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#1875 決算分析 : 北海道エネルギー株式会社 第19期決算 当期純利益 766百万円

ガソリンスタンドは、私たちのカーライフに欠かせないインフラです。しかし、その役割は単なる燃料補給にとどまらず、洗車やタイヤ交換、車検、そして冬の暮らしを支える灯油の販売まで、地域住民の生活に密着した多様なサービスへと進化しています。今回は、北海道全域に240箇所以上のサービスステーション(SS)ネットワークを展開し、道民のエネルギーライフラインを支える「北海道エネルギー株式会社」の決算公告を深く読み解きます。その決算書が示すのは、約7.7億円の純利益と、自己資本比率60%超という盤石の経営基盤。エネルギー業界が大きな変革期を迎える中、北の大地で圧倒的な存在感を放つ企業の強さの秘密に迫ります。

今回は、「北海道の全ての人々のために」を理念に、エネルギーのトータルサービスを提供する北海道エネルギー株式会社の決算を読み解き、その事業内容と経営戦略をみていきます。

北海道エネルギー決算

決算ハイライト(第19期)
資産合計: 22,204百万円 (約222.0億円)
純資産合計: 14,025百万円 (約140.3億円)
負債合計: 8,135百万円 (約81.3億円)

当期純利益: 766百万円 (約7.7億円)

自己資本比率: 約63.2%
利益剰余金: 13,545百万円 (約135.5億円)

 

まず注目すべきは、自己資本比率が約63.2%という極めて高い財務健全性です。総資産の6割以上を返済不要の自己資本で賄っており、経営基盤は非常に安定的です。利益剰余金も約135.5億円と潤沢に積み上がっており、長年にわたり着実に利益を蓄積してきた優良企業であることが分かります。当期においても約7.7億円という高い水準の純利益を確保しており、燃料価格の変動が激しい中でも、揺るぎない収益力を誇っています。

 

企業概要
社名: 北海道エネルギー株式会社
設立: 2008年1月1日
株主: カツキホールディングス株式会社 (51%)、ENEOS株式会社 (49%)
事業内容: 北海道全域におけるサービスステーション(SS)の運営。ガソリン、軽油、灯油等の石油製品の販売、自動車関連商品(タイヤ、オイル等)の販売、車検、洗車、カーメンテナンス、EV充電ステーションの運営など、カーライフ全般をサポートする事業を展開。

www.do-ene.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、北海道という広大な大地と、車社会という地域特性に深く根差した「エネルギーのトータルサービス」に集約されます。

✔広域SSネットワーク事業(道民のライフライン
同社の事業の根幹は、道内に直営・販売店合わせて240箇所以上を展開する、圧倒的なサービスステーション(SS)ネットワークです。これは単なる給油拠点の数ではなく、道民がどこにいても安心して車を利用できるという、社会インフラとしての価値を提供しています。ガソリンや軽油といった自動車燃料はもちろん、冬の厳しい寒さを乗り越えるために不可欠な家庭用灯油の宅配・販売も手掛けており、まさに北海道の暮らしの「生命線」を担っています。

✔カーライフサポート事業(「燃料」から「車」へ)
同社は、単なる「給油所」から、車のあらゆるニーズに応える「カーライフのトータルサポーター」へと進化を遂げています。タイヤやオイル交換といった日常的なメンテナンスから、専門知識が必要な車検整備までをワンストップで提供。さらに、自動車保険の取り扱いやオートリース、中古車販売まで事業領域を拡大しています。これにより、給油で訪れた顧客に対し、様々なサービスを提案(クロスセル)することが可能となり、顧客一人当たりの生涯価値(LTV)を高めています。

✔次世代エネルギーへの布石
石油エネルギーを主力としながらも、未来を見据えた取り組みも進めています。道内16箇所にEV(電気自動車)充電ステーションを設置するなど、来るべき新エネルギー時代への対応にも着手。企業方針として「エネルギーのベスト・ミックス」を掲げ、将来的にどのようなエネルギーが主流になっても、道民に最適な形で供給し続けるという強い意志を示しています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
エネルギー小売業界は、原油価格の変動、円安、そして世界的な脱炭素化の潮流という、大きな変化に常に晒されています。また、燃費の良いハイブリッド車やEVの普及は、ガソリン販売量の長期的な減少圧力となります。しかし、広大な北海道においては、車は生活必需品であり、石油エネルギーへの依存度は当面高い水準で維持されると考えられます。この地域特性が、同社の安定した事業基盤となっています。

✔内部環境
最大の強みは、2008年に北海道の有力地場販売店であった勝木石油と太平洋石油販売が統合して誕生したことによる、道内全域をカバーする圧倒的な販売網です。また、ENEOSとの強固なパートナーシップにより、ブランド力と安定した製品供給能力を確保しています。決算書が示す63.2%という高い自己資本比率は、この安定した事業基盤を背景に、過度な借入に頼らず、利益の内部留保によって着実に成長してきた証です。この財務的な体力が、価格競争が激しい業界において、安定した経営を維持する力の源泉となっています。

✔安全性分析
財務安全性は「極めて高い」と断言できます。自己資本比率が63.2%と非常に高く、有利子負債が少ない健全な財務体質です。約135.5億円という莫大な利益剰余金は、不測の事態(例:原油価格の歴史的な高騰、大規模災害)に対する強力な緩衝材となると同時に、未来の成長に向けた戦略的な投資(例:次世代エネルギーインフラへの投資、M&A)を可能にする原動力でもあります。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・北海道全域をカバーする、圧倒的なサービスステーションネットワークと販売網
自己資本比率60%超、利益剰余金135億円超という、盤石の財務基盤
ENEOSとの強固なパートナーシップによる、高いブランド力と安定供給能力
・燃料販売から車検、保険までを扱う、カーライフのトータルサポート力

弱み (Weaknesses)
・事業が石油製品販売に大きく依存しており、原油価格や為替レートの変動リスクを受けやすい
・事業エリアが北海道に集中しているため、道内の景気や人口動態に業績が左右される

機会 (Opportunities)
・EVや次世代燃料車への移行期における、多様なエネルギー供給拠点としての役割
カーシェアリングやレンタカー事業など、新たなモビリティサービスへの展開
・地域の社会インフラとして、災害時におけるエネルギー供給拠点(住民拠点SS)としての役割強化
M&Aによる、道内の小規模な販売事業者の統合と、さらなるシェア拡大

脅威 (Threats)
・EVやFCV(燃料電池車)の本格的な普及による、ガソリン需要の長期的な減少
・人口減少と若者の車離れによる、国内の自動車保有台数の減少
・異業種(例:電力会社、大手商社)による、EV充電インフラ事業への参入と競争激化
・人手不足の深刻化と、それに伴う人件費の高騰

 

【今後の戦略として想像すること】
この盤石な経営基盤と事業環境を背景に、同社は「守り」と「攻め」の両面で事業を進化させていくことが予想されます。

✔短期的戦略
既存のSSネットワークを最大限に活用し、収益性の高いカーメンテナンスや車検、保険といった「油外収益」の比率をさらに高めていくことが重要です。顧客との接点の多さを活かし、アプリなどを通じたCRM(顧客関係管理)を強化することで、顧客の囲い込みと客単価向上を図ります。

✔中長期的戦略
「新時代総合エネルギー企業」への変革を本格化させるでしょう。EV充電設備の計画的な増設はもちろんのこと、将来的には水素ステーションの運営など、次世代エネルギーインフラの担い手としての役割を模索します。また、道内での圧倒的な顧客基盤とブランド力を活かし、カーライフに留まらない、北海道の暮らしを支える新たなサービス(例:家庭向けエネルギーサービス、地域産品の物流・販売など)へと事業を多角化していく可能性も秘めています。

 

まとめ
北海道エネルギー株式会社の第19期決算は、約7.7億円の純利益と自己資本比率63.2%という、北の大地を代表する優良企業の圧倒的な安定性を示すものでした。その強さの秘密は、道内を網羅する広大なSSネットワークと、それを支える盤石な財務基盤にあります。脱炭素という大きな時代の転換点に立ちながらも、同社はまず、道民の現在の暮らしに不可欠なエネルギーを安定供給するという使命を全うし、その上で未来のエネルギー社会への布石を着実に打っています。「もっとやさしく、もっと明日へ。」というコーポレートコピーの通り、北海道のエネルギーの「今」と「明日」を支える同社の役割は、ますます重要になっていくことでしょう。

 

企業情報
企業名: 北海道エネルギー株式会社
所在地: 札幌市中央区北1条東3丁目3番地 札幌スクエアセンタービル
代表者: 代表取締役社長 木村 信広
設立: 2008年1月1日
資本金: 480,000千円
事業内容: 北海道内におけるサービスステーションの運営を核とした、石油製品販売、自動車関連商品販売、車検・メンテナンス、EV充電サービス等のエネルギー関連事業。
株主: カツキホールディングス株式会社 (51%)、ENEOS株式会社 (49%)

www.do-ene.jp

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