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#2374 決算分析 : エクスジェン・ネットワークス株式会社 第25期決算 当期純利益 231百万円

現代の企業活動において、「ID管理」は情報セキュリティと業務効率の根幹をなす、極めて重要なテーマです。社員一人ひとりが、PCへのログイン、社内システムへのアクセス、そして無数のクラウドサービスへのサインインと、日々様々なIDとパスワードを使い分けています。人事異動や入退社に伴うIDの追加・変更・削除といった管理業務は、情報システム部門にとって大きな負担となるだけでなく、一つの設定ミスが重大な情報漏洩インシデントに繋がりかねません。この複雑で重要なID管理の課題に対し、20年以上にわたり専門ベンダーとしてソリューションを提供し続けてきた企業があります。それが、今回取り上げる「エクスジェン・ネットワークス株式会社」です。同社の統合ID管理ツール「LDAP Manager」は、国内市場で17年連続出荷本数No.1という圧倒的な実績を誇ります。

今回は、ID管理のプロフェッショナル集団である同社の決算公告を読み解き、その事業の強みと財務の健全性に迫ります。

エクスジェン・ネットワーク決算

【決算ハイライト(第25期)】
資産合計: 1,473百万円 (約14.7億円)
負債合計: 963百万円 (約9.6億円)
純資産合計: 511百万円 (約5.1億円)

当期純利益: 231百万円 (約2.3億円)

自己資本比率: 約34.7%
利益剰余金: 239百万円 (約2.4億円)

まず注目すべきは、純資産約5.1億円という規模に対し、当期純利益が約2.3億円と、極めて高い収益性を達成している点です。自己資本利益率ROE)は45%を超え、資本を非常に効率的に活用して利益を生み出していることがわかります。自己資本比率は約34.7%とソフトウェア業界としては標準的な水準ですが、利益剰余金も約2.4億円と着実に積み上がっており、健全な経営が行われていることがうかがえます。高い収益性と安定した財務基盤を両立している優良企業です。

企業概要
社名: エクスジェン・ネットワークス株式会社
設立: 2000年8月24日
株主: 株式会社ソフトクリエイトホールディングス(東証プライム上場)グループ
事業内容: 「統合ID管理」に特化した専門ソフトウェアベンダー。オンプレミス型のパッケージソフトLDAP Manager」と、クラウド型ID管理サービス(IDaaS)「Extic」の開発・販売、及び関連コンサルティングを手掛ける。

www.exgen.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、創業以来一貫して「ID管理」という専門領域にフォーカスしています。顧客のシステム環境やニーズに合わせ、2つの主力製品を軸に最適なソリューションを提供しています。

LDAP Manager®(オンプレミス型統合ID管理)
同社の代名詞とも言える、17年連続で国内出荷本数No.1を誇るパッケージソフトウェアです。企業内の人事システムやActive Directory、各種業務サーバーなど、社内に点在するID情報を一元的に管理・同期します。
・強み:日本の企業や大学、自治体特有の複雑な人事制度や組織構造にきめ細かく対応できる「柔軟性」と「拡張性」。例えば、「異動後もしばらくは前部署の権限を維持し、その後自動で権限を剥奪する」といった、日本的な運用ニーズにも標準機能で対応可能です。850を超える豊富な導入実績が、その信頼性を物語っています。

✔Extic®(クラウド型ID管理サービス / IDaaS)
クラウドサービスの利用が当たり前となった現代のニーズに応える、国産のIDaaS(Identity as a Service)です。Microsoft 365やGoogle Workspace、cybozu.comといった主要なクラウドサービスへのシングルサインオン(SSO)機能と、ID管理(プロビジョニング)機能を提供します。
・強み:シンプルな操作性と、クラウドサービスだけでなくオンプレミスのActive Directoryなどとも連携できるハイブリッドな対応力。また、大学間の認証連携基盤である「学認(GakuNin)」にも対応しており、文教市場で高い評価を得ています。

✔現場主義に根差した「サービス業的ソフトウェア業」
同社は、単にソフトウェアを開発・販売するだけでなく、顧客の現場に直接出向き、導入コンサルティングから設計・構築、運用サポートまでをパートナー企業と共に手掛ける「現場主義」を貫いています。この顧客に深く寄り添う姿勢が、製品の機能改善にも繋がり、高い顧客満足度を生み出す好循環を創り出しています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進とクラウドサービスの普及により、企業が管理すべきIDの数は爆発的に増加しています。また、サイバー攻撃の高度化や内部不正のリスク増大を受け、厳格なアクセス管理と証跡管理が、J-SOX法対応や内部統制の観点から不可欠となっています。これらの背景から、同社が手掛ける統合ID管理市場は、今後も安定的な成長が見込まれる有望な市場です。

✔内部環境
同社のビジネスモデルは、ソフトウェアのライセンス販売(初期売上)と、年間保守サポートサービス(継続的なストック売上)が収益の柱です。一度導入されれば、長期にわたって保守契約が継続される傾向が強く、安定した収益基盤を築きやすいという特徴があります。今期の2.3億円という高い純利益は、この安定したストック収益に支えられながら、新規ライセンス販売も好調であった結果と推察されます。

✔安全性分析
自己資本比率34.7%は、安定した収益モデルを持つソフトウェア企業として、健全な財務状況です。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)は約88%と100%を下回っていますが、これは前受金(保守料など)が流動負債として計上されるソフトウェア業界特有の事情であり、事業の安定性を考えれば資金繰りに懸念はありません。親会社であるソフトクリエイトホールディングスという、東証プライム上場の強力なバックボーンも、経営の安定性に大きく寄与しています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「LDAP Manager」が誇る、17年連続国内No.1という圧倒的な市場シェアとブランド力。
・日本の商習慣に精通した、きめ細やかで柔軟な製品機能と、現場主義に基づく高いコンサルティング能力。
・オンプレミスとクラウド(IDaaS)の両方をカバーする、包括的な製品ポートフォリオ
・ストック収益を軸とした、安定的で高収益なビジネスモデル。

弱み (Weaknesses)
・海外の大手ITベンダーが提供するIDaaSとの、グローバルな競争。
・事業がID管理という専門分野に特化しているため、市場の大きな変化から影響を受けやすい。

機会 (Opportunities)
・企業のクラウドシフト加速に伴う、IDaaS「Extic」の需要拡大。
・ゼロトラスト・セキュリティへの関心の高まりによる、ID管理の重要性の再認識。
GIGAスクール構想の次段階(2nd GIGA)や校務DXにおける、文教市場でのさらなるシェア拡大。

脅威 (Threats)
Microsoft Entra ID(旧Azure AD)など、OSや大手クラウドプラットフォームに標準搭載されるID管理機能との競合。
・ID管理技術のコモディティ化による、価格競争の激化。

 

【今後の戦略として想像すること】
この事業環境と優れた財務状況を踏まえ、同社が今後どのような戦略を描いていくか、以下のように想像します。

✔短期的戦略
オンプレミス型で圧倒的なシェアを持つ「LDAP Manager」の既存顧客に対し、クラウドサービスとの連携を強化するIDaaS「Extic」を組み合わせたハイブリッドソリューションの提案を加速させるでしょう。これにより、顧客のクラウドシフトを支援しつつ、自社サービスへのロックインを強化する戦略です。

✔中長期的戦略
「Extic」を、単なるID管理ツールから、国産の信頼性を武器とした総合的な「IDプラットフォーム」へと進化させていくことが期待されます。例えば、API連携を強化し、様々なSaaSベンダーがExticを認証基盤として利用できるようなエコシステムを構築したり、AIを活用して不正アクセスの予兆を検知するような、より高度なセキュリティ機能を追加したりしていく可能性があります。ID管理専業ベンダーとして20年以上培ってきたノウハウを、次世代のクラウドネイティブなサービスへと昇華させていくことが、持続的な成長の鍵となります。

 

【まとめ】
エクスジェン・ネットワークス株式会社の決算は、純利益2.3億円という高い収益性と、自己資本比率約35%の健全な財務を両立した、専門分野でトップを走り続ける優良企業の姿を映し出すものでした。同社は単なるソフトウェア開発会社ではありません。それは、企業のセキュリティの根幹を成す「ID」を、日本の商習慣を深く理解したきめ細やかな技術で守り、管理する、まさに「ID管理の匠」です。クラウド化とDXの波に乗り、その専門性はますます社会から求められています。これからも、オンプレミスとクラウドの両輪で、企業の安全で効率的なIT環境を支え続けていくことが期待されます。

 

【企業情報】
企業名: エクスジェン・ネットワークス株式会社
所在地: 東京都千代田区神田小川町1-11 千代田小川町クロスタ11F
設立: 2000年8月24日
代表者: 江川 淳一
資本金: 1億4,570万円
事業内容: 統合ID管理を中心としたコンピュータソフトウェアの開発・販売、及び関連コンサルティング
株主: 株式会社ソフトクリエイトホールディングス グループ

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