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#2277 決算分析 : リーボ株式会社 第15期決算 当期純利益 28百万円

現代のビジネスにおいて、デジタルトランスフォーメーション(DX)は企業の成長を左右する最重要課題です。しかし、多くの企業がその推進において「IT人材の不足」という大きな壁に直面しています。優れたアイデアや事業計画はあっても、それを形にするためのプロジェクトマネージャーやソフトウェアエンジニアを、必要なタイミングで確保することは極めて困難です。この課題に対し、「ソフトウェア開発における人材のクラウドサービス」という革新的なコンセプトを掲げ、企業の技術パートナーとして活躍する企業があります。それが、リーボ株式会社です。今回は、このユニークなビジネスモデルで着実な成長を続ける同社の決算を読み解き、その強固な財務基盤と、不動産テック企業との連携によって切り拓く未来の戦略に迫ります。

今回は、企業のDXを「人材のクラウド化」で支える技術者集団、リーボ株式会社の決算を読み解き、そのユニークなビジネスモデルと経営戦略をみていきます。

リーボ決算

【決算ハイライト(15期)】
資産合計: 126百万円 (約1.3億円)
負債合計: 33百万円 (約0.3億円)
純資産合計: 93百万円 (約0.9億円)

当期純利益: 28百万円 (約0.3億円)

自己資本比率: 約73.8%
利益剰余金: 90百万円 (約0.9億円)

まず注目すべきは、自己資本比率が約73.8%という、極めて高い財務健全性です。総資産約1.3億円のうち、返済不要の自己資本である純資産が約0.9億円を占めており、経営の安定性は磐石と言えます。また、資本金3百万円に対し、利益の蓄積である利益剰余金が約90百万円と30倍にも達しており、創業以来、着実に高収益を上げ続けてきたことが伺えます。当期も約28百万円の純利益を計上しており、少数精鋭ながらも非常に高い収益力を持つ優良企業であることが見て取れます。

企業概要
社名: リーボ株式会社
設立: 2010年11月25日
株主: プロパティデータバンク株式会社(2024年3月の株式交換による)
事業内容: Webアプリケーション・モバイルアプリの受託開発、プロジェクトマネジメント・プロダクトマネジメント支援、ソフトウェア開発プロジェクトにおける要件定義・仕様作成・設計支援

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【事業構造の徹底解剖】
リーボ株式会社の事業は、単なるソフトウェアの受託開発に留まりません。その真髄は、同社が提唱する「人材のクラウドサービス」という独自のビジネスモデルにあります。

✔プロジェクト上流工程支援(PM・設計支援)
同社の最大の強みは、ソフトウェア開発の最も重要かつ難易度の高い「上流工程」に特化した支援サービスです。顧客企業が抱えるビジネス課題に対し、経験豊富なプロジェクトマネージャーやエンジニアがチームの一員として参画。事業の目的を深く理解し、それを実現するための要件定義、仕様策定、システム設計といったプロジェクトの根幹を担います。これは、単に言われたものを作るのではなく、顧客のビジネス成功に深くコミットする「技術パートナー」としての役割です。

✔Web・モバイルアプリ受託開発
上流工程で固められた設計思想に基づき、高品質なWebアプリケーションやモバイルアプリを開発・実装するサービスです。同社のエンジニアは、上流からプロジェクトに携わっているため、ビジネスの背景や目的を深く理解した上で開発に臨むことができます。これにより、仕様変更への柔軟な対応や、よりユーザー価値の高い機能提案が可能となり、単なる下請けの開発会社とは一線を画す付加価値を提供しています。

✔その他の事業や特徴など
2024年3月、同社は不動産管理クラウドサービスで業界をリードする「プロパティデータバンク株式会社」と株式交換を行い、そのグループの一員となりました。これは、リーボの経営戦略における極めて重要な転換点です。これにより、リーボはプロパティデータバンク社が手掛ける大規模な不動産テック(PropTech)領域のシステム開発という、安定的かつ成長性の高い事業基盤を獲得しました。一方、プロパティデータバンク社は、リーボの持つ高度なプロジェクトマネジメント能力と開発力をグループ内に取り込むことで、自社のDXとサービス開発を加速させることが可能になります。この強力なシナジーこそが、現在のリーボの最大の強みであり、今後の成長の原動力となっています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
リーボの極めて健全な財務は、その高付加価値なビジネスモデルと、選択と集中の経営戦略によって支えられています。

✔外部環境
あらゆる業界でDX化が急務となる中、それを推進できる高度なIT人材、特にプロジェクト全体を俯瞰し、ビジネスと技術を繋ぐことができるプロジェクトマネージャー(PM)の需要は逼迫しています。多くの企業が自社での採用・育成に苦戦しており、外部の専門家を求める動きは今後ますます加速するでしょう。この市場環境は、「必要な時に、必要な能力を持った人材を、必要な分だけ提供する」というリーボのビジネスモデルにとって、強力な追い風となっています。

✔内部環境
従業員数20名(業務委託等含む)という少数精鋭の組織体制が、同社の強みである高い専門性と機動性を支えています。固定費である人件費を抑制しつつ、プロジェクト単位で最適なチームを組成することで、高い利益率を確保しています。また、プロパティデータバンクグループに参画したことで、営業活動を効率化し、より開発やプロジェクトマネジメントという本質的な業務にリソースを集中できる経営環境が整いました。これは、企業の持続的な成長にとって非常に大きなアドバンテージです。

✔安全性分析
自己資本比率73.8%という数字が示す通り、財務の安全性は完璧に近いレベルです。負債が少なく、経営は自己資金で十分に賄われています。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約378% (121,814 / 32,229 * 100)と、安全の目安である200%を大きく上回っており、資金繰りに関する懸念は全くありません。潤沢な利益剰余金は、将来の技術トレンドの変化に対応するための研究開発や、優秀な人材への投資の原資となり、企業の成長をさらに加速させるでしょう。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・要件定義など、開発プロジェクトの最上流工程に特化した高い専門性と実績
・「人材のクラウドサービス」という、市場ニーズに合致したユニークなビジネスモデル
自己資本比率73.8%という、極めて健全で安定した財務基盤
・親会社プロパティデータバンクとの強力なシナジーによる、安定的で成長性の高い事業基盤

弱み (Weaknesses)
・少数精鋭の組織であるため、同時に請け負えるプロジェクトの数に物理的な上限がある
・事業が親会社であるプロパティデータバンク社に大きく依存する可能性
・会社の成長が、採用・育成できる優秀な人材の数に直結する、属人性の高いビジネス構造

機会 (Opportunities)
・国内のDX市場の継続的な拡大と、それに伴う高度IT人材の外部委託ニーズの増加
・親会社の事業領域である不動産テック(PropTech)市場の大きな成長性
・プロジェクトで得た知見を活かした、自社SaaSプロダクトの開発・提供の可能性
M&Aなどを通じた、対応可能な技術領域や専門分野の拡大

脅威 (Threats)
・ITエンジニアやプロジェクトマネージャーの獲得競争の激化と人件費の高騰
・海外の安価なオフショア開発企業との価格競争
・大規模な景気後退による、企業のIT投資意欲の減退
・急速な技術革新のスピードに常に追随し、スキルを陳腐化させないための継続的な学習コスト

 

【今後の戦略として想像すること】
プロパティデータバンクグループの一員となった今、リーボの戦略はより明確かつ強力なものとなります。

✔短期的戦略
まずは、プロパティデータバンク社との連携をさらに深化させ、同社のDX推進と新規サービス開発の中核を担う開発部隊としての地位を確立することが最優先課題です。親会社の安定したプロジェクトに携わりながら、自社の「人材のクラウドサービス」モデルをさらに洗練させ、プロジェクト運営の効率化と品質向上を追求していくでしょう。これにより、グループ全体の競争力を高めると同時に、リーボ自身の収益基盤をより強固なものにしていきます。

✔中長期的戦略
中長期的には、不動産テック領域で培った専門性を武器に、その分野におけるNo.1の技術パートナーとなることを目指すでしょう。不動産管理、仲介、建設、金融など、多岐にわたる不動産関連の課題に対し、最新のテクノロジーを駆使したソリューションを開発・提供していくことが期待されます。また、数々のプロジェクトで得た業界知識やノウハウを形式知化し、それを基にした独自のSaaSプロダクトを開発・展開することも視野に入ってくるでしょう。これは、受託開発という労働集約的なモデルから、よりスケーラブルなビジネスへと進化する道筋となります。

 

【まとめ】
リーボ株式会社は、第15期決算で約28百万円の純利益を計上し、自己資本比率73.8%という卓越した財務基盤を誇ります。同社は、単なるソフトウェア開発会社ではありません。それは、企業のDX推進という現代的な課題に対し、「人材のクラウドサービス」という革新的な答えを提示する戦略的技術パートナーです。そして2024年、不動産テックの雄であるプロパティデータバンクグループに加わったことで、そのポテンシャルは大きく開花しようとしています。盤石な財務基盤と、安定的で成長著しい事業領域。この二つを手に入れたリーボが、これから不動産テック業界に、そして日本のDX市場にどのような「革命(REVOLUTION)」を起こしていくのか、その活躍から目が離せません。

 

【企業情報】
企業名: リーボ株式会社
所在地: 東京都港区浜松町1-29-6 浜松町セントラルビル3階
代表者: 代表取締役 芦原 啓太
設立: 2010年11月25日
資本金: 3,000千円
事業内容: Webアプリケーション・モバイルアプリの受託開発、プロジェクトマネジメント・プロダクトマネジメント支援、ソフトウェア開発プロジェクトにおける要件定義・仕様作成・設計支援
株主: プロパティデータバンク株式会社

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