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#2455 決算分析 : 株式会社ISOWA 第73期決算 当期純利益 1,139百万円

オンラインショッピングで届く、おなじみの段ボール箱。軽量でありながら丈夫で、リサイクルも可能なこの「箱」は、現代の物流と消費を支える、まさに社会インフラの一部です。しかし、一枚の平らな紙から、あの複雑な波形の構造を持つ段ボールシートが、いかにして生み出されるのか、想像したことはあるでしょうか。

その答えは、巨大で精密な「段ボール製造機械」にあります。今回は、1920年の創業から100年以上にわたり、この段ボール機械の設計・製造一筋に歩み、世界中の段ボール産業を支えてきた、愛知県春日井市のグローバル・ニッチトップ企業、株式会社ISOWAの決算を分析します。

160億円を超える圧倒的な純資産が物語る、その盤石な経営と、世界を舞台に戦う「日本のものづくり」の神髄に迫ります。

ISOWA決算

【決算ハイライト(第73期)】
資産合計: 20,355百万円 (約203.6億円)
負債合計: 3,979百万円 (約39.8億円)
純資産合計: 16,376百万円 (約163.8億円)

当期純利益: 1,139百万円 (約11.4億円)

自己資本比率: 約80.5%
利益剰余金: 16,015百万円 (約160.1億円)

決算数値の中で、まず圧巻なのが純資産の額です。総資産約203.6億円に対し、純資産が約163.8億円。これを示す自己資本比率は約80.5%と、大規模な工場を持つ製造業としては驚異的な水準です。160億円を超える利益剰余金は、100年以上にわたる黒字経営の歴史そのものです。その上で、当期純利益も11億円超と極めて高い収益を上げており、技術力、収益力、安定性のすべてを兼ね備えた、超優良企業であることがわかります。

企業概要
社名: 株式会社ISOWA
設立: 1952年(創業は1920年
事業内容: 段ボール製造機械(製函機、製段機)の設計、製造、販売、アフターサービス。

www.isowa.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、段ボールシートをゼロから製造し、最終的な箱の形にまで加工する、一連の巨大な産業機械システムの提供に集約されます。

✔製段機(コルゲータ)
平らな紙(ライナー)と波状の紙(中芯)を貼り合わせ、段ボールのシートを製造する巨大な機械ラインです。ISOWAは、世界初のノーフィンガーシングルフェーサ(高速で高品質なシートを製造する技術)を開発するなど、この分野における技術革新をリードしてきました。

✔製函機(フレキソフォルダグルア)
製段機で作られた段ボールシートに、印刷(フレキソ印刷)、溝入れ、接着(グルア)といった加工を施し、立体的な「箱」の形に仕上げる機械です。ISOWAの製函機は、その高速性と精密性で世界的に高い評価を得ており、欧州の段ボール協会で最優秀賞を受賞するなど、数々の実績を誇ります。

✔グローバルな事業展開
ISOWAのビジネスは、国内に留まりません。早くも1960年代にはアメリカ市場への進出に成功。現在では、北米、欧州、中国に現地法人を構え、世界中の段ボールメーカーに製品とサービスを提供しています。売上の多くを海外が占める、真のグローバル企業です。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
段ボールの需要は、Eコマース市場の拡大と世界的な物流の活発化を背景に、安定的に成長しています。また、環境意識の高まりから、プラスチック製包装材からの代替需要も追い風となっています。一方で、機械製造業として、原材料価格の高騰や、海外メーカーとの競争といった課題にも直面しています。

✔内部環境
11億円超という巨額の利益は、同社の技術的優位性が高い利益率を生み出していることを示しています。段ボール機械は、顧客の生産性を左右する極めて重要な設備であり、価格だけでなく、性能、耐久性、そしてアフターサービスが厳しく問われます。ISOWAは、100年以上の歴史で培った技術と信頼、そして760件にのぼる特許取得数に裏打ちされた高い付加価値を提供することで、安定した収益を確保しています。

✔安全性分析
自己資本比率80.5%、利益剰余金160億円。この数字が示す財務安全性は、もはや鉄壁です。事実上の無借金経営であり、いかなる景気変動にも揺るがない、圧倒的な経営体力を有しています。この盤石な財務基盤があるからこそ、目先の利益に追われることなく、長期的な視点での研究開発や、グローバルなサービスネットワークの構築に、大胆な投資を続けることができるのです。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・100年以上の歴史と760件の特許に裏打ちされた、世界トップクラスの技術力。
自己資本比率80.5%と160億円の利益剰余金が示す、絶対的な財務安定性。
・北米、欧州、アジアに拠点を有する、グローバルな販売・サービスネットワーク。
・「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」受賞など、人を大切にする優れた企業文化。

弱み (Weaknesses)
・製品が段ボール産業に特化しているため、同産業の設備投資動向に業績が左右される。
・オーダーメイドの大型機械が主力であるため、受注から納入までのリードタイムが長い。

機会 (Opportunities)
・世界的なEコマース市場の拡大に伴う、段ボール需要の継続的な増加。
・環境問題への意識の高まりによる、リサイクル可能な段ボールへの需要シフト。
・工場のスマート化(インダストリー4.0)に対応した、IoT搭載型インテリジェントマシンの開発。

脅威 (Threats)
・ドイツやイタリアなどの、海外の強力な競合メーカーとの技術開発競争。
・世界的な景気後退による、顧客企業の設備投資の抑制や凍結。
新興国メーカーの台頭による、価格競争の激化。


【今後の戦略として想像すること】
圧倒的な財務基盤と技術力を持つ同社は、業界のリーダーとして、次世代の段ボール製造の形を定義していく存在になるでしょう。

✔短期的戦略
顧客の生産性向上に直結する、既存機械のさらなる高速化・自動化を進めるでしょう。また、24時間対応のアフターサービス体制をさらに強化し、顧客の「機械を止めない」というニーズに応えることで、サービス事業の収益性を高めていくことが考えられます。

✔中長期的戦略
IoTやAI技術を全面的に活用した、「スマートコルゲータ」「スマートファクトリー」の実現をリードしていくことが期待されます。機械が自らの状態を診断し、故障を予知する。あるいは、生産データとAIを組み合わせ、最も効率的な生産計画を自動で立案する。そうした、未来の段ボール工場をトータルで提案するソリューションプロバイダーへと進化していくでしょう。


【まとめ】
株式会社ISOWAは、段ボール機械というニッチながらも、現代社会に不可欠な産業機械の世界で、100年以上にわたりトップを走り続ける、日本のものづくりの誇りとも言える企業です。

第73期決算が示す、自己資本比率80.5%、利益剰余金160億円という数字は、単に儲かっているという事実以上に、同社が顧客や社員、そして社会と真摯に向き合い、実直な経営を続けてきた歴史の重みを物語っています。世界中の物流を支える「段ボール」を生み出す機械。その心臓部を創り続けるISOWAの挑戦は、これからも日本の製造業の未来を明るく照らし続けてくれるはずです。


【企業情報】
企業名: 株式会社ISOWA
所在地: 愛知県春日井市西屋町字南野池66番地
代表者: 代表取締役 磯輪 英之
設立: 1952年12月25日(創業:1920年10月)
資本金: 1億円
事業内容: 段ボール機械の設計、製造、販売、並びに付帯する一切の業務

www.isowa.co.jp

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