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#2989 決算分析 : 株式会社JA建設クリエイトさが 第62期決算 当期純利益 145百万円

日本の食を支える農業。その最前線で地域社会の根幹を担っているのが、JA(農業協同組合)グループです。しかし、JAの役割は農産物の生産・販売支援だけにとどまりません。組合員の生活を、そして地域全体のインフラを多角的に支える、頼れるパートナーとしての側面も持っています。佐賀県に、まさにその役割を体現するユニークな企業が存在します。農業施設の建設から住宅リフォーム、さらには農産物の保管・輸送を担う物流、そして土地や建物の取引を扱う不動産まで。地域の「建てる」「運ぶ」「住まう」を一手で担う、JAグループの中核企業です。

今回は、佐賀の農業と地域社会を文字通り土台から支える、株式会社JA建設クリエイトさがの決算を読み解き、その多角的な事業モデルと安定経営の秘密に迫ります。

JA建設クリエイトさが決算

【決算ハイライト(第62期)】
資産合計: 4,055百万円 (約40.6億円)
負債合計: 2,425百万円 (約24.3億円)
純資産合計: 1,630百万円 (約16.3億円)

当期純利益: 145百万円 (約1.5億円)

自己資本比率: 約40.2%
利益剰余金: 1,546百万円 (約15.5億円)

【ひとことコメント】
自己資本比率40.2%、利益剰余金15億円超という数字は、60年以上の歴史を持つ企業の安定性を物語っています。当期も1.4億円を超える純利益を確保しており、多様な事業をバランス良く運営し、着実に収益を上げる優良企業であることが伺えます。

【企業概要】
社名: 株式会社JA建設クリエイトさが
設立: 1963年11月1日
事業内容: 建設事業、不動産事業、物流事業(倉庫・運輸)を営む、JAさがグループの中核企業

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【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、創業以来の「建設事業」を核としながら、地域のニーズに応える形で「物流事業」「不動産事業」へと多角化し、それぞれがシナジーを生み出す強力なポートフォリオを形成しています。

✔地域農業を支える「建設事業」
同社の原点であり、現在も中核をなす事業です。JAグループの一員として、農業用倉庫やライスセンター、選果場といった生産・流通に不可欠な施設の設計・施工に豊富な実績を持ちます。また、その技術力を活かして、JA組合員や地域住民の住宅建築・リフォーム、さらには公共工事まで幅広く手掛けています。地域に深く根差し、「農」の現場を熟知していることが、他社にはない最大の強みです。

✔農産物の価値を守る「物流事業」
近年強化されているのが、倉庫業運送業からなる物流事業です。特に、農産物の鮮度を保つための低温倉庫(定温倉庫)を複数保有し、生産者から消費者まで品質を維持したまま届ける「コールドチェーン」の一翼を担っています。建設事業で自ら高品質な倉庫を建設し、それを物流事業で運営するという、理想的な事業連携を実現しています。

✔組合員の暮らしに寄り添う「不動産事業」
宅地建物取引業として、地域住民の土地や建物の売買・賃貸をサポートします。農業従事者の高齢化に伴う農地の活用や、Uターン・Iターン希望者の住まい探しなど、JAグループだからこそ寄せられる、地域特有の不動産ニーズに応えています。

✔「JAさがグループ」としての総合力
これら3つの事業は、すべて「JAさが」という強力なブランドと顧客基盤の上に成り立っています。JA組合員や関連団体が主要な顧客であり、絶対的な信頼を背景に、安定した事業を展開することが可能です。「建てる(建設)」「守り、運ぶ(物流)」「住まう・活かす(不動産)」という、地域に不可欠なサービスをワンストップで提供できることが、同社の最大の競争優位性です。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
佐賀県のような農業県において、農業従事者の高齢化や後継者不足は深刻な課題です。一方で、ICTやドローンを活用した「スマート農業」の導入など、生産性向上に向けた新しい設備投資の需要も高まっています。また、高品質な農産物を都市部や海外へ届けるための、高度な物流網(コールドチェーン)の重要性も増しています。

✔内部環境
同社は、JAグループ内の事業再編を機に、運輸・倉庫、不動産といった業務をJA本体から引き継ぎ、事業を拡大してきました。これは、各分野の専門性を高め、より効率的な経営を目指すというグループ全体の戦略の一環です。3つの事業が相互に顧客を紹介し合うなど、事業間のシナジーを創出することで、グループ全体の価値向上に貢献しています。

✔安全性分析
自己資本比率40.2%は、建設業を営む企業として非常に健全な水準です。これは、安定した収益力で得た利益を、着実に内部留保として蓄積してきた結果です。15億円を超える豊富な利益剰余金は、60年以上の歴史を持つ老舗企業の堅実経営の証であり、将来の設備投資や新規事業への挑戦を支える強力な基盤となります。バランスシートの資産の部に占める流動資産の割合が高いことも、建設事業のキャッシュフローが健全に回っていることを示唆しています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「JAさが」グループとしての絶大なブランド信頼性と、安定した顧客基盤
・建設、物流、不動産という、相互にシナジーを生む多角的な事業ポートフォリオ
・60年以上の歴史で培われた、地域の農業と暮らしに関する深い知見と実績
自己資本比率40.2%という、健全で安定した財務基盤

弱み (Weaknesses)
・事業エリアが佐賀県内に集中しており、地域の経済状況や人口動態に業績が左右されやすい
・親会社であるJAグループの経営方針への依存度

機会 (Opportunities)
・スマート農業の普及に伴う、ハイテクな農業施設や設備の建設需要
・農産物のブランド化・高付加価値化に伴う、高度な低温物流(コールドチェーン)の需要拡大
・農家の高齢化や後継者不足に伴う、農地や空き家の有効活用に関する不動産コンサルティング需要

脅威 (Threats)
・地域の人口減少と、農業従事者の長期的な減少
・建設資材や燃料価格の高騰による、コスト増のリスク
・大手ゼネコンや物流企業の、地方・農業分野への参入による競争激化


【今後の戦略として想像すること】
JAグループの総合力を活かし、佐賀県の農業と地域の未来を創造する役割をさらに強化していくことが予想されます。

✔短期的戦略
3つの事業の連携をさらに深化させ、顧客にワンストップでのソリューション提案を強化していくでしょう。例えば、新規就農者に対して、農地の紹介(不動産)、近代的なハウスの建設(建設)、そして収穫物の保管・輸送(物流)までをパッケージで支援するようなサービスが考えられます。

✔中長期的戦略
「スマート農業」の普及をハード面から支えるリーディングカンパニーを目指すことが期待されます。ICTベンダーなどとも連携し、最新技術を導入した植物工場や選果場の設計・施工ノウハウを蓄積していくでしょう。また、物流事業では、佐賀の高品質な農産物を全国、さらには海外へ届けるための輸出拠点としての役割を担うなど、より広域な事業展開も視野に入ってくる可能性があります。


【まとめ】
株式会社JA建設クリエイトさがは、単なる建設会社ではありません。それは、JAさがグループの中核企業として、佐賀県の基幹産業である農業と、そこに暮らす人々の生活基盤そのものを創造し、支える「地域インフラ企業」です。「建設」「物流」「不動産」という3つの事業を有機的に連携させる独自のビジネスモデルと、JAブランドの絶大な信頼、そして60年以上の歴史で培った盤石な財務基盤。これらを武器に、地域社会に深く根差した価値を提供し続けています。日本の農業が大きな変革期を迎える中で、同社がこれからも佐賀の未来を「つくり」「はこび」「ささえる」重要な存在であり続けることは間違いありません。


【企業情報】
企業名: 株式会社JA建設クリエイトさが
所在地: 佐賀県佐賀市大和町大字尼寺一本松2634
代表者: 代表取締役社長 北村 正弘
設立: 1963年11月1日
資本金: 8,400万円
事業内容: 土木建築設計施工、管工事設計施工、機械の据付ならびに修理工事、宅地建物取引業倉庫業、一般貨物自動車運送事業

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