決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に収集し保管している倉庫。あくまで自分用であり、引用する決算公告を除き内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。


#3162 決算分析 : 株式会社イナサス 第48期決算 当期純利益 42百万円


私たちが毎日安全に利用する道路(アスファルト)、そして頑丈なビルや橋、巨大な防潮堤を支えるコンクリート。これらの社会インフラは、砕石やセメントといった基礎資材なくしては決して成り立ちません。山を切り拓き、大地から得た岩石を砕き、社会の礎となる素材へと加工して供給する。それは、国土の安全と人々の暮らしの発展を、文字通り根底から支える極めて重要な産業です。

今回は、静岡県浜松市に自社の鉱山を有し、地域のインフラ整備に不可欠な「タンカル」「砕石」「セメント」を供給し続ける株式会社イナサスの決算を読み解きます。大手セメントメーカーである住友大阪セメントグループの一員として、どのように地域社会に貢献し、堅実な経営を続けているのか。その揺るぎない強さの秘密は、決算書に示された驚異的な財務の健全性にありました。

イナサス決算

【決算ハイライト(第48期)】
資産合計: 1,147百万円 (約11.5億円)
負債合計: 212百万円 (約2.1億円)
純資産合計: 935百万円 (約9.3億円)

当期純利益: 42百万円 (約0.4億円)

自己資本比率: 約81.5%
利益剰余金: 915百万円 (約9.1億円)

【ひとことコメント】
まず最も際立っているのは、自己資本比率が約81.5%という極めて高い水準である点です。これは、総資産の8割以上を返済不要の自己資本で賄っていることを意味し、財務基盤は盤石そのものと言えます。長年の利益の蓄積である利益剰余金も約9.1億円と潤沢に積み上がっており、いかに安定した堅実経営が徹底されているかがうかがえます。

【企業概要】
社名: 株式会社イナサス
設立: 1977年8月
株主: 住友大阪セメント株式会社
事業内容: 静岡県浜松市の自社鉱山「栃窪鉱山」を基盤に、コンクリートアスファルトの原料となる砕石、工業用フィラー等に使われるタンカル(炭酸カルシウム)、プレミックスセメントの製造・販売を行う基礎資材メーカー。

www.inasas.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、浜松市浜名区引佐町に位置する自社の鉱山「栃窪鉱山」から産出される資源を基点とした、地域社会に不可欠な3つの事業の柱で構成されています。

✔インフラを支える「砕石事業」
鉱山から採掘した輝緑岩(きりょくがん)という硬質な岩石を原料に、コンクリートの骨格となる「砕石」「砕砂」や、道路の路盤材となる「クラッシャラン」などを製造しています。その品質の高さは、JIS(日本産業規格)認証を取得していることや、地域の安全を未来永劫守るための巨大プロジェクト「浜松市沿岸域防潮堤整備事業」に資材を供給したという輝かしい実績が証明しています。まさに地域の安全・安心を足元から支える、同社の中核事業です。

✔多岐にわたる工業分野に広がる「タンカル事業」
もう一つの主要鉱物である石灰石を、親会社である住友大阪セメントの高度な技術を用いて細かく粉砕・分級し、炭酸カルシウム(タンカル)を生産しています。これは、アスファルトの耐久性を高めるための混和材や、コンクリート二次製品の材料として使われるだけでなく、自動車部品や建材に用いられる防音・防振シートの原料(フィラー)にもなるなど、土木から工業製品まで幅広い分野で活用される高機能材料です。

✔地域のニーズに応える「ハンディセメント事業」
セメントと砂などの骨材をあらかじめ工場で最適に混合したプレミックス製品です。現場では水を加えるだけで手軽に高品質なコンクリートモルタルを作ることができるため、小規模な補修工事やDIYなどで重宝されます。地域の細やかなニーズにも応える、顧客視点の事業と言えます。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
「国土強靭化計画」に代表される政府の防災・減災対策や、高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化対策(補修・更新)は、同社にとって安定的かつ継続的な事業機会となります。また、中部圏で進むリニア中央新幹線関連工事なども、高品質な骨材の需要を高める大きな要因です。一方で、公共事業費の増減や民間の建設投資の動向は、業績に直接的な影響を与えます。また、採掘事業という性質上、自然景観の保全や騒音・粉塵対策など、環境規制の強化や地域住民との共生が常に求められる事業でもあります。

✔内部環境
同社の経営における最大の強みは、自社鉱山という「資源」を自前で保有している点にあります。これにより、原料を外部から購入する必要がなく、市況の変動に左右されない安定供給体制と、高いコスト競争力の両方を実現しています。また、親会社である住友大阪セメントの存在も大きく、粉砕・分級といった高度な技術的支援や、グループとしての信用力が経営を力強く支えています。そして、自己資本比率81.5%という驚異的な財務基盤は、長年の堅実経営の賜物です。この財務力により、市況の変動に一喜一憂することなく、必要な設備投資を適切なタイミングで実行できる高い経営の自由度を確保しています。

✔安全性分析
自己資本比率81.5%は、あらゆる業種の中でもトップクラスに健全な財務水準です。負債が極めて少なく、金利上昇などの外部リスクに対する耐性が非常に高いため、経営が極めて安定していることを示しています。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約779%と、全く懸念のないレベルにあります。さらに、利益剰余金が資本金の45倍以上にあたる約9.1億円も積み上がっており、これは同社が長年にわたり安定的に利益を創出し、それを堅実に内部留保してきた歴史の証明です。まさに地域に根ざした優良企業の典型と言えるでしょう。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・主原料(石灰石、輝緑岩)を自給できる、自社鉱山の保有
自己資本比率81.5%という、盤石で極めて健全な財務基盤。
・親会社である住友大阪セメントグループとしての、高度な技術力と社会的信用力。
・JIS認証や大規模公共事業への納入実績が示す、顧客からの高い品質への信頼。

弱み (Weaknesses)
・事業エリアが浜松市を中心とした静岡県西部に集中しており、地域の建設需要への依存度が高い。
・大規模なプラントを要する装置産業であり、生産設備の維持・更新に多額のコストを要する。

機会 (Opportunities)
・国土強靭化計画やリニア中央新幹線関連工事など、継続的なインフラ整備需要。
・より耐久性の高いインフラを実現するための、高強度コンクリート用骨材など、高性能な製品へのニーズ拡大。
・建設発生土を原料とした再生砕石の製造など、サーキュラーエコノミーに貢献する環境配慮型事業の展開。

脅威 (Threats)
・国や地方自治体の財政状況による、公共事業予算の削減リスク。
・採掘事業に対する、騒音・振動・景観などに関する環境規制のさらなる強化。
・重機の燃料費やプラントを稼働させるための電力コストなど、エネルギー価格の高騰。
・安価な輸入品や、性能が向上した代替材料との競争。


【今後の戦略として想像すること】
盤石な経営基盤を持つ同社は、安定性を維持しつつ、持続的な成長に向けた着実な戦略を展開していくことが可能です。

✔短期的戦略
まずは生産効率の最大化が挙げられます。既存設備の稼働率向上や、省エネルギー型設備への更新を進め、コスト競争力をさらに強化していくことが考えられます。また、地域の建設会社や生コンクリート工場との関係をより一層深耕し、地域のインフラ整備プロジェクトにおけるシェアを確実に獲得していくことが重要です。顧客のニーズに応じて特殊な粒度や物性を持つ砕石やタンカルを開発・提案することで、製品の付加価値を高め、利益率の向上を図ることも求められます。

✔中長期的戦略
環境対応への投資は、企業の社会的責任を果たす上で不可欠です。採掘跡地の積極的な緑化推進はもちろん、製造プロセスにおけるCO2排出量削減技術の導入や、建設現場から発生する土を受け入れて再生砕石を製造するような、サーキュラーエコノミーへの貢献を強化することが期待されます。これは、企業の持続可能性を高めると同時に、新たな事業機会の創出にも繋がります。また、鉱山の測量にドローンを活用したり、プラントの運転管理にAIを導入したりといったDXを推進し、生産性の抜本的な向上と省人化を目指すことも重要な戦略となるでしょう。


【まとめ】
株式会社イナサスは、単に石を砕き、販売する会社ではありません。それは、自社の鉱山という大地からの恵みを、社会を支える「礎」へと変え、地域の安全と発展に貢献するという大きな使命を担う企業です。浜松の巨大な防潮堤を築き、日々の暮らしに欠かせない道路を舗装し、建物を力強く支える。その堅実で誠実な仕事ぶりは、自己資本比率81.5%という驚異的に健全な財務内容にも明確に表れています。

親会社である住友大阪セメントグループの一員としての高い技術力と信用力、そして何よりも地域に深く根差した堅実な経営。これらを武器に、イナサスはこれからも静岡県西部、ひいては日本のインフラを足元から力強く支え続けていくことでしょう。


【企業情報】
企業名: 株式会社イナサス
所在地: 静岡県浜松市浜名区引佐町栃窪168番地
代表者: 代表取締役 鈴木 温信
設立: 1977年8月
資本金: 2,000万円
事業内容: タンカル(炭酸カルシウム)、砕石、ハンディセメントの製造・販売
株主: 住友大阪セメント株式会社

www.inasas.co.jp

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.