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#2624 決算分析 : 公益財団法人かめのり財団、26億円の資産で未来の国際交流を育む

世界で分断と対立が深刻化し、国内では経済格差や多文化共生が喫緊の課題となる現代。未来を担う若い世代が、国境や文化の壁を越えて互いを理解し、友情を育むことの重要性は、かつてないほど高まっています。そのための草の根の国際交流を、地道に、しかし力強く支え続ける組織があります。

今回は、日本とアジア・オセアニアの若者たちの交流を促進する、公益財団法人かめのり財団の決算を読み解きます。その活動の源泉となっている約26億円という潤沢な資産は、どのようにして築かれ、未来のためにどう使われているのか。一個人の志から始まった財団の、壮大な使命と揺るぎない経営基盤に迫ります。

公益財団法人かめのり財団決算

【決算ハイライト(令和6年度)】
資産合計: 2,636百万円 (約26.4億円)
負債合計: 10百万円 (約0.1億円)
純資産合計: 2,626百万円 (約26.3億円)
自己資本比率: 約99.6%
利益剰余金: 54百万円 (約0.5億円)(一般正味財産)

今回の決算公告で最も注目すべきは、自己資本(正味財産)比率が約99.6%という、鉄壁とも言える財務の健全性です。これは、財団の活動が借入金に頼ることなく、ほぼ全てを自己資金で賄っていることを示しています。総資産約26.4億円という巨大な資産基盤は、同財団が長期にわたり、安定して公益事業を継続できる体力を有していることの証です。なお、今回の公告には損益計算書が含まれていないため、当期純損益は不明ですが、この盤石な財政基盤が全てを物語っています。

企業概要
社名: 公益財団法人かめのり財団
設立: 2006年4月11日
事業内容: 日本とアジア・オセアニアの青少年交流事業、国際交流助成、海外日本語教育支援、大学院留学奨学金事業など

www.kamenori.jp


【事業構造の徹底解剖】
かめのり財団の事業は、創設者の熱い想いを具現化する、多角的かつ具体的な国際交流プログラムで構成されています。

✔未来のリーダーを育む「青少年交流事業」
財団の活動の核となるのが、中高生や大学生を対象とした、顔の見える草の根の交流事業です。高校生をカンボジアに派遣し国際協力の現場を学ぶ「スタディツアー」や、日本とアジアの大学生が寝食を共にしリーダーシップを学ぶ「かめのりカレッジ」など、単なる観光ではない、深い学びと相互理解を促すプログラムを数多く実施しています。これらの体験を通じて、未来の日本とアジア・オセアニアの架け橋となる人材を育成しています。

✔国際理解を草の根で支える「助成・支援事業」
同財団は、自ら事業を行うだけでなく、同じ志を持つ他の団体や個人を支援する、プラットフォームとしての役割も担っています。海外の大学などで行われる日本語教育への支援や、市民団体が行う国際交流活動への助成を通じて、より多くの人々に国際理解の輪を広げています。また、地道な活動に光を当てる「かめのり賞」の授与は、草の根で国際交流に貢献する人々にとって、大きな励みとなっています。

✔創設者の志を継ぐストーリー
同財団の事業を理解する上で不可欠なのが、その設立の経緯です。財団名は、創設者・康本健守氏の父であり、韓国・済州島から日本へ渡り、誠実な努力で財を成した康本亀範(かめのり)氏に由来します。亀範氏が常々口にしていた「社会から与えられたものを社会に還元せよ」という言葉を胸に、息子の健守氏が、日本とアジア・オセアニアの若者たちの相互理解を願い、私財を投じて設立しました。この感動的なストーリーが、財団の全ての活動の根底に流れています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
理事長の挨拶にもある通り、世界的な分断の深化や、日本国内における外国人居住者の増加といった社会情勢は、同財団が掲げる「多文化共生」や「相互理解」の重要性を一層高めています。ポストコロナで国際的な人の往来が回復したことも、同財団の交流事業にとって大きな追い風です。

✔内部環境
公益財団法人のビジネスモデルは、企業とは大きく異なります。同財団は、設立時に寄付された資金(基本財産)を安定的に運用し、そこから得られる収益(果実)を公益事業の活動資金に充てています。貸借対照表の固定資産の部に計上された約26億円という巨額の資産が、この基本財産の中核であると推測されます。その戦略は、短期的な利益の追求ではなく、この資産をいかに安全かつ着実に運用し、永続的に公益活動を続けていくか、という超長期的な視点に立っています。

✔安全性分析
自己資本(正味財産)比率99.6%という数字が示す通り、財務の安全性は完璧と言えます。負債がほとんど存在しないため、金利の変動や景気の後退といった外部要因に左右されることなく、安定した事業運営が可能です。約26億円という潤沢な正味財産は、同財団が目先の資金繰りに悩むことなく、真に社会にとって有益な事業を、長期的な視点で企画・実行できる強固な基盤となっています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・約26億円という、極めて潤沢で安定した財政基盤
・「社会への還元」という、創設者から受け継がれる明確で共感を呼ぶ理念
・高校生交流から日本語教育支援まで、多角的で実績のある事業ポートフォリオ
・長年の活動で築き上げた、国内外の教育機関NPOとの広範なネットワーク

弱み (Weaknesses)
・事業の成果が、金銭的な利益ではなく社会的なインパクトで測られるため、評価が難しい
地政学的なリスクや感染症の流行など、国際交流を阻害する外部要因の影響を受けやすい

機会 (Opportunities)
・日本国内における、外国人との多文化共生社会の実現に向けた機運の高まり
・ポストコロナにおける、若者世代の海外留学や国際交流への関心の回復
・企業のCSR活動との連携による、新たな共同プロジェクトの可能性

脅威 (Threats)
・国家間の関係悪化による、青少年交流事業の停滞リスク
・世界的な金融市場の混乱による、財団の運用資産への影響
・国内の若者の内向き志向による、国際交流への関心の低下


【今後の戦略として想像すること】
盤石な基盤を持つ同財団は、今後もその理念に基づき、時代の要請に応える形で事業を深化させていくでしょう。

✔短期的戦略
コロナ禍でオンラインにシフトしていた交流事業を、完全にリアルな形に戻し、さらに拡充していくことが最優先課題です。また、近年開始した「多文化共生地域ネットワーク支援事業」に力を入れ、日本国内の喫緊の課題にも積極的に関わっていくことが予想されます。

✔中長期的戦略
長期的には、日本とアジア・オセアニアの青少年交流における、ハブ(中核)としての役割をさらに強化していくでしょう。同財団のプログラムに参加した卒業生(アラムナイ)のネットワークを活性化させ、彼らが次の世代のリーダーとして活躍するための、継続的な支援プログラムを構築していく可能性があります。


【まとめ】
公益財団法人かめのり財団は、単なる助成団体ではありません。それは、一人の企業家の「社会への恩返し」という美しい志から生まれ、約26億円という巨額の資産をエンジンに、日本とアジア・オセアニアの未来を担う若者たちを育む、壮大なプロジェクトです。

その決算書は、短期的な利益を追う企業とは全く異なる、永続性を前提とした盤石の財務基盤を示しています。世界が複雑さを増す中で、国境を越えた人と人との繋がりを地道に育み続ける同財団の活動は、未来の平和に向けた、確かな希望の光と言えるでしょう。


【企業情報】
企業名: 公益財団法人かめのり財団
所在地: 東京都千代田区麹町5丁目5番地 ベルヴュー麹町1階
代表者: 理事長 宮嶋 泰子
設立: 2006年4月11日
事業内容: 日本とアジア・オセアニアの青少年交流事業(交換留学、スタディツアー等)、国際交流活動への助成、海外における日本語教育支援、かめのり賞による顕彰事業、大学院留学奨学金事業など

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