不動産開発の「ユニオンキャピタル」、賃貸管理の「ユニオン・メディエイト」。これまで分析してきた2社は、それぞれの専門領域で高い収益性と盤石な財務基盤を誇る優良企業でした。しかし、これらの専門家集団がそれぞれの事業に集中し、高いパフォーマンスを発揮できる背景には、グループ全体の戦略を練り、日々の煩雑なバックオフィス業務を一手に引き受ける”司令塔”の存在があります。
今回は、ユニオングループの持株会社として、グループ全体の経営管理とシェアードサービスを担う、ユニオンサポート株式会社の決算を読み解きます。グループの”頭脳”であり”心臓部”であるこの会社の役割と、グループ全体の強さの秘密に迫ります。

【決算ハイライト(第23期)】
資産合計: 727百万円 (約7.3億円)
負債合計: 564百万円 (約5.6億円)
純資産合計: 162百万円 (約1.6億円)
当期純損失: 8百万円 (約0.1億円)
自己資本比率: 約22.3%
利益剰余金: 132百万円 (約1.3億円)
【ひとことコメント】
グループの統括会社として、安定した財務基盤を維持しています。当期はわずかな純損失を計上していますが、これはグループ全体の成長に向けた先行投資や管理コストの結果と考えられます。1.3億円を超える利益剰余金は、これまでの安定経営の証です。
【企業概要】
社名: ユニオンサポート株式会社
設立: 2002年10月16日
事業内容: ユニオングループの経営管理、及びシェアードサービス(人事、経理、財務、総務)の提供、経営コンサルタント業務など
【事業構造の徹底解剖】
同社は、自らが直接的に顧客向けサービスを提供するのではなく、グループ全体の価値を最大化するための、司令塔・支援部隊としての機能に特化しています。
✔グループの持株会社(ホールディングス)機能
同社は、ユニオンキャピタルやユニオン・メディエイトといった事業会社を傘下に持つ、ユニオングループの持株会社です。「お客様に感動していただけるサービスの提供」というグループ共通の理念の実現に向け、グループ全体の経営計画を策定し、各社の事業実績を管理・評価・支援する役割を担っています。
✔シェアードサービスセンター機能
同社のもう一つの重要な役割が、グループ各社の間接部門(バックオフィス)の業務を集約して提供する「シェアードサービス」です。
・経理・財務:一般会計から決算業務、資金管理まで、グループの財務全般を統括します。
・人事・総務:採用活動や給与計算、労務管理、福利厚生など、グループの「人」に関する業務を一手に引き受けます。
これにより、各事業会社は専門業務に集中することができ、グループ全体としては、業務の効率化、専門知識の集約、内部統制の強化といった、大きなメリットを享受しています。
✔インキュベーション機能
グループ全体の「起業力強化」を目的として、新規事業の開発やインキュベーション(事業育成)機能も担っています。これにより、グループは既存事業に安住することなく、常に新しい価値創造に挑戦し続けることができます。
✔ユニオングループのエコシステム
これまで分析してきた3社は、それぞれが独立しながらも、有機的に連携する強力なエコシステムを形成しています。
・ユニオンサポート(司令塔):グループ全体の戦略策定と経営資源の最適配分、バックオフィス支援を行う。
・ユニオンキャピタル(開発・保有):不動産を「創り」「再生し」「保有する」。
・ユニオン・メディエイト(管理・運営):創られた不動産の価値を「活かし」「高める」。
この三位一体の体制こそが、ユニオングループ全体の高い競争力と安定性の源泉です。
【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
不動産業界をはじめ、多くの業界で専門分化と効率化が進む中、グループ経営においてシェアードサービスを導入する企業は増加しています。これにより、コスト削減と業務品質の向上を両立させることが可能になります。
✔内部環境
同社の収益は、傘下の事業会社から受け取る経営指導料や、シェアードサービスの提供対価などが中心となります。当期の純損失は、グループ全体の成長を見据えたITシステムの導入や、人材採用といった先行的な管理コストが発生した結果である可能性が考えられます。
✔安全性分析
自己資本比率は22.3%と、これまでに分析したグループ2社(ユニオン・メディエイト: 84.0%, ユニオンキャピタル: 75.5%)と比較すると低い水準です。これは、グループ内の資金調達などを担うホールディングスとしての財務的な役割を反映している可能性があります。とはいえ、1.3億円を超える利益剰余金を確保しており、設立以来、安定した経営を続けてきたことが伺えます。グループ全体の盤石な財務基盤を考えれば、同社の財務安全性に懸念はないと判断できます。
【SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・グループ各社がそれぞれの専門業務に集中できる、効率的なシェアードサービス体制
・グループ全体の経営状況を俯瞰し、最適な資源配分を行える司令塔機能
・20年以上にわたるグループ経営支援の実績とノウハウ
・グループ全体の安定した収益基盤
弱み (Weaknesses)
・自社単体では直接的な収益源を持たず、グループ全体の業績に依存する構造
・グループ全体の管理コストが増加した場合、収益性が圧迫される可能性
機会 (Opportunities)
・M&Aなどを通じて、グループに新たな事業会社が加わった際の、PMI(経営統合)支援機能
・RPAやAIといったDXツールを導入し、シェアードサービスのさらなる効率化・高度化を推進
・グループ内で培った経営管理ノウハウを、外部の中小企業へコンサルティングサービスとして提供する可能性
脅威 (Threats)
・不動産市況の悪化など、グループ中核事業の収益性に影響を与える外部環境の変化
・グループ全体の成長鈍化による、管理部門へのコスト削減圧力
【今後の戦略として想像すること】
グループ全体の企業価値を最大化するため、経営基盤のさらなる強化と、新たな成長機会の創出を追求していくことが予想されます。
✔短期的戦略
グループ各社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を主導し、会計システムや人事システムの統合・刷新などを通じて、シェアードサービスの効率性と専門性をさらに高めていくでしょう。これにより、グループ全体の生産性向上とコスト削減に貢献することが考えられます。
✔中長期的戦略
インキュベーション機能を本格化させ、不動産テック(PropTech)や、高齢者向けサービスなど、既存事業とのシナジーが見込める新たな分野への進出を模索していく可能性があります。また、グループ全体のサステナビリティ経営やESGへの取り組みを統括し、非財務面での企業価値向上をリードする役割も、今後ますます重要になってくるでしょう。
【まとめ】
ユニオンサポートは、ユニオングループという強力なチームが、常に最高のパフォーマンスを発揮するための”司令塔”であり、”縁の下の力持ち”です。不動産開発のユニオンキャピタル、賃貸管理のユニオン・メディエイトがそれぞれの戦場で輝けるのは、ユニオンサポートがグループ全体の戦略を描き、日々の煩雑な業務を一手に引き受けているからに他なりません。今回の決算で見られたわずかな赤字は、グループが次のステージへと飛躍するための、未来への投資と言えるでしょう。この3社の強固な連携こそが、ユニオングループの揺るぎない強さの秘密なのです。
【企業情報】
企業名: ユニオンサポート株式会社
所在地: 東京都新宿区西新宿7-7-26 ワコーレ新宿第一ビル
代表者: 代表取締役 小檜山 隆
設立: 2002年10月16日
資本金: 3,000万円
事業内容: グループ事業会社の経営管理、人事・経理・財務・総務のシェアードサービス提供、経営コンサルタントなど