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#2404 決算分析 : 八洲EIテクノロジー株式会社 第8期決算 当期純利益 219百万円

オフィスビルや工場の快適な空調、研究所の厳密な環境を維持する特殊空調、そして私たちの安全を守るセキュリティシステムや映像監視システム。現代社会の基盤となるこれらの「設備」と「情報」システムは、ますます高度化・複雑化しています。物理的な配管や配線工事を行う「設備技術」と、ネットワークやソフトウェアを構築する「情報技術」。これら二つの異なる専門領域を融合させ、顧客の多様な課題にワンストップで応えるユニークなエンジニアリング企業があります。それが、今回取り上げる「八洲EIテクノロジー株式会社」です。東証プライム上場の技術商社・八洲電機グループの中核を担う同社は、どのような経営を行っているのか。第8期決算公告から、その事業の強みと財務の健全性に迫ります。

八州EIテクノロジー決算

【決算ハイライト(第8期)】
資産合計: 3,384百万円 (約33.8億円)
負債合計: 1,447百万円 (約14.5億円)
純資産合計: 1,937百万円 (約19.4億円)

当期純利益: 219百万円 (約2.2億円)

自己資本比率: 約57.2%
利益剰余金: 1,237百万円 (約12.4億円)

まず注目すべきは、自己資本比率が約57.2%という、極めて健全で安定した財務基盤です。総資産約33.8億円に対し、半分以上を自己資本で賄っており、外部環境の変化に対する高い耐性を持っています。資本金3.5億円に対し、その3.5倍以上となる約12.4億円の利益剰余金が積み上がっていることも、設立以来、安定的に高収益を上げ続けてきた優良企業の証左です。今期も2.2億円近い高い純利益を確保しており、盤石な経営基盤の上で、力強い事業運営がなされていることが明確に見て取れます。

企業概要
社名: 八洲EIテクノロジー株式会社
営業開始日: 2018年4月1日
株主: 八洲電機株式会社(100%)
事業内容: 東証プライム上場の技術商社・八洲電機グループのエンジニアリング中核企業。「設備関連」と「情報関連」を両輪に、空調・給排水設備工事から、セキュリティシステム、製造業向けIoTソリューションの構築までを幅広く手掛ける。

www.yashima-ei.co.jp

 


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、その社名にあるE(Engineering)とI(Information Technology)の融合を体現する、2つの大きな柱で構成されています。

✔設備関連事業
ビルや工場の快適性と生産性を支える、物理的なインフラ構築事業です。
・ビル設備工事:一般的なオフィスや商業施設の空調・給排水衛生設備工事全般を請け負います。
・特殊空調設備:より高度な技術が求められる領域に強みを持ちます。半導体工場などで不可欠な「クリーンルーム」、感染症研究施設などで用いられる「バイオハザード対策設備」、精密な温度管理が求められる「環境試験設備」など、専門性の高い設備の設計・施工で多くの実績を誇ります。新型コロナウイルス対策として開発した「簡易型陰圧ブースユニット」は、同社の技術力と社会貢献への意識の高さを示す好例です。

✔情報関連事業
物理的な設備に、情報技術を組み合わせることで、より高度なソリューションを提供する事業です。
・セキュリティ・監視システム:AI技術を用いた画像認識による侵入監視システムや、入退室管理システムなど、フィジカルセキュリティをITの力で高度化します。
・IoTソリューション:工場の生産ラインにセンサーを取り付け、稼働状況をリアルタイムで監視・分析する「製造業向けIoTソリューション」などを提供。顧客の生産性向上とDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援します。
・エネルギー監視制御システム:ビルや工場のエネルギー使用量を「見える化」し、最適な制御を行うことで、省エネルギーと脱炭素化に貢献します。


【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
建設業界では、都市部の再開発や、老朽化したインフラ・建物の更新需要が安定した市場を形成しています。特に、半導体工場の国内新設ラッシュや、研究開発拠点の高度化は、同社が得意とする「特殊空調設備」にとって大きな事業機会となっています。また、あらゆる産業でDX推進が経営の最重要課題となる中、工場やビルのスマート化を支援する「情報関連事業」の需要も、今後ますます拡大していくと予測されます。

✔内部環境
同社の最大の強みは、70年以上の歴史を持つ親会社・八洲電機が築き上げてきた、官公庁や大手メーカーとの強固な顧客基盤です。この安定した事業基盤の上で、「設備」と「情報」という両輪の事業を展開することで、顧客の多様なニーズにワンストップで応えられる総合力を発揮しています。例えば、スマートビルを建設するプロジェクトにおいて、空調・衛生設備(設備事業)と、エネルギー管理・セキュリティシステム(情報事業)を、一括で提案・施工できることが、他社にはない大きな競争優位性となっています。

✔安全性分析
自己資本比率57.2%という盤石の財務基盤は、経営の安定性を如実に物語っています。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約232%と極めて高く、資金繰りにも全く懸念はありません。この強固な財務基盤と潤沢な利益剰余金があるからこそ、技術の進化が速い情報関連分野への研究開発投資や、優秀なエンジニアの確保・育成といった、未来への投資を安心して行うことができるのです。


SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・親会社である八洲電機の、強力な顧客基盤とブランド力、信用力。
・「設備」と「情報」を融合させた、独自のワンストップ・ソリューション提供能力。
自己資本比率57.2%を誇る、極めて健全で安定した財務体質。
・特殊空調など、高い専門性が求められるニッチ分野での豊富な実績と技術力。

弱み (Weaknesses)
・建設業界全体に共通する、技術者の確保と高齢化の問題。
・事業が国内の設備投資動向に大きく依存している点。

機会 (Opportunities)
・国内の半導体・データセンター建設ラッシュに伴う、特殊空調やクリーンルームの需要拡大。
・工場のスマート化やビルのZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化といった、DX・GX(グリーン・トランスフォーメーション)の潮流。
・インフラや工場の老朽化に伴う、大規模な更新・リニューアル需要。

脅威 (Threats)
・建設資材や半導体部品の価格高騰による、利益の圧迫。
・建設業界における、深刻な人手不足と労務費の高騰。
・大手ゼネコンやサブコン、ITベンダーなど、各分野における専業プレーヤーとの競争。


【今後の戦略として想像すること】
この事業環境と優れた財務状況を踏まえ、同社が今後どのような戦略を描いていくか、以下のように想像します。

✔短期的戦略
まずは、活況を呈している半導体工場やデータセンター向けの「特殊空調設備」や「クリーンルーム」の受注を、最優先で獲得していくでしょう。これまでの実績を武器に、大型プロジェクトに積極的に参画し、事業の柱をさらに太くしていくと考えられます。

✔中長期的戦略
「環境配慮型社会の構築に貢献する」という経営ビジョンの通り、エネルギー関連のソリューションをさらに強化していくことが期待されます。自社で手掛けるエネルギー監視制御システムを軸に、太陽光発電設備の設置工事や、蓄電池システムの導入、そしてそれらを最適に制御するEMS(エネルギーマネジメントシステム)の構築までをトータルで提供する、「エネルギー・インテグレーター」としての役割を強化していくのではないでしょうか。八洲電機グループの総合力を活かし、顧客の脱炭素経営を包括的に支援するパートナーへと進化していくことが、持続的な成長の鍵となります。


【まとめ】
八洲EIテクノロジー株式会社の決算は、自己資本比率約57%という盤石の財務基盤の上で、2億円を超える高い純利益を上げる、優良エンジニアリング企業の姿を映し出すものでした。同社は単なる設備工事会社やIT企業ではありません。それは、物理的な「設備」とデジタルな「情報」という、現代社会を構成する二つの要素を自在に操り、顧客の課題を解決する、まさに「社会インフラのアーキテクト」です。親会社である八洲電機の安定した基盤の上で、その専門性と機動力を最大限に発揮しています。これからも、DXとGXという時代の大きな潮流を捉え、日本の産業社会をよりスマートで、よりサステナブルな未来へと導いていくことが期待されます。


【企業情報】
企業名: 八洲EIテクノロジー株式会社
所在地: 東京都千代田区神田駿河台三丁目4番地
営業開始日: 2018年4月1日
代表者: 白石 誠仁
資本金: 3億5,000万円
事業内容: 空調・給排水衛生設備工事、特殊空調設備工事、各種情報通信・セキュリティ・監視システムの構築・開発、及びそれらに関連する電気工事・電気通信工事
株主: 八洲電機株式会社

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