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#2422 決算分析 : 株式会社日本オープンシステムズ 第36期決算 当期純利益 645百万円

現代ビジネスにおいて、デジタルトランスフォーメーション(DX)は企業の規模を問わず、生き残りをかけた重要な経営課題となっています。しかし、多くの企業、特に地方に拠点を置く企業にとっては「何から始めればいいのか」「誰に相談すればいいのか」という悩みが尽きません。そんな中、富山県に本社を構え、地方から全国へ、企業のDX化を力強く支援する独立系システムインテグレーターが存在します。

今回は、経済産業省から「DX認定事業者」にも選ばれ、顧客に寄り添う姿勢で着実な成長を続ける株式会社日本オープンシステムズの決算を読み解き、その盤石な経営を支えるビジネスモデルと今後の戦略に迫ります。

日本オープンシステムズ決算

【決算ハイライト(第36期)】
資産合計: 5,806百万円 (約58.1億円)
負債合計: 1,789百万円 (約17.9億円)
純資産合計: 4,017百万円 (約40.2億円)

当期純利益: 645百万円 (約6.5億円)

自己資本比率: 約69.2%
利益剰余金: 4,104百万円 (約41.0億円)

まず注目すべきは、自己資本比率が約69.2%という極めて高い水準にある点です。これは企業の財務健全性を示す指標であり、一般的な目安である30%~50%を大きく上回ります。総資産の7割近くを返済不要の自己資本で賄っており、非常に安定した財務基盤を築いていることがわかります。売上高約64.1億円に対して当期純利益約6.5億円を確保しており、高い収益性も兼ね備えた優良企業であると言えるでしょう。

企業概要
社名: 株式会社日本オープンシステムズ
設立: 1990年
事業内容: コンサルティングからシステム構築、クラウド導入、保守・運用に至るまで、企業のDXを総合的に支援するITソリューション事業を展開。

www.jops.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社のビジネスは、顧客企業のITに関するあらゆる課題をワンストップで解決する「総合ITソリューション事業」に集約されます。そのサービスは、大きく3つの領域で構成されています。

コンサルティングソリューション
事業の最上流工程として、顧客の経営課題や業務上の悩みをヒアリングし、最適なIT戦略を立案します。単にシステムを導入するだけでなく、DX推進支援やICTコンサルティングを通じて、企業の成長に繋がるIT投資の道筋を描き出す、いわば企業のIT戦略パートナーとしての役割を担っています。

✔システムインテグレーションソリューション
コンサルティングで描いた戦略を具現化する、同社の中核事業です。業務システムやWebアプリケーションのスクラッチ開発から、AWSMicrosoft 365といったクラウドサービスの導入・活用支援、kintoneやBIツールを用いた業務改善まで、多岐にわたる技術領域をカバーします。特定のメーカーに縛られない「独立系」の強みを活かし、顧客にとって本当に価値のある技術や製品を組み合わせて提供できる点が大きな特徴です。

✔システム運用ソリューション
システムは作って終わりではありません。同社は、構築したシステムが顧客のビジネスを支え続けられるよう、日々の運用・保守サービスも提供します。セキュリティ診断や対策、システムの品質を担保する検証サービスまで手掛け、導入後も長期的に顧客をサポートする体制を整えています。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
人手不足や働き方改革を背景に、企業のDX投資意欲は依然として旺盛です。特に、IT人材が不足しがちな地方企業にとって、同社のような地域に根差した伴走型の支援パートナーの価値は高まっています。一方で、クラウドやAIといった技術の進化は著しく、常に最新技術をキャッチアップし続ける必要があります。

✔内部環境
売上高約64.1億円に対し、当期純利益は6.45億円。売上高純利益率は約10.1%と、IT業界の中でも高い収益性を誇ります。この高い利益率は、上流のコンサルティングから開発、運用までを一気通貫で提供することによる付加価値の高さや、近年力を入れている自社開発プロダクトが貢献していると推測されます。また、富山本社と東京、名古屋、長野、金沢の各拠点が連携することで、地域密着の丁寧なサポートと、都市圏の最新技術動向を両立させる戦略をとっています。

✔安全性分析
自己資本比率約69.2%、流動比率流動資産÷流動負債)約401.3%と、財務の安全性は傑出しています。約41億円もの利益剰余金を内部に蓄積しており、実質的な無借金経営と言っても過言ではありません。この盤石な財務基盤があるからこそ、短期的な業績に左右されず、長期的な視点での人材投資や研究開発、さらにはM&Aといった戦略的な打ち手を講じることが可能となっています。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
自己資本比率約69.2%という、極めて健全で安定した財務基盤。
・特定のメーカー製品に依存しない、独立系SIerとしての柔軟なソリューション提案力。
コンサルティングから開発、保守・運用までワンストップで提供できる総合力。
・富山本社と全国の拠点を活かした、地域密着と広域展開のハイブリッド戦略。
・国が認定する「DX認定事業者」としての社会的信頼性。

弱み (Weaknesses)
・事業の成長が優秀なIT人材の確保に大きく依存する労働集約型のビジネスモデル。
・大手SIerと比較した場合のブランド認知度や、超大規模案件への対応力。

機会 (Opportunities)
・国内企業、特に人手不足に悩む地方におけるDX化の巨大な潜在需要。
クラウド、AI、IoTなどの先端技術を活用した新たなソリューション開発の可能性。
・事業承継問題を抱える企業の業務標準化や効率化を支援するITニーズ。

脅威 (Threats)
・IT業界全体で激化する、優秀なエンジニアの獲得競争とそれに伴う人件費の高騰。
・海外オフショア開発の普及などによる、システム開発の価格競争。
・景気後退局面における、企業のIT投資抑制リスク。


【今後の戦略として想像すること】
この盤石な経営基盤と事業環境を踏まえ、同社は今後、以下のような戦略を展開していくことが考えられます。

✔短期的戦略
AWSMicrosoft 365といった、比較的導入しやすく効果を実感しやすいクラウドソリューションの提供をさらに強化し、まだDXに着手できていない中小企業の掘り起こしを進めるでしょう。また、自社開発のクラウド型資産管理サービス「Birdeye」などのSaaSプロダクトの販売を拡大し、安定的なストック収益の比率を高めていくことも重要な戦略となります。

✔中長期的戦略
豊富な内部留保を元手に、AIやデータ分析といった、より高度な技術領域への投資を加速させることが予想されます。また、特定の業種・業務に強みを持つ企業のM&Aを積極的に行い、対応可能なソリューションの幅を広げていく可能性も高いでしょう。地方のDXを牽引するリーディングカンパニーとして、地域の教育機関との連携によるIT人材育成への貢献も期待されます。


【まとめ】
株式会社日本オープンシステムズは、単なるソフトウェア開発会社ではありません。それは、驚異的な財務健全性を土台に、顧客の課題に真摯に向き合い、最適なITソリューションでその成長を支援する「企業のDXパートナー」です。第36期決算が示す高い収益性と安定性は、創業以来、顧客との信頼関係を第一に、着実な経営を続けてきた証と言えるでしょう。

今後、日本の多くの企業が直面するであろう人手不足や生産性向上の課題解決において、ITの力は不可欠です。同社が持つ財務的な安定性と幅広い技術力を武器に、特に潜在需要の大きい地方企業のDX化を牽引し、日本経済の活性化に貢献していくことが大いに期待されます。


【企業情報】
企業名: 株式会社日本オープンシステムズ
所在地: 富山県富山市牛島町9番5号
代表者: 代表取締役 園 博昭
設立: 1990年7月5日
資本金: 5,200万円
事業内容: システム構築事業、システム運用事業、システム検証事業、ITインフラ構築・運用事業、AWSクラウド構築・運用事業、各種ソリューションシステム導入事業、その他関連事業

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