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#2057 決算分析 : 全酪フーズ株式会社 第68期決算 当期純利益 56百万円

私たちがスーパーで手にするバターやチーズ、お土産屋さんで見かける銘菓。その原料はどこから来て、どのような経路で製品となり、私たちの元へ届けられるのでしょうか。その複雑なサプライチェーンの裏側には、生産者とメーカー、そしてメーカーと販売店を繋ぐ、専門の商社機能が存在します。全酪フーズ株式会社は、日本の酪農家を束ねる全国酪農業協同組合連合会全酪連)を母体とする、まさに乳製品・食品業界の「ハブ」とも言える企業です。今回は、日本の食を川上から川下まで支える、この重要な役割を担う企業の決算を読み解きます。

今回は、日本の酪農業界を代表する全酪連グループの商社として、乳製品・食品の安定供給を担う全酪フーズ株式会社の決算を読み解き、そのビジネスモデルや戦略をみていきます。

全酪フーズ決算

【決算ハイライト(68期)】
資産合計: 1,618百万円 (約16.2億円)
負債合計: 1,055百万円 (約10.5億円)
純資産合計: 563百万円 (約5.6億円)

当期純利益: 56百万円 (約0.6億円)

自己資本比率: 約34.8%
利益剰余金: 443百万円 (約4.4億円)

まず注目すべきは、自己資本比率が約34.8%と健全な水準を維持している点です。これは、企業の財務基盤が安定していることを示しています。ウェブサイト記載の売上高(平成29年度実績)を参考にすると、約47億円という事業規模に対し、56百万円の当期純利益を確保しており、薄利多売となりがちな食品商社業界において、堅実な経営を行っていることが窺えます。4億円を超える利益剰余金は、長年にわたる安定経営の歴史を物語っています。

企業概要
社名: 全酪フーズ株式会社
設立: 1958年4月(前身企業)
株主: 全国酪農業協同組合連合会、中央製乳株式会社
事業内容: 業務用乳製品、食品原材料、包装資材の販売、および家庭用食品・ギフト品の販売

www.zefuco.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、日本の食品産業を支える2つの商社機能で構成されています。その根幹には、母体である全酪連のネットワークがあります。

✔原料・包材部門(メーカーを支える調達代理人
乳業メーカーや製菓・製パンメーカーなどに対して、事業に必要なあらゆる商材を供給するBtoB事業です。例えば、アイスクリームメーカーは同社から、主原料の脱脂粉乳や生クリーム、副原料の砂糖やチョコレート、さらにはカップやフィルムといった包装資材まで、ワンストップで調達することが可能です。これにより、メーカーは煩雑な購買業務を効率化できます。全酪連グループとしてのスケールメリットを活かし、国内外から多様な商材を調達できるのが最大の強みです。

✔食品部門(メーカーと食卓を繋ぐ販売代理人
こちらは、完成した製品を様々な販売チャネルへ供給する事業です。全国の銘菓や特産品ギフトを各地の生協(コープ)に提案したり、観光牧場の売店に乳製品を卸したり、さらにはJR東海グループの駅売店向けにおつまみやお土産菓子を供給するなど、多岐にわたる販路を持っています。地方の優れた食品メーカーにとって、同社は自社では開拓が難しい全国規模の販路への扉を開く、重要なパートナーとなります。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
堅実な財務の背景にある経営戦略を分析します。

✔外部環境
食品業界は、原材料価格やエネルギーコスト、物流費の高騰という大きな課題に直面しています。また、国内の人口減少は、長期的に食品市場全体の縮小圧力となります。一方で、消費者の食に対するニーズは多様化・高度化しており、特徴ある地方産品や、健康志向の製品への関心は高まっています。

✔内部環境
同社の最大の強みは、全国酪農業協同組合連合会全酪連)のグループ企業であることです。これにより、国産乳製品という競争力の高い原料を安定的に確保できるほか、全国の農協系乳業メーカーとの強固なネットワークを築いています。ビジネスモデルは、在庫(商品)と売掛金が資産の大部分を占める典型的な商社であり、これらの運転資本をいかに効率的に回転させるかが収益性の鍵となります。

✔安全性分析
自己資本比率34.8%は、商社として安定した財務基盤を有していることを示します。短期的な支払い能力を示す流動比率流動資産÷流動負債)も約141%と、安全の目安である100%を大きく超えており、資金繰りは健全です。長年の黒字経営によって積み上げられた約4.4億円の利益剰余金は、市況の変動に対する十分な備えとなり、安定した事業運営を支えています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
全酪連グループとしての、原料調達力と業界内での高い信用力
・全国のメーカーと販売チャネルを網羅する広範なネットワーク
・原料から包材までを扱う、食品メーカー向けのワンストップ調達機能
・長年の経営で培った安定的な財務基盤

弱み (Weaknesses)
・商社であるため、利益率が比較的低い傾向にある
・国内の乳業・食品市場の動向に業績が大きく左右される

機会 (Opportunities)
・消費者の地方産品・特産品への関心の高まり
・健康志向や環境配慮型製品(サステナブルな包材など)へのニーズ拡大
・ネットワークを活用した、異業種のメーカー同士のマッチングによる新商品開発

脅威 (Threats)
・原材料費、物流費、エネルギーコストの継続的な上昇
・国内人口減少による、中長期的な市場規模の縮小
・大手商社や専門商社との競争激化

 

【今後の戦略として想像すること】
この事業環境を踏まえ、同社が持続的に成長するための戦略を考察します。

✔短期的戦略
コスト上昇に悩む取引先メーカーに対し、代替原料やより効率的な包装資材の提案などを通じて、課題解決型の営業を強化していくことが考えられます。また、食品部門においては、まだ光の当たっていない地方の優れた産品を発掘し、自社のネットワークを駆使して新たなヒット商品へと育て上げる「目利き」としての役割をさらに強化していくでしょう。

✔中長期的戦略
単なる商品の右から左への仲介に留まらず、より付加価値の高い機能を担っていくことが求められます。例えば、全酪連グループの知見を活かし、複数のメーカーと共同で新たなプライベートブランド商品を企画・開発し、自社が持つ多様なチャネルで独占的に販売すること。また、業界のハブとしての立場を活かし、サプライチェーン全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するような情報サービスの提供も、将来的な成長の柱となり得ます。

 

【まとめ】
全酪フーズ株式会社は、単なる食品商社ではありません。それは、日本の酪農家から食品メーカー、そして販売店まで、食に関わる無数のプレイヤーを繋ぎ合わせ、サプライチェーン全体を円滑に動かす「潤滑油」のような存在です。決算書に示された安定した財務内容は、同社が日本の食料供給において、いかに不可欠で信頼される役割を果たしてきたかを物語っています。これからも、食を取り巻く環境が変化する中で、その巧みな調整機能とネットワークを武器に、私たちの食卓を支え続けてくれることが期待されます。

 

【企業情報】
企業名: 全酪フーズ株式会社
所在地: 東京都渋谷区代々木一丁目37番2号 酪農会館
代表者: 千田 稔
設立: 1958年4月(前身企業)
資本金: 8,500万円
事業内容: 業務用乳製品(練乳、粉乳、チーズ、バター等)、糖類、油脂、包装資材、食品添加物等の販売。および家庭用乳製品、冷凍食品、全国の銘菓・特産品ギフト等の販売。
株主: 全国酪農業協同組合連合会、中央製乳株式会社

www.zefuco.co.jp

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