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#2988 決算分析 : 株式会社日宣印刷 第72期決算 当期純利益 11百万円

デジタル化の波が押し寄せ、ペーパーレス化が進む現代。「印刷業界」と聞くと、厳しい競争にさらされる成熟産業というイメージを持つ方も多いかもしれません。そんな時代に、「最新の印刷機はありません」と公言しながらも、70年以上にわたり顧客から厚い信頼を寄せられ、盤石な経営を続ける「小さな印刷会社」が大阪にあります。彼らが武器とするのは、最新設備ではなく、顧客に”よりそう”という温かい哲学、他社にはないユニークな製品、そして驚くほど強固な財務基盤です。

今回は、大阪市城東区に本社を構える株式会社日宣印刷の決算を読み解き、変化の激しい時代を生き抜く老舗企業のしたたかな経営戦略と、その強さの秘密に迫ります。

日宣印刷決算

【決算ハイライト(第72期)】
資産合計: 286百万円 (約2.9億円)
負債合計: 95百万円 (約1.0億円)
純資産合計: 191百万円 (約1.9億円)

当期純利益: 11百万円 (約0.1億円)

自己資本比率: 約66.8%
利益剰余金: 181百万円 (約1.8億円)

【ひとことコメント】
自己資本比率が66.8%と極めて高く、財務基盤は非常に健全です。ウェブサイトで謳う「他の印刷会社にはない強い経営基盤」という言葉が、決算数値によって裏付けられています。安定した財務が、目先の利益にとらわれない丁寧な顧客対応を可能にしています。

【企業概要】
社名: 株式会社日宣印刷
設立: 1953年3月
事業内容: 商業印刷全般、及びケーブルテレビ番組ガイド誌「チャンネルガイド」、販促ツール「エコ紙うちわ」の企画・製造

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、一般的な商業印刷を土台としながら、他社にはないユニークな2つのニッチ製品を強力な柱としています。

✔安定収益の基盤「チャンネルガイド」
同社の事業を支える大きな柱が、全国100局以上のケーブルテレビ局で採用されている月刊番組ガイド誌「チャンネルガイド」です。総発行部数は実に150万部にのぼり、これは同社にとって非常に安定的かつ継続的な収益源となっています。特定の業界に深く根差したこのニッチな事業が、一般的な商業印刷の受注変動リスクを吸収し、経営全体に安定をもたらしています。

✔独創性で勝負する「エコ紙うちわ」
もう一つの柱が、2009年から製造・販売する独自開発商品「エコ紙うちわ」です。これは持ち手から扇面まで100%紙で作られた環境配慮型の販促ツールで、キャラクターや商品に合わせて自由に型抜きできるデザイン性の高さが特徴です。夏のイベントやキャンペーンで大活躍するこの製品は、単なる印刷の請負に留まらない、同社の企画開発力を示す象徴的な存在であり、高い付加価値を生み出しています。

✔哲学“YORISOU”を体現する商業印刷
チラシやカタログといった一般的な印刷物においては、「お客様によりそう」という哲学を前面に押し出しています。営業から製造まで全部門が一体となり、顧客が本当に求める品質は何か、真の課題は何かを追求する姿勢を大切にしています。最新鋭の設備でなくとも、長年培った確かな技術と、顧客への深い理解で期待に応える。これが同社の選ばれる理由であり、顧客アンケートで「スタッフの対応」が特に高く評価される所以です。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
印刷業界全体がデジタル化の圧力にさらされ、市場規模が縮小傾向にあることは事実です。しかし、高品質な印刷物への需要や、販促効果の高いユニークなツールへのニーズは根強く存在します。このような環境下で生き残るためには、価格競争に陥るのではなく、同社のように専門性や独自性で勝負することが不可欠です。

✔内部環境
同社の戦略は、規模の拡大を追うのではなく、①安定収益事業(チャンネルガイド)、②高付加価値事業(エコ紙うちわ)、③顧客密着型事業(一般商業印刷)という、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築することにあります。これにより、市場の変動に強い、しなやかな経営体質を築き上げています。従業員16名という少数精鋭体制も、部門間の密な連携を可能にし、「YORISOU」の理念を実践する上で強みとなっています。

✔安全性分析
自己資本比率66.8%という数値は、企業の財務安全性を測る上で傑出した水準です。これは、事業運営を借入金にほとんど依存していない「無借金経営」に近い状態を意味します。資本金1,000万円の企業が、1.8億円もの利益剰余金を蓄積しているという事実は、70年以上の長きにわたり、一貫して黒字経営を続けてきたことの力強い証です。この盤石な財務基盤があるからこそ、短期的な業績に一喜一憂することなく、顧客や協力会社と長期的な信頼関係を築くという、同社の哲学を貫くことができるのです。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
自己資本比率66.8%という、極めて健全で安定した財務基盤
・「チャンネルガイド」「エコ紙うちわ」という、他社にはない安定した収益源となるニッチ製品
・70年以上の歴史で培われた高い印刷技術とノウハウ
・”YORISOU”の理念に根差した、顧客からの高い信頼とサービス評価

弱み (Weaknesses)
・従業員16名という少数精鋭体制による、生産キャパシティの限界
・最新鋭のデジタル印刷機などへの投資が、事業規模から難しい可能性

機会 (Opportunities)
SDGsへの関心の高まりによる、「エコ紙うちわ」など環境配慮型製品への需要増
・地域の情報発信ツールとしての、ケーブルテレビの価値見直し
・画一的なネット印刷では満足できない、高品質・高付加価値な印刷物を求める顧客層の取り込み

脅威 (Threats)
・印刷市場全体のデジタル化・ペーパーレス化のさらなる進行
・動画配信サービスの普及による、長期的なケーブルテレビ業界の変化
・原材料(紙、インキ)価格の高騰による利益率の圧迫


【今後の戦略として想像すること】
強みであるニッチ領域の深化と、顧客との関係性を軸とした展開が考えられます。

✔短期的戦略
環境配慮への関心の高まりを追い風に、「エコ紙うちわ」の販路をさらに拡大していくでしょう。また、「チャンネルガイド」で培った全国のケーブルテレビ局との強固な関係を活かし、各局が発行する他の印刷物や、地域イベント関連の印刷案件を受注することで、取引を深化させていくことが考えられます。

✔中長期的戦略
「エコ紙うちわ」の成功体験を基に、印刷と加工の技術を組み合わせた、第二、第三の独自開発商品を企画していく可能性があります。また、長年の取引で得たケーブルテレビ業界の知見を活かし、単なる印刷の請負に留まらない、番組編成や広告企画に関するコンサルティング的なサービスへと事業領域を広げていくことも、同社ならではの展開として期待されます。


【まとめ】
株式会社日宣印刷は、厳しい経営環境にある印刷業界において、「小さいこと」を強みに変え、輝きを放つ企業です。巨大な設備投資で規模を追うのではなく、知恵と工夫で「チャンネルガイド」や「エコ紙うちわ」といった独自の収益源を育て上げ、顧客一人ひとりに”よりそう”姿勢で信頼を勝ち取ってきました。そして、その堅実な歩みは、自己資本比率66.8%という鉄壁の財務基盤に結実しています。デジタル時代だからこそ、同社が提供する手触りのある価値と、人と人との繋がりを大切にする姿勢は、これからも多くの顧客にとってかけがえのない存在であり続けるでしょう。


【企業情報】
企業名: 株式会社日宣印刷
所在地: 大阪府大阪市城東区古市3丁目14-26
代表者: 代表取締役社長 後藤稔
設立: 1953年3月
資本金: 1,000万円
事業内容: デザイン制作・印刷、エコ紙うちわ・カタログ・チラシ・ポスター・包装紙・紙袋・パンフレット・パネル・全国ケーブルテレビ番組ガイド誌「チャンネルガイド」

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