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#2439 決算分析 : 株式会社ITマネジメントパートナーズ 第13期決算 当期純利益 1,138百万円

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、最新技術の導入、そして高度化するサイバーセキュリティ対策。現代の企業において、IT・デジタル部門に寄せられる期待は、かつてなく高まっています。しかしその裏側で、多くのIT部門は、既存システムの維持管理や人材不足といった課題に追われ、本来注力すべき「未来を創る」業務に十分なリソースを割けない、というジレンマに陥っています。

もし、そんなIT部門に、豊富な経験と実績を持つ「プロの経営パートナー」が伴走してくれるとしたらどうでしょうか。

今回は、ITの巨人・富士通グループの一員として、企業のIT部門改革に特化したコンサルティングアウトソーシングを提供する、株式会社ITマネジメントパートナーズの決算を分析。11億円超という巨額の利益が示す、そのユニークで強力なビジネスモデルに迫ります。

ITマネジメントパートナーズ決算

【決算ハイライト(第13期)】
資産合計: 10,330百万円 (約103.3億円)
負債合計: 3,632百万円 (約36.3億円)
純資産合計: 6,697百万円 (約67.0億円)

当期純利益: 1,138百万円 (約11.4億円)

自己資本比率: 約64.8%
利益剰余金: 6,647百万円 (約66.5億円)

まず注目すべきは、11億円を超える極めて高水準の当期純利益です。企業のIT部門支援という専門的なサービスが、いかに高い付加価値と収益性を生み出しているかを物語っています。さらに、自己資本比率は約64.8%と非常に高く、66億円以上の利益剰余金を蓄積しており、財務基盤は盤石です。これは、安定した高収益ビジネスを継続してきた明確な証左と言えるでしょう。

企業概要
社名: 株式会社ITマネジメントパートナーズ
設立: 2012年
株主: 富士通株式会社 (100%出資)
事業内容: 企業のIT・デジタル部門の改革・改善に関するコンサルティングおよびアウトソーシングサービスの提供。

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【事業構造の徹底解剖】
同社のビジネスモデルは、課題を抱える企業のIT部門を「診断」し、最適な「処方箋(改革プラン)」を提示、さらにはその実行までを請け負う、まさに「IT部門の総合病院」とも言えるものです。

✔IT機能診断サービス(課題の可視化)
改革の第一歩として、顧客企業のIT部門の現状を客観的に分析・評価するサービスです。富士通が長年の顧客との共同運営で蓄積してきた膨大なデータやノウハウを基にした独自の評価指標を用い、IT業務のパフォーマンス、コスト、人材スキルなどを徹底的に可視化。「業界標準と比べてどうなのか」「どこに課題があるのか」を明確にし、目指すべき将来像を描き出します。

✔ITマネジメントサービス(改革の実行)
診断によって明らかになった課題を解決するための、アウトソーシングサービスです。単に人手を貸し出すのではなく、富士通が体系化した「マネジメント機能」そのものを、標準化されたソリューションとして提供します。これにより、顧客企業は自社でツール開発や人材育成に多額の投資をすることなく、最小限のコストと時間で、確実な改革成果を得ることが可能になります。まさに「IT部門のプロ運営チーム」を、必要な期間だけ導入できるサービスと言えます。

富士通グループとしての強み
同社の最大の強みは、富士通が過去20年にわたり、顧客企業のIT子会社を合弁事業として共同運営してきた歴史の中で培われた、生々しい「実践知」に裏打ちされている点です。机上の空論ではない、現場で効果が実証されたノウハウをサービスとして提供できることが、他社にはない決定的な差別化要因となっています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
DXの波はあらゆる業界に及んでおり、すべての企業にとってIT・デジタル戦略は経営の最重要課題の一つです。しかし、最先端の技術やマネジメント手法に精通したIT人材は社会全体で不足しており、多くの企業が外部の専門家の力を必要としています。この構造的な需要が、同社の事業にとって強力な追い風となっています。

✔内部環境
同社のビジネスは、工場や設備をほとんど必要としない、知識集約型のサービス業です。最大の資産は、富士通から受け継いだノウハウと、それを実践できる優秀な人材です。約103億円の総資産に対し、11億円超の純利益を生み出す高い収益性は、この無形資産の価値の高さを物語っています。また、富士通という絶大なブランド力と顧客基盤が、河合塾田辺三菱製薬といった大手優良企業との取引を可能にしています。

✔安全性分析
自己資本比率約64.8%という数値が示す通り、財務安全性は極めて高いレベルにあります。設立から13期で積み上げた利益剰余金が66億円を超えており、有利子負債は少なく、キャッシュフローも潤沢であると推測されます。財務的なリスクはほぼ皆無であり、今後の事業拡大や新たなサービス開発に向けた投資余力も十分に有しています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
富士通の20年にわたる実践知から生まれた、独自性の高いサービスとノウハウ。
・「富士通」ブランドによる、大企業へのアクセスと高い信用力。
・11億円超の利益が示す、極めて高い収益性と、自己資本比率64.8%という盤石な財務基盤。
・診断からアウトソーシングまで一貫して提供できる、包括的なソリューション提供能力。

弱み (Weaknesses)
・事業の成功が、高度な専門知識を持つコンサルタント人材に大きく依存する点。
富士通グループとしての位置づけから、親会社の戦略的方針転換による影響を受ける可能性。

機会 (Opportunities)
・DX化の潮流が中堅・中小企業へも広がり、新たな市場が拡大する可能性。
・Generative AIなど、新たなテクノロジーを活用したITマネジメントサービスの開発。
富士通のグローバルネットワークを活用した、海外展開の可能性。

脅威 (Threats)
外資コンサルティングファームや、他の大手ITベンダーとの競争激化。
・長期的な景気後退による、企業のIT投資の抑制。
・ITアウトソーシングコモディティ化による、価格競争の発生。


【今後の戦略として想像すること】
盤石な経営基盤と強力なブランドを持つ同社は、サービスの深化と顧客基盤の拡大を両輪で進めていくと考えられます。

✔短期的戦略
国内の大手企業を主対象とした現在のビジネスを、さらに深耕していくでしょう。特に、製造業や金融、製薬といった、ITシステムが複雑で、かつDX投資に積極的な業界でのシェアを拡大していきます。また、最新の技術トレンドを常に取り入れ、診断サービスやマネジメント手法を継続的にアップデートしていくことが予想されます。

✔中長期的戦略
現在の「ハイタッチ(手厚いコンサルティング)」なサービスモデルに加え、より標準化されたサービスをパッケージ化し、中堅企業市場へと展開していく可能性があります。また、富士通のグローバルな顧客基盤を活かし、日系企業の海外拠点におけるIT部門改革を支援するような、グローバルなサービス展開も視野に入ってくるでしょう。


【まとめ】
株式会社ITマネジメントパートナーズは、単なるITコンサル会社やアウトソーサーではありません。それは、富士通が持つ「IT部門運営の実践知」という唯一無二の資産を武器に、顧客企業のIT部門を改革し、DXを成功へと導く「変革のパートナー」です。

第13期決算が示す11億円超という巨額の利益と、自己資本比率64.8%という鉄壁の財務は、そのビジネスモデルがいかに市場から強く求められ、そして成功しているかを明確に示しています。すべての企業がDXという課題に直面する現代において、IT部門の「かかりつけ医」とも言える同社の役割は、今後ますます重要になっていくことでしょう。


【企業情報】
企業名: 株式会社ITマネジメントパートナーズ
所在地: 神奈川県川崎市幸区大宮町1番地5 JR川崎タワー
代表者: 代表取締役社長 徳武 順一
設立: 2012年11月1日
資本金: 5,000万円
事業内容: 企業のIT・デジタル部門の改革、改善に関するコンサルティングアウトソーシングなど
株主: 富士通株式会社 (100%出資)

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