決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に収集・コメントし保管する倉庫。あくまで自分用であり、引用する決算公告を除き内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。

#3009 決算分析 : 坪内運輸株式会社 第46期決算 当期純利益 8百万円

ビルやマンション、橋やトンネルなど、私たちの社会を支えるあらゆる建造物に不可欠な「鉄筋」。この重く、長い建設資材を、製造工場から全国の建設現場へ安全かつ確実に届けるには、高度な輸送技術とノウハウが求められます。特に、一度に大量の鉄筋を運ぶトレーラー輸送は、日本の建設業界を支えるまさに”縁の下の力持ち”です。愛知県の臨海工業地帯・飛島村に拠点を置き、40年以上にわたってこの鉄筋輸送を専門に手掛けてきたプロフェッショナル集団がいます。

今回は、鉄筋輸送のスペシャリストとして、中部地方の建設・物流を支える坪内運輸株式会社の決算を読み解き、その事業内容と堅実な経営に迫ります。

坪内運輸決算

【決算ハイライト(第46期)】
資産合計: 318百万円 (約3.2億円)
負債合計: 97百万円 (約1.0億円)
純資産合計: 221百万円 (約2.2億円)

当期純利益: 8百万円 (約0.1億円)

自己資本比率: 約69.5%
利益剰余金: 205百万円 (約2.1億円)

【ひとことコメント】
自己資本比率が約70%と極めて高く、財務基盤は非常に盤石です。資本金の13倍以上もの利益剰余金を積み上げており、長年にわたる安定した黒字経営が見て取れます。専門分野で着実に利益を上げる、堅実な優良企業です。

【企業概要】
社名: 坪内運輸株式会社
設立: 1980年4月
事業内容: 一般貨物自動車運送事業(主にトレーラーによる鉄筋輸送)

tsubouchiunyu.com


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、建設資材の中でも特に専門性が求められる「鉄筋」のトレーラー輸送に特化しています。

✔鉄筋輸送のスペシャリスト
同社の中核事業は、建築・土木の基礎となる鉄筋を、製造工場からユーザー(建設現場など)へ届けることです。長く、重い鉄筋の輸送には、適切な荷締め技術や、安全な運行管理、そして現場の状況に応じた荷降ろしなど、専門的なノウハウが不可欠です。同社は、この分野に特化することで、高い専門性とサービス品質を確立しています。

✔トレーラー輸送による効率化
事業の中心は、一度に大量の貨物を運ぶことができるトレーラーです。自社で30両のトレーラーを保有し、愛知県海部郡飛島村の配車センターから効率的な輸送網を構築しています。これにより、鉄筋のような重量物の輸送コストを最適化し、顧客に競争力のあるサービスを提供しています。

✔大手鉄鋼メーカーとの連携
同社は、大手電炉メーカーである「共英製鋼株式会社」の名古屋事業所内に営業所を構えています。これは、主要な荷主である鉄鋼メーカーの製造拠点と一体となって、製品の出荷を担っていることを示唆しています。製造から輸送までの一貫した物流システムを構築することで、顧客との強固な信頼関係を築き、安定した受注基盤を確保していると考えられます。

✔柔軟な輸送体制
自社車両30両に加え、繁忙期には安全教育を徹底した協力会社と提携することで、顧客の需要変動に柔軟に対応できる万全の輸送体制を整えています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
鉄筋の輸送需要は、公共事業や民間設備投資、マンション建設といった建設業界全体の動向に大きく左右されます。リニア中央新幹線の建設や、都市部の再開発プロジェクトなどは、鉄筋需要を押し上げる大きな要因です。一方で、2024年問題に代表されるドライバー不足や燃料価格の高騰は、運輸業界全体にとって深刻な課題となっています。

✔内部環境
「鉄筋輸送」というニッチな市場に特化し、大手鉄鋼メーカーの拠点内に営業所を構えるという事業モデルは、安定した受注を確保し、価格競争力を維持する上で非常に有効です。特定の貨物・顧客に深く食い込むことで、代替されにくい強力なパートナーシップを築いていることが、同社の強みとなっています。

✔安全性分析
自己資本比率が69.5%と非常に高く、財務基盤は極めて安定的です。これは、事業運営を借入金に大きく依存しない、健全な経営が行われていることを示します。資本金1,500万円に対し、その13倍以上となる2億円を超える利益剰余金を蓄積している事実は、40年以上の歴史の中で、一貫して黒字経営を続け、利益を内部に留保してきたことの証です。この盤石な財務が、車両の更新投資や、ドライバーの労働環境改善などを支える基盤となっています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「鉄筋輸送」という専門性の高いニッチ市場での豊富な実績とノウハウ
自己資本比率約70%という、盤石で安定した財務基盤
・大手鉄鋼メーカー(共英製鋼)との、拠点内営業所を通じた強固なパートナーシップ
・トレーラーを中心とした、効率的な輸送能力

弱み (Weaknesses)
・鉄筋という特定品目、建設業界という特定市場への依存度が高い
・事業の成長が、ドライバーの採用・定着に大きく左右される

機会 (Opportunities)
・中部圏における、リニア中央新幹線や再開発など、大規模建設プロジェクトによる鉄筋輸送需要の増加
・2024年問題への対応で、輸送効率の高いトレーラーへの需要シフト
・長年の実績と信頼を基にした、鉄筋以外の建設資材輸送への事業拡大

脅威 (Threats)
・建設投資の冷え込みによる、物量の減少リスク
・ドライバーの高齢化と、若手入職者不足の深刻化
軽油価格のさらなる高騰による、コスト増の圧力


【今後の戦略として想像すること】
中核である鉄筋輸送の基盤をさらに強化しつつ、人材確保と育成に注力していくことが予想されます。

✔短期的戦略
主要顧客である共英製鋼との連携をさらに密にし、製造から現場納入まで、よりシームレスで効率的な物流体制の構築を進めていくでしょう。また、ドライバーの労働時間規制(2024年問題)に対応するため、運行管理システムの高度化や、ドライバーの負荷を軽減する労働環境の整備に、引き続き注力していくことが考えられます。

✔中長期的戦略
安定した財務基盤を活かし、燃費性能の高い最新トレーラーへの計画的な設備投資を進めていくと同時に、若手や未経験者でもプロのトレーラードライバーへと成長できるような、社内の教育・研修制度をさらに充実させていくことが、持続的な成長の鍵となります。将来的には、鉄筋輸送で培った重量物輸送のノウハウを活かし、他の建設資材や機械類など、新たな品目への展開も視野に入ってくるかもしれません。


【まとめ】
坪内運輸株式会社は、派手さはないかもしれませんが、日本の建設業界に不可欠な「鉄筋輸送」という専門分野で、40年以上にわたり黙々と技術と信頼を積み重ねてきた、いぶし銀のような優良企業です。大手鉄鋼メーカーとの強固なパートナーシップを基盤に、自己資本比率約70%という鉄壁の財務を築き上げてきました。物流業界が「2024年問題」という大きな変革期を迎える中で、同社のような専門性と安定性を兼ね備えた企業の社会的役割は、ますます重要になっていくに違いありません。


【企業情報】
企業名: 坪内運輸株式会社
所在地: 愛知県海部郡飛島村大字新政成字亥之切955番地1
代表者: 代表取締役 坪内 志郎
設立: 1980年4月
資本金: 1,500万円
事業内容: 一般貨物自動車運送事業(トレーラーによる鉄筋輸送)

tsubouchiunyu.com

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.