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#1797 決算分析 : げんねんワークサポート株式会社 第7期決算 当期純利益 19百万円

障がいのある人もない人も、誰もが互いを尊重し、活き活きと働ける社会。その理想を、日本のエネルギー事業を支える巨大企業グループの中で、見事に体現している会社が青森にあります。げんねんワークサポート株式会社は、日本原燃株式会社の「特例子会社」として、障がい者雇用を促進するために設立された、社会的使命を帯びた企業です。その決算書には、設立7年目にして、自己資本比率61%超、そして1,800万円を超える純利益という、驚くほど健全で、かつ収益性の高い経営内容が記されていました。福祉とビジネスは両立するのか。その問いに対する、一つの完璧な答えがここにあります。

げんねんワークサポート決算

決算ハイライト(第7期)
資産合計: 95百万円 (約1.0億円)
負債合計: 36百万円 (約0.4億円)
純資産合計: 58百万円 (約0.6億円)

当期純利益: 19百万円 (約0.2億円)

自己資本比率: 約61.6%
利益剰余金: 48百万円 (約0.5億円)

 

第7期(令和7年3月31日時点)の決算は、同社が社会的使命と、持続可能な事業運営を高いレベルで両立させていることを示しています。自己資本比率は61.6%と極めて高く、財務基盤は非常に盤石です。設立から7年で4,800万円を超える利益剰余金を積み上げており、当期も約1,900万円の純利益を確保。これは、同社のビジネスモデルが、単なる親会社からの支援に頼るだけでなく、自立した収益力を持つ、持続可能なモデルであることを力強く証明しています。

 

企業概要
社名: げんねんワークサポート株式会社
設立: 2019年2月1日
本社所在地: 青森県青森市
株主: 日本原燃株式会社(100%)
事業内容: 親会社である日本原燃からの業務受託(文書電子化、清掃、PCデータ消去、印刷、事務補助など)。障がい者の雇用促進を目的とした「特例子会社」。

www.gensup.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
げんねんワークサポートの成功の鍵は、「特例子会社」という制度を最大限に活かした、親会社との完璧なWin-Winの関係にあります。

✔ビジネスの核心:「特例子会社」としての役割
「特例子会社」とは、企業が障がい者の雇用を促進する目的で設立する、特別な配慮をした子会社のことです。親会社は、この特例子会社の雇用数を自社の雇用分として合算できるため、法律で定められた障がい者雇用率を達成しやすくなります。げんねんワークサポートは、まさにこの制度を活用し、日本原燃グループ全体の障がい者雇用の核として機能しています。

✔事業内容は「親会社のニーズ」そのもの
同社が手掛ける業務は、文書の電子化、オフィスの清掃、名刺の印刷、使用済みPCのデータ消去など、どれも日本原燃のような巨大組織が日々必要とする、普遍的で安定したバックオフィス業務です。これにより、同社は営業活動をすることなく、親会社から安定的かつ継続的な仕事を受注できます。一方、親会社は、これらの業務を、信頼できるグループ会社に、高い品質でアウトソーシングできるというメリットを享受します。

✔「人財育成」こそが最大の提供価値
同社の真の価値は、単なる業務請負に留まりません。社員の7割以上が障がいを持つという特性を踏まえ、職場適応援助者(ジョブコーチ)などの専門スタッフによる手厚いサポート体制を構築。一人ひとりの個性や能力に合わせた業務を通じて、社会人としての自立と成長を促しています。社員が「あおもりアビリンピック(障害者技能競技会)」で数々の賞を受賞していることは、その人財育成が成功している何よりの証です。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
企業の社会的責任(CSR)や、DE&I(多様性・公平性・包括性)への関心は、年々高まっています。障がい者雇用に積極的に取り組むことは、今や企業価値を測る重要な指標の一つです。日本原燃グループにとって、げんねんワークサポートの成功は、グループ全体の社会的な評価を高める上で、極めて重要な意味を持ちます。

✔内部環境と、健全経営の理由
1,900万円という高い利益と、自己資本比率61%超という盤石な財務は、このビジネスモデルの優位性から生まれています。
・安定した収益基盤:親会社からの安定した業務委託により、売上が大きく変動するリスクがありません。
・ゼロに近い営業コスト:顧客が親会社であるため、営業やマーケティングにかかる費用が不要です。
・高い従業員エンゲージメント:働きがいのある環境と手厚いサポートにより、社員の定着率が高く、業務品質も向上するという好循環が生まれています。
これは、福祉的な配慮と、効率的な事業運営が、見事に両立できることを示した、理想的なモデルケースと言えるでしょう。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
日本原燃という、極めて安定した親会社の100%子会社であること。
・「特例子会社」としての、明確で社会貢献性の高い事業ミッション。
・親会社からの安定した業務受託による、揺るぎない事業基盤。
自己資本比率61%超が示す、健全で盤石な財務体質と、安定した収益性。

弱み (Weaknesses)
・事業の全てを親会社グループに依存しており、グループの方針変更が経営に直結するリスク。
・事業内容がバックオフィス業務に限定されており、事業の大きな拡大が見込みにくい点。

機会 (Opportunities)
・親会社グループ内での、新たな業務(例:データ入力、ウェブサイト更新補助など)の受託による、事業領域の拡大。
障がい者雇用のノウハウを、地域の他の企業へコンサルティングするなど、新たなサービス展開の可能性。
・企業のDE&Iへの関心の高まりを背景とした、社会的な評価のさらなる向上。

脅威 (Threats)
・親会社である日本原燃の、大規模な組織再編や業務の外部委託方針の見直し。
・支援を必要とする社員が多いため、手厚いサポート体制を維持するためのコスト負担。

 

【今後の戦略として想像すること】
✔短期戦略(業務品質のさらなる向上)
まずは、現在の受託業務において、さらなる品質向上と効率化を追求し、親会社グループからの信頼をより一層高めていくことが中心となります。「ありがとうの気持ちを持ち続ける」という行動基準のもと、社員一人ひとりが成長を実感できる環境を維持していくでしょう。

✔中長期的戦略(青森県No.1のモデル企業へ)
社長挨拶で述べられている通り、同社は「障がい者の多くのみなさまが働きたいと思う『青森県ナンバーワンの企業』」を目指しています。

業務領域の拡大:現在の業務に加え、社員のスキルアップに合わせて、より高度な事務作業や、PCスキルを活かしたデジタル関連業務など、新たな業務を親会社から受託していく。

地域への貢献:自社で培った、障がい者と共に働くためのノウハウやサポート体制を、地域の他の企業や福祉施設と共有し、青森県全体の障がい者雇用の水準を高めるための、リーダー的な役割を担っていく可能性があります。

 

まとめ
げんねんワークサポート株式会社は、「特例子会社」という制度の、最も成功した事例の一つです。社会的使命である「障がい者の雇用の促進と安定」を高いレベルで達成しながら、同時に、1,900万円の利益と自己資本比率61%超という、民間企業としても優れた財務内容を実現しています。これは、親会社である日本原燃の強力なバックアップと、同社の「一人ひとりを大切にする」という真摯な経営姿勢が見事に結実した結果です。福祉はコストではなく、企業の価値を高める投資となり得る。げんねんワークサポートの力強い歩みは、そのことを明確に示しています。

 

企業情報
企業名: げんねんワークサポート株式会社
所在地: 青森県青森市新町二丁目2番11号 東奥日報新町ビル4階
代表者: 代表取締役社長 林 芳昭
設立: 2019年2月1日
資本金: 1,000万円
事業内容: 文書電子化、清掃、パソコンデータ消去、印刷、郵便物集配・配送等の業務受託
株主: 日本原燃株式会社(100%)

www.gensup.co.jp

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