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#3200 ジャパン・インフラファンド・アドバイザーズ株式会社 第7期決算 当期純利益 67百万円

太陽光発電所や空港、高速道路といった「インフラ資産」は、私たちの社会に不可欠な存在であり、一度稼働すれば、長期間にわたって安定した収益を生み出すという大きな特徴を持っています。この魅力的なインフラ資産を、個人でも投資できるようにした金融商品が「インフラファンド」です。仕組みは不動産投資信託J-REIT)に似ており、投資家から集めた資金でインフラ資産を取得し、そこから得られる収益を分配金として還元します。

今回分析するのは、このインフラファンド市場で重要な役割を担う、ジャパン・インフラファンド・アドバイザーズ株式会社です。同社は、総合商社の丸紅とみずほグループが設立した資産運用会社であり、東京証券取引所に上場する「ジャパン・インフラファンド投資法人(銘柄コード: 9287)」の“頭脳”として、その運用戦略の全てを担っています。投資のプロ集団である資産運用会社の決算とはどのようなものなのか。インフラ投資の最前線に立つ同社の決算を読み解き、そのビジネスモデルと経営の安定性に迫ります。

ジャパン・インフラファンド・アドバイザーズ決算

【決算ハイライト(第7期)】
資産合計: 607百万円 (約6.1億円)
負債合計: 89百万円 (約0.9億円)
純資産合計: 518百万円 (約5.2億円)

当期純利益: 67百万円 (約0.7億円)

自己資本比率: 約85.3%
利益剰余金: 68百万円 (約0.7億円)

【ひとこと】
自己資本比率が85.3%と極めて高く、財務基盤は非常に強固です。資本金4.5億円に対して、設立7期目で利益剰余金を着実に積み上げており、安定して利益を創出できるビジネスモデルが確立されていることがうかがえます。資産運用会社らしい、堅実でクリーンな決算内容と言えるでしょう。

【企業概要】
社名: ジャパン・インフラファンド・アドバイザーズ株式会社
設立: 2019年2月
株主: 丸紅株式会社 90%、株式会社みずほ銀行 5%、みずほ信託銀行株式会社 5%
事業内容: 上場投資法人「ジャパン・インフラファンド投資法人」の資産運用業

jia-jif.com


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、投資家に代わってインフラ資産を取得・運用し、その対価として報酬を得る「アセットマネジメント事業」です。同社自身が巨額のインフラ資産を保有するわけではなく、専門的な知見とノウハウを提供することに特化しています。

✔運用対象:ジャパン・インフラファンド投資法人(JIF)
同社の事業の全ては、東証に上場する投資法人「ジャパン・インフラファンド投資法人(JIF)」の運用に集約されます。JIFの資産規模を拡大させ、その運用パフォーマンスを最大化させることが、同社の収益増に直結します。JIFは現在、主に国内の太陽光発電所に分散投資しており、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)に支えられた長期的かつ安定的な売電収入を原資として、投資家に分配金を支払っています。

✔収益モデル:資産運用報酬
同社の売上の源泉は、JIFから支払われる資産運用報酬です。これは一般的に、①JIFが保有する資産の総額に一定率を乗じて計算される「基本報酬」、②新たにインフラ資産を取得した際に支払われる「取得報酬」、③資産を売却した際に支払われる「売却報酬」などで構成されています。つまり、JIFの資産規模が大きくなればなるほど、同社の収益も安定的に成長していく、典型的なストック型のビジネスモデルです。

✔最大の強み:強力なスポンサーサポート体制
同社の競争力の源泉は、その強力な株主構成にあります。筆頭株主(90%)である総合商社の丸紅は、国内外で再生可能エネルギー事業を数多く手掛ける業界のリーディングカンパニーです。JIAおよびJIFは、この丸紅から、開発済みで安定稼働している優良な太陽光発電所などの物件を優先的に供給してもらうことができます(スポンサーサポート)。また、みずほグループは、JIFが新たな物件を取得する際の資金調達(ファイナンス)面で強力なサポートを提供します。この「商社(事業)×金融」の強力なタッグが、JIFの成長と安定運用の基盤となっているのです。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
世界的な脱炭素化(カーボンニュートラル)への大きな潮流と、環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資への関心の高まりは、再生可能エネルギーを主な投資対象とするインフラファンドにとって強力な追い風です。国のエネルギー政策として再生可能エネルギーの導入が推進されていることも、市場の成長を後押ししています。一方で、今後の長期金利の上昇局面は、インフラファンドが資金調達する際のコストを増加させたり、国債など他の金融商品に対する投資妙味を相対的に低下させたりする可能性があり、注意が必要です。

✔内部環境
アセットマネジメント事業は、運用資産というストック(残高)から安定的なフィー収入が得られるビジネスモデルであり、売上や利益の予見性が非常に高いのが特徴です。事業の運営に必要なのは、大規模な工場や設備ではなく、インフラ投資に関する高度な専門知識を持つファンドマネージャーやエンジニア、法務・財務の専門家といった「人」です。そのため、人件費が主なコストとなります。同社の成長は、スポンサーである丸紅の力を借りながら、JIFの資産規模(運用資産残高)をいかに拡大できるかにかかっています。

✔安全性分析
自己資本比率85.3%という数値は、金融関連業界の中でも傑出して高い水準であり、実質的な無借金経営です。財務リスクは極めて低いと言えます。資産の部の大半(約89%)が、現金や預金といった流動資産で構成されており、企業の短期的な支払い能力も万全です。資本金4.5億円というしっかりとした元手に対し、設立から7期目で利益剰余金が6,800万円まで着実に積み上がっており、安定してキャッシュフローを生み出すビジネスが軌道に乗っていることを示しています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・総合商社・丸紅という強力なスポンサーによる、優良な投資案件の優先的な供給力
・丸紅(事業)とみずほグループ(金融)による、両面からの強力なサポート体制
自己資本比率85.3%という、極めて強固で安定した財務基盤
・インフラファンドの資産運用に特化した、専門性の高いプロフェッショナル集団
・運用資産残高に連動する、安定的かつ予見性の高いストック型のビジネスモデル

弱み (Weaknesses)
・収益の全てが、単一の投資法人(ジャパン・インフラファンド投資法人)の運用成果に完全に依存している
・ジャパン・インフラファンド投資法人の投資対象が、現時点では太陽光発電所に大きく偏っている

機会 (Opportunities)
・ESG投資の世界的な拡大と、脱炭素社会への移行
・投資対象の多様化(洋上風力発電バイオマス発電、空港・道路のコンセッション(運営権)、データセンターなど)による成長可能性
・政府のインフラ整備におけるPFI/PPP(民間資金の活用)のさらなる推進

脅威 (Threats)
長期金利の本格的な上昇による、資金調達コストの増加と、インフラファンドの投資魅力の相対的な低下
再生可能エネルギーに関する国の政策(FIT制度など)の、将来的な大きな変更リスク
・大規模な自然災害による、保有インフラ資産(発電所など)への物理的な損害リスク
・他のインフラファンドやREITとの、国内の優良な投資案件の獲得競争の激化


【今後の戦略として想像すること】
強固な事業基盤と財務基盤を持つ同社は、今後、さらなる成長を目指して事業領域を拡大していくことが予想されます。

✔短期的戦略
まずは、スポンサーである丸紅からの豊富なパイプライン(物件供給ルート)を最大限に活用し、JIFの資産規模を着実に拡大させていくことが基本戦略となります。それにより、JIAの安定収益である基本報酬を着実に増加させていきます。同時に、既存の太陽光発電所の効率的な運営管理(アセットマネジメント)を徹底し、安定的な分配金を維持・向上させることで、投資家からの信頼を高めていくでしょう。

✔中長期的戦略
JIF、ひいてはJIAが次のステージへ飛躍するための最大の鍵は、「投資対象の多様化」です。現在の太陽光発電所に加え、同じ再生可能エネルギーである洋上風力発電バイオマス発電、あるいは空港や有料道路のコンセッション(運営権)、さらにはデジタル社会を支えるデータセンターなど、丸紅がグローバルに事業展開する得意分野へと投資対象を広げていくことが期待されます。これにより、ポートフォリオのリスク分散と、さらなる成長の両立を目指します。


【まとめ】
ジャパン・インフラファンド・アドバイザーズは、個人投資家と、私たちの社会を支える巨大なインフラ資産とを繋ぐ、まさに金融のプロフェッショナル集団です。その事業は、東証に上場する「ジャパン・インフラファンド投資法人」の資産を、専門家として責任をもって運用し、成長させること。その対価として得る資産運用報酬が、同社の安定した収益の源泉となっています。

自己資本比率85%超という鉄壁の財務は、その堅実なビジネスモデルを象徴しています。そして、その成功の最大の要因は、総合商社・丸紅という強力なスポンサーの存在です。丸紅が世界中で開発・保有する優良なインフラ資産を、同社が運用する投資法人に供給することで、両者にとってWIN-WINの成長サイクルを築いているのです。脱炭素社会への移行が世界の共通課題となる中、再生可能エネルギーをはじめとするインフラ資産への投資は、ますますその重要性を増していきます。同社はこれからも、日本のインフラ投資の最前線を力強く走り続けるでしょう。


【企業情報】
企業名: ジャパン・インフラファンド・アドバイザーズ株式会社
所在地: 東京都中央区日本橋茅場町二丁目10番5号 住友生命茅場町ビル6階
代表者: 佐々木 聡
設立: 2019年2月
資本金: 450百万円
事業内容: ジャパン・インフラファンド投資法人の資産運用
株主: 丸紅株式会社 90%、株式会社みずほ銀行 5%、みずほ信託銀行株式会社 5%

jia-jif.com

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