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#2994 決算分析 : 株式会社スター商事 第56期決算 当期純利益 12百万円

街を歩けば目に飛び込んでくる、色鮮やかなラッピングバスや店舗のウィンドウディスプレイ。私たちの日常空間を彩り、情報を伝えるこれらの「ビジュアルサイン」は、どのようにして作られているのでしょうか。そこには、デザインデータを出力するだけでなく、多様な素材を正確に加工し、現場で美しく施工する、高度な専門技術とノウハウが結集されています。東京・浅草に本社を構えるスター商事は、印刷業から始まり、半世紀以上にわたって、このサイン・ディスプレイ業界で確かな技術を磨き続けてきたプロフェッショナル集団です。

今回は、桜井株式会社のグループ企業として、街の景色を創造する株式会社スター商事の決算を読み解き、その事業内容と経営の安定性に迫ります。

スター商事決算

【決算ハイライト(第56期)】
資産合計: 311百万円 (約3.1億円)
負債合計: 274百万円 (約2.7億円)
純資産合計: 36百万円 (約0.4億円)

当期純利益: 12百万円 (約0.1億円)

自己資本比率: 約11.7%
利益剰余金: 12百万円 (約0.1億円)

【ひとことコメント】
総資産3.1億円に対し、負債の割合が高く自己資本比率は11.7%とやや低い水準ですが、当期は1,200万円の純利益を確保しています。厳しい経営環境の中でも着実に利益を生み出し、事業を継続している粘り強さが伺える決算内容です。

【企業概要】
社名: 株式会社スター商事
設立: 1970年3月2日
株主: 桜井株式会社(100%)
事業内容: カーマーキング、デジタルプリント壁紙、看板・ビジュアルサインのデザイン・製作・施工、及び関連資材・機器の販売

www.starsyoji.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社は、印刷業として創業した背景を活かし、粘着フィルムやインクジェットプリント技術を駆使した「ビジュアルコミュニケーション」事業を多角的に展開しています。

✔街を走る広告塔「カーマーキング」
バスやトラック、営業車などの車両に広告やロゴをラッピングするカーマーキングは、同社の中核事業の一つです。デザインの提案から、高画質なフィルムの製作、そして車両の複雑な曲面にも美しく仕上げる高度な施工技術まで、一貫して提供しています。動く広告塔として、企業のブランディングやプロモーションに大きく貢献しています。

✔空間の価値を高める「サイン&ディスプレイ」
店舗の看板やウィンドウのガラス装飾、イベント会場のサイン、オフィスのデジタルプリント壁紙など、屋内外を問わずあらゆる空間の価値を高めるビジュアルサインを手掛けています。顧客の要望に応じて、デザインから製作、現場での施工までをワンストップで担います。

✔技術を支える「資材・機器販売」
自社での製作・施工だけでなく、長年の経験で培った知見を活かし、粘着マーキングフィルムや看板関連資材、インクジェットプリンターなどの機器販売も行っています。これにより、同業者や内製化を目指す企業ともネットワークを築き、業界内でのプレゼンスを高めています。

✔親会社「桜井株式会社」とのシナジー
同社は、産業資材や情報・グラフィックス関連製品を扱う専門商社である桜井株式会社の100%子会社です。親会社が持つ広範な製品知識や仕入れルート、そして強固な顧客基盤は、同社の事業展開において大きなバックボーンとなっています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
屋外広告や店舗装飾の市場は、景気の動向や企業の広告宣伝費に大きく左右されます。近年では、デジタルサイネージの普及という変化がある一方、イベントの再開やインバウンド需要の回復により、物理的なサインや装飾への需要も回復傾向にあります。また、環境に配慮したインクや素材への関心も高まっています。

✔内部環境
同社のビジネスは、個別の案件ごとにデザインや仕様が異なる「受注生産型」です。そのため、顧客の要望を的確に汲み取る営業力、魅力的なデザインを生み出す企画力、そして高品質な施工を実現する技術力が、収益性を左右する重要な要素となります。最新のインクジェットプリンターやカッティングマシンへの設備投資を継続的に行い、多様なニーズに応えられる生産体制を維持しています。

✔安全性分析
自己資本比率が11.7%とやや低く、総資産の多くを負債で賄っている財務構造です。これは、設備投資や運転資金を借入金などで調達してきた結果と考えられます。このような財務状況では、金利の上昇や売上の減少が経営に与えるインパクトが大きくなるため、安定した収益の確保がより一層重要となります。当期に1,200万円の純利益を確保し、利益剰余金がプラスとなっている点は、事業がしっかりと利益を生み出せていることを示しており、ポジティブな要素です。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・カーマーキングから屋内装飾まで対応できる、デザイン・製作・施工のワンストップ体制
・50年以上の歴史で培われた技術力と業界内での実績
・親会社である桜井株式会社の持つ、商社機能とのシナジー
・全国に広がる営業拠点ネットワーク

弱み (Weaknesses)
自己資本比率が低く、財務基盤が比較的脆弱
・景気や企業の広告宣伝費の動向に業績が左右されやすい
・施工業務における、熟練した技術者の確保と育成

機会 (Opportunities)
・インバウンド回復や大規模イベントの開催に伴う、サイン・ディスプレイ需要の増加
・環境配慮型のインクや素材を活用した、サステナブルな広告表現へのニーズ
・オフィスのリニューアルや改装に伴う、デジタルプリント壁紙など内装需要の拡大

脅威 (Threats)
デジタルサイネージへの広告予算シフトによる、物理的サイン市場の縮小リスク
・同業他社との価格競争の激化
・原材料価格の高騰による、利益率の圧迫


【今後の戦略として想像すること】
強みである「技術力」と「提案力」を活かし、収益性の改善と財務体質の強化を図っていく戦略が考えられます。

✔短期的戦略
インバウンド観光客の増加を見据え、商業施設や交通機関向けの多言語対応サインや、日本らしいデザインの装飾などを積極的に提案していくでしょう。また、親会社との連携を強化し、桜井株式会社が扱う環境配慮型素材などを活用した高付加価値な製品を開発・販売することで、利益率の向上を目指すことが考えられます。

✔中長期的戦略
単なる製作・施工に留まらず、デザインや企画の段階から顧客に深く関与するコンサルティング的な役割を強化していくことが期待されます。また、これまで培ってきた施工管理能力を活かし、サイン工事だけでなく、より広範な内装工事やリフォーム分野へと事業領域を拡大していくことも、持続的な成長に向けた一つの道筋となるでしょう。


【まとめ】
株式会社スター商事は、印刷業から始まり、時代のニーズに合わせてビジュアルサインのプロフェッショナルへと進化を遂げてきた、半世紀以上の歴史を持つ企業です。街を彩るカーマーキングや店舗装飾を通じて、企業と生活者とのコミュニケーションを支えています。現在の財務状況は決して盤石とは言えないかもしれませんが、厳しい市場環境の中でも着実に利益を生み出す事業基盤を確立しています。親会社である桜井株式会社との強力な連携を活かし、これからもその確かな技術力で、私たちの日常に彩りと情報をもたらしてくれることが期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社スター商事
所在地: 東京都台東区浅草4-30-3
代表者: 大熊 徹 
設立: 1970年3月2日
資本金: 2,400万円
事業内容: カーマーキングのデザイン・製作・施工、デジタルプリント壁紙の製作・施工、看板ビジュアルサインの製作・施工、粘着マーキングフィルムの販売、看板関連資材及び機器の販売など
株主: 桜井株式会社

www.starsyoji.jp

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