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#2384 決算分析 : 株式会社Tixplus 第7期決算 当期純利益 743百万円

好きなアーティストのライブ、応援するスポーツチームの試合。その「感動」の瞬間に立ち会うための第一歩が、「チケット」を手に入れることです。しかし、かつてのチケット販売は、不正な高額転売や偽造、当日の入場混雑といった、多くの課題を抱えていました。こうした問題をテクノロジーの力で解決し、ファンがより便利に、そして安心してエンターテインメントを楽しめる世界を創造してきたのが、「電子チケット」のプラットフォームです。今回は、この電子チケット業界のパイオニアとして、数多くのアーティストやスポーツチームから絶大な信頼を得ている「株式会社Tixplus(ティックスプラス)」に焦点を当てます。「感動」を届けることをミッションに掲げ、ライブ・エンターテインメントのDXを推進する同社は、どのような経営を行っているのか。第7期決算公告から、その卓越した収益性と事業の強みに迫ります。

Tixplus決算

【決算ハイライト(第7期)】
資産合計: 5,010百万円 (約50.1億円)
負債合計: 2,716百万円 (約27.2億円)
純資産合計: 2,294百万円 (約22.9億円)

当期純利益: 743百万円 (約7.4億円)

自己資本比率: 約45.8%
利益剰余金: 1,546百万円 (約15.5億円)

まず決算数値で際立っているのが、その驚異的な収益性です。純資産約22.9億円に対し、当期純利益が約7.4億円。自己資本利益率ROE)に換算すると32%を超える、極めて高い水準を達成しています。これは、資本を非常に効率的に活用し、大きな利益を生み出していることの証左です。自己資本比率も約45.8%と、IT企業として非常に健全で安定した財務基盤を築いています。資本金・資本剰余金の合計(約7億円)に対し、その2倍以上となる約15.5億円の利益剰余金が積み上がっており、設立以来の力強い成長がうかがえます。

企業概要
社名: 株式会社Tixplus
設立: 2018年12月
株主: 株式会社エムアップホールディングス(ウェブサイトの情報から親会社であることが明確)
事業内容: ライブ・エンターテインメント業界に特化したITソリューション企業。電子チケットプラットフォーム「チケプラ」の運営を核に、公式トレード、ライブ配信、ファンアプリ開発などを手掛ける。

tixplus.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、「ファンフォーカス」という価値観のもと、アーティストやスポーツチームといった興行主と、ファンとのエンゲージメント(絆)を、デジタル技術で最大化することにあります。

✔電子チケットソリューション「チケプラ」
事業の中核であり、同社のブランドを象'徴するサービスです。スマートフォンアプリを利用した電子チケットを発券し、QRコードや顔認証による非接触でのスムーズな入場を実現します。このシステムの最大の強みは、チケットの高額転売を防止する厳格な本人認証機能と、行けなくなった人が定価で他のファンにチケットを譲れる公式チケットトレード「チケプラTrade」を組み合わせている点です。これにより、興行主とファンの双方にとって、公正で安心・安全なチケット流通を実現しています。

✔デジタルエンタメコンテンツ
ライブ体験の価値を、イベント当日だけでなく、その前後にも広げる多様なデジタルコンテンツを提供しています。
ライブ配信「StreamPass」/ライブトーク「Meet Pass」:距離を超えてイベントに参加できるライブ配信や、アーティストと1対1で対話できるオンラインイベントを実現。
・オンラインくじ「くじプラ」/デジタルカードコレクション:ライブと連動した限定グッズが当たるオンラインくじや、選手の活躍に応じて価値が変動するデジタルトレーディングカードなど、ファンの「コレクション欲」を刺激するサービスを展開しています。

✔ファンアプリ/スポーツDX推進
アーティストやプロスポーツチームの公式アプリ(ファンアプリ)を開発・運営。試合やライブの情報、チケット購入、グッズ販売、デジタルコンテンツなどを一つのアプリに集約し、「365日ファン活応援」を実現します。ファンとの日常的な接点を創出することで、エンゲージメントを高め、収益機会の最大化に貢献しています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
コロナ禍を経て、ライブ・エンターテインメント市場は力強い回復を見せています。また、不正転売防止への社会的な要請はますます高まっており、同社が提供するような高機能な電子チケットシステムの需要は、今後も拡大が見込まれます。さらに、ファンの楽しみ方も多様化しており、ライブ配信やオンラインくじといったデジタルコンテンツは、会場での体験を補完・拡張する新たな収益源として定着しつつあります。

✔内部環境
同社のビジネスモデルは、電子チケットの発券手数料やシステム利用料を主な収益源とする、安定性の高いストック型/トランザクション型のビジネスです。一度導入されれば、アーティストのツアーやスポーツチームのシーズンを通じて継続的に収益が発生します。約7.4億円という高い純利益は、この安定した収益モデルに支えられながら、ライブ配信やオンラインくじといった、利益率の高いデジタルコンテンツ事業が大きく貢献した結果と推察されます。

✔安全性分析
自己資本比率45.8%という数値が示す通り、財務の安全性は非常に高いレベルにあります。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約178%と極めて高く、資金繰りにも全く懸念はありません。この強固な財務基盤があるからこそ、技術の進化が速いIT業界において、常に新しい技術を取り入れたサービスの開発や、システムの安定稼働のためのサーバー増強といった、未来への投資を継続的に行うことができるのです。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・電子チケット業界のパイオニアとして培ってきた、高い技術力と豊富な導入実績。
・不正転売対策と公式トレードを両立させた、公正で信頼性の高いプラットフォーム。
・チケットからデジタルコンテンツ、ファンアプリまでを網羅する、包括的なソリューション提供能力。
・ROE32%超を誇る、極めて高い収益性と資本効率。
自己資本比率約46%の、健全で安定した財務基盤。

弱み (Weaknesses)
・事業がライブ・エンターテインメント市場の動向に大きく依存しており、新たな感染症パンデミックなど、市場全体を縮小させるイベントから影響を受けやすい。

機会 (Opportunities)
・キャッシュレス化の進展と、スマートフォン保有率の上昇に伴う、電子チケットのさらなる普及。
・スポーツDXの加速に伴う、プロスポーツチーム向けファンアプリやデジタルカード市場の拡大。
・NFTやメタバースといった、Web3.0技術を活用した新たなファン体験の創出。

脅威 (Threats)
・国内外の競合チケットプラットフォームとの競争激化。
・システムの安定稼働を脅かす、大規模なサイバー攻撃やシステム障害のリスク。
・個人情報保護に関する法規制の強化。

 

【今後の戦略として想像すること】
この事業環境と優れた財務状況を踏まえ、同社が今後どのような戦略を描いていくか、以下のように想像します。

✔短期的戦略
まずは、既存事業のさらなる拡大と深化を図るでしょう。音楽ライブ市場での圧倒的な強みを活かしつつ、プロ野球Jリーグといった、まだ開拓の余地が大きいスポーツ分野でのシェア拡大を加速させます。ファンエンゲージメントを高めるデジタルカードコレクションやファンアプリをフックに、チケットシステム全体の導入を提案していくと考えられます。

✔中長期的戦略
「感動」を届けるというミッションに基づき、ライブ・エンターテインメントの体験価値を根底から変えるような、新たな技術開発に挑戦していくことが期待されます。例えば、NFT(非代替性トークン)技術を活用し、単なるデジタルデータではない「所有できる」デジタルチケットやデジタルグッズを提供したり、VR/AR技術を用いて、オンラインとリアルの垣根を越えた没入感のあるライブ体験を創造したりと、Web3.0時代の新たなエンターテインメントの形を定義していくのではないでしょうか。

 

【まとめ】
株式会社Tixplusの決算は、純利益7.4億円、自己資本利益率32%超という、エンタメIT業界における圧倒的な勝ち組の姿を映し出すものでした。その成功の根幹にあるのは、不正転売という業界の「不」を解消し、ファンとアーティストの双方に「安心」と「公正」を届けたいという、創業以来の揺るぎない信念です。同社は単なるチケット販売会社ではありません。それは、テクノロジーの力で「感動」を最大化し、ファンとアーティストの絆を深める、ライブ・エンターテインメントの未来を創造するイノベーターです。これからも、変化の激しいエンターテインメントの世界で、常にファンの想いに寄り添いながら、私たちに新たな驚きと喜びを届けてくれることが大いに期待されます。

 

【企業情報】
企業名: 株式会社Tixplus
所在地: 東京都渋谷区渋谷3-12-18 渋谷南東急ビル 5階
設立: 2018年12月
代表者: 池田 宗多朗
資本金: 114,275千円
事業内容: 電子チケット事業、ファン向けアプリケーション事業、及びそれらに関連するシステムの開発・サービスの提供・運営
株主: 株式会社エムアップホールディングス

tixplus.co.jp

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