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#2158 決算分析 : 株式会社トヨタレンタリース札幌 第59期決算 当期純利益 1,729百万円

広大な大地と美しい四季が魅力の北海道。その尽きない魅力を満喫するための移動手段として、レンタカーは国内外の観光客にとって欠かせない存在です。特に、観光需要が力強く回復し、多くのインバウンド客が訪れる今、快適で信頼性の高いモビリティサービスの重要性はますます高まっています。また、ビジネスシーンにおいても、車両を「所有」から「利用」へとシフトする流れは加速しており、カーリースは多くの企業の経営効率化に貢献しています。

今回は、北海道のモビリティニーズを最前線で支え、トヨタブランドを掲げるリーディングカンパニー、株式会社トヨタレンタリース札幌の決算を読み解き、その圧倒的な事業規模と高い収益性、そして観光・ビジネスの両面から地域経済を牽引する事業戦略に迫ります。

トヨタレンタリース札幌決算

【決算ハイライト(第59期)】
資産合計: 17,778百万円 (約177.8億円)
負債合計: 6,262百万円 (約62.6億円)
純資産合計: 11,516百万円 (約115.2億円)
当期純利益: 1,729百万円 (約17.3億円)

自己資本比率: 約64.8%
利益剰余金: 11,501百万円 (約115.0億円)

まず注目すべきは、その圧倒的な事業規模と収益性の高さです。総資産は約177.8億円、年間売上は152億円(参考値として2024年度)に達し、当期純利益は約17.3億円を計上しています。自己資本比率も64.8%と非常に高く、強固な財務基盤を確立していることが分かります。これは、多数の車両を保有・管理する資産集約型のビジネスモデルでありながら、極めて効率的で安定した経営が行われている証左と言えます。

企業概要
社名: 株式会社トヨタレンタリース札幌
株主: 札幌トヨタグループ
事業内容: 北海道内におけるトヨタブランドのレンタカー事業、および法人・個人向けのカーリース事業

www.toyotarentacar.net

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、移動のニーズに応える「レンタカー」と、車両活用の最適解を提案する「カーリース」の二大事業を柱としています。

✔レンタカー事業
同社の顔とも言える、主に個人顧客や観光客を対象とした事業です。新千歳空港や札幌駅前といった北海道の玄関口に店舗を構え、国内外からの旅行者の「足」として重要な役割を担っています。ウェブサイトの情報によれば、レンタル車両だけで5,500台という圧倒的な規模を誇り、コンパクトカーから大人数で利用できるミニバン、冬道に強いSUVまで、多様なニーズに応える豊富なラインナップを揃えています。観光需要が生命線となるこの事業は、同社の収益を牽引する大きな柱です。

✔カーリース事業
法人顧客を主軸とした、安定したストック型の収益基盤です。企業が営業車などを「所有」する代わりに、月々定額のリース料で「利用」するサービスを提供します。車両の購入費用はもちろん、税金、保険、点検・メンテナンスといった煩雑な管理業務をすべてアウトソースできるため、顧客企業はコスト削減や業務効率化を実現できます。13,300台というリース車両保有台数が、この事業の規模の大きさと、法人顧客からの厚い信頼を物語っています。

✔札幌トヨタグループとしてのシナジー
同社が札幌トヨタグループの一員であることは、事業運営上の大きな強みです。新車の大量調達によるコスト競争力、グループ内の整備工場との連携による高品質なメンテナンス、そしてリースアップ・レンタルアップ後の車両を中古車として効率的に売却するバリューチェーン。これらグループ内での緊密な連携が、高い収益性とサービスの質を支えています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
観光需要の本格的な回復、特にインバウンド客の増加は、レンタカー事業にとって強力な追い風です。公共交通機関だけではアクセスしにくい魅力的な観光地が点在する北海道において、レンタカーの需要は非常に高く、今後も成長が期待されます。法人向け市場では、働き方改革コンプライアンス意識の高まりを背景に、車両管理を専門家に任せたいというアウトソーシングの需要が底堅く推移しています。

✔内部環境
このビジネスの核心は、総資産の大部分を占める「車両」という資産をいかに効率的に運用し、収益を最大化するかという点にあります。貸借対照表を見ると、総資産の約95%(約169億円)を固定資産が占めており、そのほとんどがレンタル・リース用車両です。これらの車両の稼働率を最大化し、メンテナンスコストを適正に管理し、中古車としての価値が最も高いタイミングで売却するというサイクルの精度が、経営の根幹を成します。約17.3億円という高い純利益は、この車両のライフサイクルマネジメントが極めて高いレベルで機能していることを示しています。

✔安全性分析
自己資本比率64.8%は、多額の車両資産を抱えるビジネスモデルとしては非常に高い水準です。これは、長年の事業活動によって得た利益が、約115億円もの利益剰余金として着実に内部留保されている結果です。これにより、大規模な車両の入れ替えや新たな店舗展開といった設備投資にも柔軟に対応できる強固な体力が備わっています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
トヨタという日本最強の自動車ブランドが持つ、絶大な信頼性と商品力
新千歳空港や札幌駅前など、集客に有利な一等地に広がる店舗ネットワーク
・レンタル・リース合わせて約18,800台という圧倒的な車両保有台数がもたらす規模の経済
自己資本比率64.8%という盤石な財務基盤と、約17.3億円を生み出す高い収益力
・札幌トヨタグループとしての車両調達・メンテナンス・売却における強力なシナジー

弱み (Weaknesses)
・事業が北海道内に限定されており、地域の観光動向や経済状況、自然災害などに業績が大きく左右される
・資産が車両に集中しているため、市場の急激な変化(特定車種の人気急落など)への対応が容易ではない側面がある

機会 (Opportunities)
・インバウンド観光客のさらなる増加と、それに伴うレンタカー利用期間の長期化や高価格帯車種の需要拡大
・企業の車両管理アウトソーシング需要の継続的な高まりと、フリートマネジメントへの事業領域拡大
・EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)といった次世代自動車の導入による、環境意識の高い新たな顧客層の開拓

脅威 (Threats)
・同業他社や異業種からの参入による、レンタカー・リース市場での価格競争の激化
カーシェアリングサービスの普及による、都市部での短期・短距離利用客の流出
・ガソリン価格の継続的な高騰による、利用者のコスト意識の高まりと移動需要の減退
・大規模な自然災害(地震、台風、大雪など)による観光需要の突発的な落ち込みリスク

 

【今後の戦略として想像すること】
同社は、既存事業の強みをさらに伸ばしつつ、新しいモビリティサービスの潮流に適応していく戦略を描いていると考えられます。

✔短期的戦略
インバウンド需要の最大化に向け、多言語対応のウェブサイトや予約システムのさらなる高度化、外国語対応可能な店舗スタッフの育成を推進するでしょう。また、予約から貸渡、返却までのプロセスをデジタル化(DX)することで、顧客利便性の向上と店舗業務の効率化を両立させ、収益性をさらに高めていくことが考えられます。

✔中長期的戦略
トヨタが全国で展開するカーシェアサービス「TOYOTA SHARE」のステーションを北海道内で戦略的に拡大し、数時間単位の利用ニーズにも応えることで、レンタカー事業を補完し、顧客の囲い込みを図るでしょう。また、EVのレンタル・リースを本格化させ、北海道内の充電インフラ情報と組み合わせた新しい旅行プランを提案するなど、環境付加価値の高いサービスを創出していく可能性があります。法人向けには、単なる車両の提供に留まらず、通信型ドライブレコーダーなどを活用して運行データを分析し、燃費改善や事故削減を提案するフリートマネジメントサービスへと事業を進化させていくことが期待されます。

 

【まとめ】
株式会社トヨタレンタリース札幌は、単に車を貸し出す企業ではありません。それは、北海道という広大なフィールドを舞台に、人々の移動の自由を支え、観光の感動を演出し、企業の経営を効率化する、地域経済に不可欠なモビリティプラットフォーマーです。トヨタという絶対的なブランド力と約177.8億円という巨大な資産を背景に、年間17億円を超える純利益を生み出す高い経営手腕は特筆に値します。今後、インバウンドという強力な追い風を受け、また、カーシェアやEVといった新しいモビリティの潮流を的確に捉えることで、北の大地における「移動」の未来を創造し続けていくことが期待されます。

 

【企業情報】
企業名: 株式会社トヨタレンタリース札幌
所在地: 札幌市中央区北5条東2丁目1番地
代表者: 代表取締役 相茶 省三
資本金: 1,500万円
事業内容: レンタカー事業、カーリース事業、中古車販売
株主: 札幌トヨタグループ

www.toyotarentacar.net

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