、経理や給与計算といった、事業に不可欠ながらも煩雑なバックオフィス業務の効率化という共通の課題に直面しています。もし、エネルギー業界の巨人とIT業界のトップランナーが、それぞれの知見を結集して設立したバックオフィスの専門家集団があるとしたら、どのようなソリューションを提供できるのでしょうか。

今回は、出光興産と伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の共同出資により誕生した、iビジネスパートナーズ株式会社の決算を分析します。企業の「守りの要」であるバックオフィス業務を、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とクラウドサービスで支える同社の事業と、その活動を支える鉄壁の財務基盤の秘密に迫ります。

iビジネスパートナーズ決算

【決算ハイライト(第19期)】
資産合計: 980百万円 (約9.8億円)
負債合計: 142百万円 (約1.4億円)
純資産合計: 838百万円 (約8.4億円)

当期純利益: 82百万円 (約0.8億円)

自己資本比率: 約85.5%
利益剰余金: 778百万円 (約7.8億円)

【ひとこと】
まず驚くべきは、自己資本比率が約85.5%という、ほぼ無借金経営を示す鉄壁の財務基盤です。資本金6,000万円に対し、その10倍以上にあたる約7.8億円もの利益剰余金を積み上げており、設立以来、極めて安定した高収益経営を続けてきたことがうかがえます。

【企業概要】
社名: iビジネスパートナーズ株式会社
設立: 2009年
株主: 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 (50%)、出光興産株式会社 (50%)
事業内容: 決算業務や給与計算業務のBPOアウトソーシング)サービス、および勤怠管理や経費精算などのクラウドサービスの提供。

i-bp.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、企業のバックオフィス業務を包括的に支援する「BPOサービス」と、それを補完する「クラウドサービス」の二つの柱で構成されています。その最大の強みは、出光興産とCTCという二つの親会社が持つ、それぞれのDNAに由来します。

BPOサービス(業務アウトソーシング
事業の中核であり、決算業務や給与計算といった、専門性と正確性が求められる業務を受託しています。同社の特徴は、単に作業を代行するだけでなく、顧客の業務プロセスを深くヒアリング・分析し、隠れた課題やボトルネックを特定した上で、最適な業務フローを再設計する点にあります。これにより、業務の属人化を防ぎ、顧客企業が本来注力すべきコア業務に集中できる環境を創出します。

クラウドサービス
BPOサービスと連携し、勤怠管理や経費精算といった、日常的に発生するバックオフィス業務を効率化する各種クラウドサービスを提供・販売しています。多種多様なSaaSの中から、顧客の業種や規模、課題に合わせた最適なツールを選定し、導入から運用までをサポートします。BPOクラウドサービスを組み合わせることで、企業のバックオフィス全体を俯瞰した、総合的なDX支援を可能にしています。

✔二つの巨人のDNA
同社は、エネルギー業界の雄・出光興産と、ITサービスの巨人・CTCの共同出資会社です。これにより、出光興産が長年培ってきた大規模組織における経理・給与業務の実践的なノウハウ(ユーザーとしての視点)と、CTCが持つ最先端のITソリューションやシステム構築能力(プロバイダーとしての視点)を、併せ持つという他に類を見ない強みを確立しています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
働き方改革の推進や、深刻化する人手不足を背景に、企業がノンコア業務を外部の専門家に委託するBPO市場は、今後も継続的な成長が見込まれています。また、DXの流れは不可逆的であり、バックオフィス業務の効率化・自動化を実現するクラウドサービスの需要もますます高まっています。同社が事業を展開する市場は、非常に良好な環境にあると言えます。

✔内部環境
出光興産とCTCという二つの強力な親会社の存在が、経営の安定性に絶大な影響を与えています。出光興産グループ自体が重要な顧客基盤であると同時に、両社からの信用力を背景に、安定した事業運営が可能となっています。専門スタッフがチームで対応するという体制は、サービスの品質を担保し、顧客との長期的な信頼関係を築く上で重要な要素です。

✔安全性分析
自己資本比率85.5%という数値は、企業の財務安全性を評価する上で、これ以上ないほどの理想的な水準です。総資産約9.8億円のうち、負債はわずか約1.4億円。事実上の無借金経営であり、外部環境の急変にも揺るがない、極めて強固な経営基盤を誇ります。利益剰余金が約7.8億円と、純資産の大半を占めていることからも、2009年の設立以来、長年にわたり安定的に高収益を上げ、それを堅実に内部留保してきたことがわかります。財務的な安全性は万全であり、将来の事業拡大に向けた投資も積極的に行える体力を持っています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・出光興産(ユーザー知見)とCTC(IT技術)のDNAを融合した、独自の事業ノウハウ。
自己資本比率85.5%という、鉄壁の財務基盤と豊富なキャッシュ。
BPOクラウドサービスを組み合わせた、包括的なバックオフィスDX支援能力。
・親会社グループという、安定的で強固な顧客基盤。

弱み (Weaknesses)
・事業の多くを親会社グループに依存している可能性があり、外部市場での競争力が未知数。
BPOサービスは労働集約的な側面もあり、専門人材の確保・育成が事業拡大の鍵となる。

機会 (Opportunities)
・国内企業における、人手不足を背景としたBPO市場の継続的な拡大。
・法改正(電子帳簿保存法など)に伴う、企業の経理業務DXニーズの増大。
・親会社での成功事例を武器とした、エネルギー業界など特定業種への横展開。

脅威 (Threats)
・大手コンサルティングファームや他のITベンダーとの、BPO・DX支援市場における競争激化。
BPO業務における、個人情報漏洩などのセキュリティリスク。
・景気後退による、企業のコスト削減意識の高まりと、アウトソーシング予算の抑制。


【今後の戦略として想像すること】
鉄壁の財務基盤と独自の強みを武器に、さらなる事業拡大を目指すと考えられます。

✔短期的戦略
まずは、既存の顧客基盤である親会社グループ内でのサービスをさらに深化させ、成功事例を積み重ねることが重要です。例えば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入支援や、AIを活用したデータ分析など、より高度なDXソリューションを提供することで、顧客の業務効率化に貢献し、自社の提供価値を高めていくでしょう。

✔中長期的戦略
親会社グループで培った「業界特化型のバックオフィスDX」のノウハウを武器に、外部市場への本格的な展開が期待されます。特に、出光興産で得た知見を活かし、同じエネルギー業界の企業や、全国に多数の事業所を持つような大規模小売業などに対し、業界特有の課題に踏み込んだBPOサービスを提案することで、他社との差別化を図り、新たな顧客層を開拓していくことが、次の成長ステージへの鍵となります。


【まとめ】
iビジネスパートナーズ株式会社は、単なる業務代行会社ではありません。それは、エネルギー業界の巨人が持つ「現場の課題」と、IT業界のトップランナーが持つ「解決の技術」を融合させ、企業のバックオフィスを根幹から変革する、ユニークなDXパートナーです。自己資本比率85.5%という要塞のような財務基盤は、顧客が安心して長期的に業務を任せられる、信頼の証です。人手不足という社会課題に真正面から向き合う同社が、これからも多くの企業の成長を支え、従業員がより創造的な仕事に集中できる環境を創り出していくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: iビジネスパートナーズ株式会社
所在地: 千葉県千葉市美浜区中瀬二丁目6番地1 WBGマリブウエスト17階
代表者: 代表取締役社長 岡田 悟
設立: 2009年4月1日
資本金: 6,000万円
事業内容: 決算・給与BPOサービス、出光系ガソリンスタンドのPOSシステムサポート、IT商材(クラウドサービス)営業
株主: 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 (50%)、出光興産株式会社 (50%)

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