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#2657 決算分析 : 株式会社エコログ 第5期決算 当期純利益 ▲1,580百万円

2016年の電力自由化、続くガス自由化によって、私たちはエネルギーを自由に選べる時代になりました。この変革期に誕生し、電気・都市ガス・プロパンガスという家庭やビジネスに不可欠なエネルギーをワンストップで提供することで成長してきたのが、株式会社エコログです。「まとめるとおトク」という分かりやすいメリットを打ち出し、全国に供給エリアを拡大してきました。しかし、近年、世界的な燃料価格の高騰や円安は、新電力・新ガス会社にとって極めて厳しい逆風となっています。今回は、2020年設立という若いエネルギー企業である同社の決算を読み解き、その厳しい財務状況の実態と、社会インフラを担う企業としての今後の挑戦に迫ります。

今回は、新電力・新ガス事業を展開する、株式会社エコログの決算を読み解き、そのビジネスモデルや戦略をみていきます。

エコログ決算

【決算ハイライト(第5期)】
資産合計: 7,163百万円 (約71.6億円)
負債合計: 7,923百万円 (約79.2億円)
純資産合計: ▲759百万円 (約▲7.6億円)

当期純損失: 1,580百万円 (約15.8億円)

利益剰余金: ▲2,379百万円 (約▲23.8億円)

今回の決算で最も深刻なのは、純資産が約7.6億円のマイナス、すなわち「債務超過」の状態に陥っている点です。これは、当期に計上した約15.8億円という大規模な純損失が直接的な原因であり、累積損失を示す利益剰余金も約▲23.8億円に達しています。負債が資産を上回る極めて厳しい財務状況であり、事業の継続には抜本的な経営改善と財務基盤の強化が急務であることを示しています。

企業概要
社名: 株式会社エコログ
設立: 2020年7月31日
事業内容: 電気・都市ガス・プロパンガスの小売供給を中心としたエネルギー事業

eco-log.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、一般家庭から法人まで幅広い顧客に対し、生活や事業活動に必須のエネルギーを供給する「総合エネルギーリテール事業」です。電力・ガスの自由化によって生まれた市場で、大手電力・ガス会社よりも割安な料金プランや、複数のエネルギー契約をまとめることによる割引を強みに顧客を獲得しています。

✔電力事業
日本卸電力取引所(JEPX)などから電力を調達し、全国の家庭や法人に販売しています。大手電力会社の送配電網を利用するため、供給される電気の品質は従来と変わりません。実質再生可能エネルギー100%プランなども提供しています。

✔都市ガス・プロパンガス事業
大手ガス会社の導管を利用して都市ガスを供給するほか、独自の供給網でプロパンガス(LPガス)も販売しています。電気とガスをセットで契約することによる割引プランが、同社の大きな特徴です。

✔ビジネスモデル
自社で大規模な発電所やガス田を持たず、卸市場からの調達と既存インフラの利用を基本とする「ファブライト」なビジネスモデルです。これにより、低コストでの事業参入を可能にしましたが、一方で、卸市場の価格変動リスクを直接的に受ける構造となっています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
近年、ロシアのウクライナ侵攻や円安を背景に、電力や天然ガスの燃料価格が世界的に高騰しました。これにより、日本卸電力取引所(JEPX)の価格も歴史的な高水準で推移しました。エコログのような、卸市場からの電力調達に依存する新電力会社は、調達コストが販売価格を上回る「逆ザヤ」状態に陥り、多くの企業が事業撤退や倒産に追い込まれるなど、極めて厳しい経営環境に直面しました。

✔内部環境
今回の大規模な損失と債務超過は、この外部環境の激変が直撃した結果です。顧客に低価格なエネルギーを供給するというビジネスモデルが、燃料価格高騰という想定外のリスクによって根底から揺さぶられました。設立から日が浅く、十分な内部留保を蓄積する前に危機に直面したことも、財務状況の悪化に拍車をかけました。

✔安全性分析
自己資本比率が▲10.6%の債務超過状態であり、財務安全性は極めて低いと言わざるを得ません。負債合計(約79.2億円)が資産合計(約71.6億円)を上回っており、企業の存続のためには、増資による資本増強や、金融機関からの支援が不可欠な状況です。特に、流動負債(約79.2億円)が流動資産(約51.3億円)を大幅に上回っており、短期的な資金繰りも非常に厳しいことが推察されます。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・電気、都市ガス、プロパンガスをワンストップで提供できる総合力
・全国に広がる供給エリアと顧客基盤
・代理店制度などを活用した営業網

弱み (Weaknesses)
債務超過という、極めて脆弱な財務基盤
・燃料価格の変動リスクを直接受けるビジネスモデル
・自社の発電設備を持たないことによる、調達コストの不安定さ

機会 (Opportunities)
・燃料価格が安定化した場合の、収益性の急回復
・企業の脱炭素ニーズに応える、再生可能エネルギー関連サービスの提供
・省エネコンサルティングなど、エネルギー供給以外の付加価値サービスの展開

脅威 (Threats)
・世界的な地政学リスクや為替変動による、燃料価格の再高騰
・電力・ガス市場における、大手事業者や他の新電力との熾烈な価格競争
・政府によるエネルギー政策の変更や、新たな規制の導入
・顧客からの価格引き下げ要求圧力


【今後の戦略として想像すること】
極めて厳しい経営状況にある同社が、事業を再生・継続させるためには、大胆な改革が不可欠です。

✔短期的戦略
最優先課題は、財務基盤の再構築です。株主からの大規模な増資や、金融機関との交渉による債務のリスケジュールなど、資本と負債の両面から抜本的な対策を講じることが絶対条件となります。事業面では、不採算な料金プランの見直しや、調達コストと連動した柔軟な価格設定への移行を進め、まずは出血を止めることが急務です。

✔中長期的戦略
単にエネルギーを安く供給するだけのモデルからの脱却が求められます。例えば、企業の顧客に対しては、エネルギー供給と併せて省エネ設備導入のコンサルティングを行ったり、家庭の顧客には、太陽光パネルや蓄電池の導入をサポートしたりするなど、エネルギー効率化を支援するソリューション事業への転換を図ることが考えられます。エネルギーという社会インフラを担う企業として、価格競争から価値提供へと事業の軸足を移せるかが、再生の鍵となるでしょう。


【まとめ】
株式会社エコログは、エネルギー自由化という時代の要請に応えて誕生したチャレンジャーです。しかし、その船出は、世界的な燃料価格高騰という荒波に直面し、今期決算では債務超過という厳しい結果となりました。これは、同社一社の問題ではなく、多くの新電力・新ガス会社が直面した業界全体の構造的な課題を象徴しています。社会に不可欠なエネルギーを供給するという重要な役割を担う企業として、まずは株主や金融機関の支援のもとで財務基盤を立て直し、事業を再生させることが強く求められます。この試練を乗り越え、より強靭で持続可能なビジネスモデルを構築できるか、同社の今後の動向が注目されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社エコログ
所在地: 東京都豊島区西池袋一丁目4番10号
代表者: 代表取締役 阿久津 正
設立: 2020年7月31日
資本金: 1億円
事業内容: 電気・都市ガス・プロパンガスの小売供給を中心とするエネルギー事業

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