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#2381 決算分析 : 株式会社TRYALL 第8期決算 当期純利益 12百万円


釣り、キャンプ、そしてアニメやゲームのキャラクターグッズ。一見すると全く異なるこれらの「ホビー(趣味)」の世界には、共通する一つの情熱があります。それは、「好き」という気持ちをとことん突き詰め、自分だけのこだわりを形にしたいという想いです。しかし、細分化・多様化する現代の趣味の世界では、大手メーカーの画一的な製品だけでは満足できない、ニッチでコアなニーズが数多く存在します。今回は、そんな「好き」の情熱を原動力に、「欲しいものは自分たちで作る」をモットーとして、釣り具からアウトドアグッズ、キャラクターコラボ商品まで、ジャンルの垣根を越えてユニークな製品を企画・開発するファブレスメーカー、「株式会社TRYALL(トライアル)」に焦点を当てます。少数精鋭で独自の道を歩む同社は、どのような経営を行っているのか。第8期決算公告から、その事業戦略と財務状況を読み解きます。

TRYALL決算

【決算ハイライト(第8期)】
資産合計: 132百万円 (約1.3億円)
負債合計: 63百万円 (約0.6億円)
純資産合計: 68百万円 (約0.7億円)

当期純利益: 12百万円 (約0.1億円)

自己資本比率: 約51.8%
利益剰余金: 46百万円 (約0.5億円)

まず注目すべきは、自己資本比率が約51.8%という非常に健全な財務基盤です。総資産約1.3億円に対し、半分以上を自己資本で賄っており、安定した経営が行われていることがうかがえます。資本金16百万円に対し、その約3倍となる約0.5億円の利益剰余金が積み上がっていることも、設立以来、着実に利益を蓄積してきた証です。今期も12百万円の純利益を確保しており、ニッチな市場で確かな収益を上げる力があることを示しています。

企業概要
社名: 株式会社TRYALL
設立: 2017年5月
事業内容: 東京都府中市を拠点とする、釣り具およびアウトドア・ホビー関連商品の企画開発・製造・販売を行うファブレスメーカー。「TRY-ANGLE」ブランドの釣具や、キャラクターライセンス商品などを手掛ける。

tryall.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、キャラクターグッズのパイオニアである「コスパタブリエグループ」内の一部門としてスタートしたという、ユニークな出自を持っています。そのDNAは、現在の多角的な事業展開にも色濃く反映されています。

✔オリジナル釣具・アウトドアグッズの企画開発
事業の主軸です。2012年に立ち上げたキャラクターフィッシングブランド「TRY-ANGLE」を原点に、本格的な釣具や、キャンプなどで使えるアウトドア関連の衣類・雑貨を企画・開発しています。自社では工場を持たず、国内外の協力工場に生産を委託する「ファブレスメーカー」形態をとることで、少人数(社員数4名)ながらも、柔軟でスピーディーな商品開発を可能にしています。

✔キャラクターライセンス事業
同社の出自を活かした、ユニークな事業です。人気のアニメやゲームといったキャラクターと、釣具やアウトドアグッズを融合させたコラボレーション商品を企画・開発。作品のファンであり、かつアウトドア愛好家でもあるという、ニッチながらも熱量の高い層にターゲットを絞ることで、他社にはない独自の商品を生み出しています。

✔販売代理店業務
自社製品だけでなく、TAPER & SHAPE(釣竿メーカー)やISUZU(リールメーカー)といった、こだわりを持つアングラーから高い支持を得るブランドの販売代理店業務も手掛けています。これにより、自社の世界観と親和性の高い製品を顧客に提供し、販売チャネルとしての魅力を高めています。販売は、AmazonやBASEといったECプラットフォームが中心です。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
アウトドア・ホビー市場は、コロナ禍を経て大きな変化を遂げました。キャンプや釣りといった、密を避けて楽しめるレジャーへの関心が高まり、市場は活況を呈しました。その反動で現在は一時的な調整局面にあるものの、人々のライフスタイルの中にアウトドア活動が定着したことで、市場は底堅く推移しています。一方で、消費者の目は肥え、単に機能的なだけでなく、デザイン性やブランドの持つストーリー性、あるいは特定の趣味に特化した専門性が、商品選択の重要な基準となっています。

✔内部環境
同社のビジネスモデルは、4名という少数精鋭で運営されている点が最大の特徴です。固定費である人件費を低く抑え、工場などの設備も持たないファブレス経営に徹することで、高い収益性と経営の柔軟性を両立させています。当期の12百万円という純利益は、このスリムな経営体制が可能にした成果と言えます。また、代表取締役自身が企画・開発の最前線に立つことで、顧客のニーズをダイレクトに商品に反映できるスピード感も、大手メーカーにはない強みです。

✔安全性分析
自己資本比率51.8%という数値が示す通り、財務の安全性は盤石です。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約313%と極めて高く、資金繰りにも全く懸念はありません。この強固な財務基盤があるからこそ、流行の移り変わりが激しいホビー市場において、リスクを恐れずに新たな商品開発に挑戦し、「なんにでも挑戦する(TRYALL)」という社名を体現することができるのです。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「キャラクター×アウトドア」といった、独自の企画開発力とニッチ市場でのブランド力。
・少数精鋭・ファブレス経営による、高い収益性と意思決定のスピード。
自己資本比率51.8%を誇る、健全で安定した財務体質。
・ECを中心とした、低コストで広範な顧客にアプローチできる販売チャネル。

弱み (Weaknesses)
・少人数であるため、事業規模の急激な拡大に対応するキャパシティに限界がある。
・特定のキーパーソンへの依存度が高い可能性がある。

機会 (Opportunities)
・アウトドア市場のすそ野拡大と、趣味の細分化・専門化の流れ。
クラウドファンディングなどを活用した、ニッチな商品のテストマーケティングと資金調達。
SNSを通じた、コアなファンコミュニティの形成と、そこからの商品企画。

脅威 (Threats)
・アウトドアブームの沈静化による、市場全体の縮小。
・大手メーカーによる、ニッチ市場への参入。
・海外の協力工場の生産コスト上昇や、品質管理のリスク。

 

【今後の戦略として想像すること】
この事業環境と優れた財務状況を踏まえ、同社が今後どのような戦略を描いていくか、以下のように想像します。

✔短期的戦略
まずは、既存のファンとのエンゲージメントをさらに深めることに注力するでしょう。SNSやイベントを通じて顧客と直接コミュニケーションをとり、次の商品開発のヒントを得ると同時に、ブランドへのロイヤリティを高めていきます。また、安定した財務基盤を活かし、魅力的ながらも生産ロットの問題で製品化が難しいニッチな商品を、クラウドファンディングなどを活用して実現していくことも考えられます。

✔中長期的戦略
「ホビーライフを共に生きる総合メーカー」というビジョンに基づき、現在の釣り・アウトドアという領域から、さらに新たなホビージャンルへと、その企画力の翼を広げていくことが期待されます。例えば、模型やガレージキット、あるいはeスポーツ関連のグッズなど、同社のルーツであるコスパタブリエグループの知見を活かせる分野は数多く存在します。様々な「好き」を持つ人々の「これが欲しかったんだ!」という想いを形にし続けることで、唯一無二のホビーメーカーとしての地位を築いていくのではないでしょうか。

 

【まとめ】
株式会社TRYALLの決算は、自己資本比率約52%という盤石の財務基盤の上で、少数精鋭ながらも着実に利益を生み出す、小粒でもキラリと光る優良企業の姿を映し出すものでした。同社は単なる釣具・アウトドアメーカーではありません。それは、「好き」という純粋な情熱をビジネスの核とし、ジャンルの垣根を自由自在に飛び越えながら、ファンが本当に求めるものを形にする「夢の創造集団」です。大手メーカーが追随できないニッチな市場で、独自の輝きを放つ。これからの時代の新しいメーカーのあり方を、同社の挑戦は示唆しているのかもしれません。

 

【企業情報】
企業名: 株式会社TRYALL
所在地: 東京都府中市住吉町1-83-2-1F
設立: 2017年5月
代表者: 山本 健司
資本金: 1,600万円
事業内容: 釣り具、アウトドア・レジャー関連の衣類および雑貨の企画開発、製造、販売

tryall.jp

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