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#1913 決算分析 : 株式会社メディ・ウェブ 第19期決算 当期純利益 80百万円

クリニックでの長い待ち時間、予約のためにかけたのに繋がらない電話、そして受付スタッフの煩雑な事務作業…。これらは、多くのクリニックが日常的に抱える課題であり、患者満足度の低下とスタッフの疲弊を招く深刻な経営問題です。この根深い課題に対し、「予約」を起点としたデジタル・トランスフォーメーション(DX)で、医療現場の革新に挑む企業があります。

今回は、国内最大級の予約プラットフォーム「EPARK」グループの一員として、クリニックの開業から経営安定化までをワンストップで支援する、株式会社メディ・ウェブの決算を分析します。予約システムの提供に留まらず、集患、業務効率化、そして経営支援までを手掛ける同社の成長戦略と、医療DXの未来に迫ります。

メディ・ウェブ決算

決算ハイライト(第19期)
資産合計: 574百万円 (約5.7億円)
負債合計: 443百万円 (約4.4億円)
純資産合計: 131百万円 (約1.3億円)

当期純利益: 79百万円 (約0.8億円)

自己資本比率: 約22.8%
利益剰余金: 18百万円 (約0.2億円)

 

まず注目すべきは、その非常に高い収益性です。総資産約5.7億円に対し、当期純利益は約0.8億円を計上しており、総資産利益率ROA)は13%を超えています。これは、同社のビジネスモデルが効率的に利益を生み出していることの証左です。利益剰余金(内部留保)はまだ19百万円と多くありませんが、当期だけで純資産(1.3億円)の6割以上に相当する利益を稼ぎ出しており、企業がまさに急成長フェーズにあることがうかがえます。自己資本比率は約22.8%とやや低めに見えますが、これはM&Aなどを積極的に活用して事業規模を拡大している成長企業の特徴であり、IT・ソフトウェア企業としては健全な範囲内と言えるでしょう。

 

企業概要
社名: 株式会社メディ・ウェブ
設立: 2007年3月28日
主要株主: 株式会社EPARK
本社: 東京都港区芝浦四丁目16番25号
事業内容: 医療機関向け予約管理システムの開発・販売、クリニック検索メディア運営、HP制作、経営支援サービスなど

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【事業構造の徹底解剖】
メディ・ウェブの事業は、「クリニック経営の道しるべ」というコンセプトの下、クリニックが抱える課題に対し、複数のソリューションをワンストップで提供するプラットフォーム事業です。

✔STEP1(業務効率化の入口):診療予約システム
事業の中核をなすのが、診療予約システム「3Bees(スリービーズ)」と「iCall(アイコール)」です。臨床医が開発に携わった「3Bees」は、LINEからの手軽な予約・順番待ちを可能にするなど、現代の患者ニーズにマッチした機能が特徴です。一方、「iCall」は、ネット予約が苦手な高齢者なども含め、電話による自動音声予約にも対応できる全世代型のシステムです。これら二つの強力な製品ポートフォリオで、患者の利便性を向上させると同時に、クリニック受付スタッフの電話応対や予約管理の負担を劇的に軽減します。これが、クリニックDXの最初の入口となります。

✔STEP2(成長支援):集患・増患ソリューション
同社の最大の武器は、親会社であるEPARKグループが運営する、年間1.1億ページビューを誇る国内最大級のクリニック検索メディア「EPARKクリニック・病院」との連携です。この巨大プラットフォームにクリニックの情報を掲載することで、圧倒的な集客力を提供します。さらに、制作実績15,000件を誇るクリニック専門のホームページ制作サービスや、今や集患に不可欠となったGoogleマップ・口コミ対策サービスを組み合わせることで、新規患者の獲得を強力にサポートします。

✔STEP3(DXの深化):さらなる業務効率化ツール
予約システムの導入に留まらず、より深く院内業務のDXを推進するソリューションも提供しています。診察中の医師と患者の会話をAIが自動で文字起こしし、カルテ文書を生成する「AIカルテ入力」支援サービスや、よくある質問に自動で応答する電話自動応対(IVR)システムなど、医療従事者が事務作業から解放され、本来の医療業務や患者との対話に集中できる環境を構築します。

 

【財務状況等から見る経営戦略】

✔外部環境
国が強力に推進する医療DXは、同社にとって最大の追い風です。新型コロナウイルスの流行を経て、患者側もオンラインで情報を収集し、予約することへの抵抗感が大幅に低下しました。また、クリニック業界の慢性的な人手不足は、業務効率化ツールの導入を不可避なものにしています。一方で、診療予約システム市場は多くのプレイヤーがひしめく競争の激しい分野でもあります。

✔内部環境
メディ・ウェブの経営戦略の根幹には、親会社であるEPARKグループとの強固なシナジーがあります。EPARKの圧倒的な集客力とブランド力は、他の独立系医療ITベンダーに対する決定的な競争優位性となっています。「EPARKに掲載できるなら」という理由で、同社の予約システムを導入するクリニックも少なくないでしょう。また、同社はM&Aや事業譲受を積極的に活用し、成長を加速させています。2022年には電話予約システムに強みを持つアイコールシステムを合併、2024年にはエンパワーヘルスケアから事業を承継するなど、サービスラインナップと顧客基盤を急速に拡大しています。

✔安全性分析
自己資本比率22.8%という数値は、一見すると低く感じられるかもしれません。しかし、これは大規模な工場設備などを持たないIT企業の典型的なバランスシートであり、むしろM&Aなど未来への投資を積極的に行っている成長の証と捉えるべきです。資産の多くが売掛金などの流動資産で構成されており、身軽な経営体質です。何よりも、純資産(1.3億円)を大幅に上回るキャッシュを1年間で生み出す力(当期純利益0.8億円)は、同社の事業が持つ高い収益性とキャッシュ創出能力を物語っています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・親会社EPARKが持つ、国内最大級の集客プラットフォームと絶大なブランド力
・予約から集患、業務効率化、経営支援までを網羅するワンストップのソリューション提供能力
M&Aを駆使してサービスと顧客基盤を急速に拡大させる、積極的で機動的な事業戦略
・高い収益性とキャッシュ創出能力

弱み (Weaknesses)
・親会社であるEPARKグループの経営戦略やブランドイメージの変動に、業績が左右される可能性
・競争の激しい市場環境における、継続的な価格競争圧力

機会 (Opportunities)
・国策として強力に推進される医療DXの流れと、それに伴う補助金などの活用
・クリニック業界の慢性的な人手不足の深刻化による、業務効率化・自動化ソリューションへの根強い需要
・患者側のデジタルリテラシー向上と、オンライン予約・情報収集の一般化

脅威 (Threats)
・診療予約システム市場における多数の競合プレイヤーの存在と、サービスの機能的な同質化
電子カルテメーカーやレセコンメーカーといった、隣接領域の巨大プレイヤーによる競合サービスの展開
・個人情報保護に関する法規制の強化と、それに伴うシステム開発・運用コストの増大

 

【今後の戦略として想像すること】
以上の分析を踏まえ、同社が今後どのような戦略を描いていくのかを考察します。

✔短期的戦略
まずは、M&Aによって獲得した「iCall」などの顧客基盤に対し、EPARKメディアへの掲載やAIカルテ入力といった他のサービスを積極的に提案・販売する「クロスセル戦略」を強化し、顧客一院あたりの取引額(顧客単価)を向上させていくでしょう。同時に、EPARKの集客力を武器に、新規開業クリニックなどへの予約システムの導入シェアをさらに拡大していくことが最優先課題となります。

✔中長期的戦略
中長期的には、クリニック経営に必要なあらゆるIT機能を提供する「統合型プラットフォーム」への進化を目指すと考えられます。現状の予約システムをハブ(中心)として、電子カルテやレセプトコンピューター、Web問診システムなど、他の医療ITシステムとのデータ連携をさらに強化・深化させていくでしょう。そして、プラットフォームに蓄積された膨大な予約データや患者データを(個人情報に配慮した上で)解析し、クリニックに対してより高度な経営分析や、的確な集患コンサルティングを提供する「データドリブンな事業」へと進化していくことが、持続的な成長の鍵を握ります。

 

まとめ
株式会社メディ・ウェブは、親会社であるEPARKの強力な集客力を最大の武器に、「予約」を入口としてクリニック経営が抱えるあらゆる課題を解決する、まさに急成長中の医療IT企業です。決算数値に表れた高い収益性は、そのユニークなビジネスモデルの優位性を明確に証明しています。

M&Aを効果的に活用してサービスラインナップを拡充し、単なるシステム提供者に留まらず、クリニック経営に不可欠な「統合型プラットフォーム」への進化を着実に進めています。人手不足とDX化の波という、医療業界が直面する大きな課題を乗り越えるためのパートナーとして、その存在感は今後ますます高まっていくことでしょう。

 

企業情報
企業名: 株式会社メディ・ウェブ
本社: 東京都港区芝浦四丁目16番25号 安全ビル
設立: 2007年3月28日
資本金: 80,000千円
代表者: 代表取締役 滝澤 直紀
事業内容: クリニック向け予約管理システム、検索メディア、ホームページ制作、経営支援サービスの提供
主要株主: 株式会社EPARK

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