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#1573 決算分析 : 宮城りんかいアスコン株式会社 第9期決算 当期純利益 ▲78百万円


私たちが日々の暮らしで何気なく利用している道路。その黒く滑らかな路面は、「アスファルト合材」によって作られています。特に、災害からの復旧・復興においては、道路網の再整備は人々の生活と経済活動を取り戻すための生命線となります。東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県の沿岸部で、まさにその復興を足元から支えるために立ち上がった企業があります。それが、宮城りんかいアスコン株式会社です。

今回は、多賀城市岩沼市に2つの工場を構え、地域のインフラ整備に不可欠なアスファルト合材を供給する同社の決算を分析します。しかし、官報に示されたのは、資産を負債が上回る「債務超過」という極めて厳しい財務状況。震災からの復興と共に歩んできた「ものづくり企業」が直面する経営課題と、その事業内容に迫ります。

宮城りんかいアスコン決算

決算ハイライト(9期)
資産合計: 443百万円 (約4.4億円)
負債合計: 610百万円 (約6.1億円)
純資産合計: ▲167百万円 (約▲1.7億円)

当期純損失: 78百万円 (約0.8億円)

利益剰余金: ▲177百万円 (約▲1.8億円)

 

今回の決算における最大のポイントは、純資産がマイナス1.7億円となり、深刻な「債務超過」の状態にある点です。これは、会社の総資産(4.4億円)を、返済義務のある総負債(6.1億円)が大きく上回っていることを意味し、財務的には極めて危険な水準です。自己資本比率も約▲38%と大幅なマイナス圏にあり、創業以来の利益の蓄積を示す利益剰余金もマイナス1.8億円と、設立以来、損失が大きく膨らんできたことがうかがえます。当期も78百万円という、資本金(1,000万円)を大きく超える純損失を計上しており、抜本的な経営改善が急務であることが明確に読み取れます。

 

企業概要
社名: 宮城りんかいアスコン株式会社
設立: 2016年12月
本社所在地: 宮城県多賀城市栄2-217-6
事業内容: アスファルト合材の製造販売を主軸に、産業廃棄物処理アスファルト殻・コンクリート殻のリサイクル)、舗装資材販売、土木・舗装工事などを手掛ける。

rinkai-ascon.com

 

【事業構造の徹底解剖】
宮城りんかいアスコン株式会社は、道路舗装の主材料であるアスファルト合材の製造・販売を中核事業としています。その事業は、単なる材料供給にとどまらず、環境への配慮と、現場への技術支援までを網羅する総合的なサービスを特徴としています。

✔地域のインフラを支える「アスファルト合材製造・供給」
同社は、仙台圏をカバーする多賀城工場と、県南地域を担う岩沼工場という、戦略的に配置された2つの製造拠点を有しています。これにより、宮城県の沿岸部を中心に、広範囲へ迅速に製品を供給できる体制を築いています。Webサイトに掲載されている出荷実績を見ても、漁港の臨港道路津波復興拠点整備、被災市街地の土地区画整理事業など、東日本大震災からの復興に不可欠な数多くの公共事業に、その製品が使われてきたことが分かります。

✔持続可能な社会に貢献する「リサイクル事業」
同社のもう一つの重要な柱が、産業廃棄物の中間処理・リサイクル事業です。道路の改修工事などで発生する古いアスファルトの塊(アスファルト殻)やコンクリート殻を受け入れ、自社工場で破砕処理を行います。そして、それらを新たなアスファルト合材の骨材や、道路の下層を形成する路盤材として再利用するのです。これは、建設廃材を新たな建設資材へと生まれ変わらせる、まさに循環型経済を実践する事業であり、環境負荷の低減に大きく貢献しています。

✔現場の「困りごと」に応える「技術支援・施工サービス」
同社は、材料を売るだけでなく、舗装に関するあらゆる「困りごと」に対応する技術支援サービスも提供しています。顧客である建設会社や、発注者である官公庁の技術者からの技術相談に応えたり、現場での品質試験を行ったりと、専門知識を活かして現場をサポートします。さらには、自社で舗装工事そのものも請け負っており、製造から施工まで一貫して対応できる体制は、同社の大きな強みです。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
同社の事業は、国や県、市町村による公共事業の動向に大きく左右されます。東日本大震災以降、旺盛な復興需要が同社の事業を支えてきましたが、大規模な復興工事が一段落し、今後はインフラの維持・補修が中心となる中で、受注競争はより激しくなる可能性があります。また、アスファルト合材の製造には、原料である石油アスファルトの価格や、プラントを稼働させるための燃料・電気代が大きく影響します。近年のエネルギー価格の高騰は、同社の収益を著しく圧迫している要因の一つと考えられます。

✔内部環境
債務超過」という厳しい財務状況は、同社が設立以来、非常に困難な経営環境に置かれてきたことを物語っています。2016年設立という比較的新しい会社ですが、震災で被災したプラントの復旧や、最新の設備への投資が、多額の借入を伴って行われた可能性があります。その後の原料価格の高騰や、厳しい価格競争が重なり、収益を圧迫し、損失が累積してしまったと推察されます。貸借対照表の固定資産がわずか65万円程度と極端に少ない点は、主要な製造設備であるプラントをリース契約で利用している可能性を示唆しており、毎月のリース料が固定費として経営の重荷になっているのかもしれません。

✔安全性分析
財務安全性は、極めて低いと言わざるを得ません。債務超過は、仮に会社を清算した場合、全資産を売却しても負債を返済しきれない状態を意味します。このような状況で事業を継続できているのは、金融機関や株主からの強力な支援があるためと考えられます。会社のWebサイトには株主構成が明記されていませんが、今後の経営再建には、その株主による増資などの資本注入や、金融機関との交渉による債務の再編などが不可欠なステップとなります。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
東日本大震災からの復興に貢献してきたという、地域からの高い信頼と豊富な公共事業実績
多賀城・岩沼という2つの製造拠点による、宮城県の広範囲をカバーする供給ネットワーク
アスファルト合材の製造からリサイクル、施工までを一貫して手掛ける総合力

弱み (Weaknesses)
・資産を負債が上回る「債務超過」という、極めて脆弱な財務体質
・設立以来、損失が累積している収益構造
・エネルギー価格や原材料価格の変動に、収益が大きく左右される事業モデル

機会 (Opportunities)
・既存インフラの老朽化対策としての、道路の維持・補修工事の安定的な需要
・環境意識の高まりによる、再生アスファルト合材や再生路盤材の需要拡大
・防災・減災を目的とした、新たな公共事業の創出

脅威 (Threats)
・大規模な復興需要の一巡による、受注量の減少
・同業他社との、公共事業入札における厳しい価格競争
原油価格や電気料金のさらなる高騰
・株主や金融機関からの、支援体制の変更・縮小のリスク

 

【今後の戦略として想像すること】
債務超過という危機的な状況にある同社にとって、最優先課題は「財務体質の抜本的改善」と「黒字体質への転換」です。

✔短期的戦略
まずは、株主や金融機関との緊密な連携のもと、経営の安定化を図ることが不可欠です。事業面では、徹底したコスト管理、特にプラントのエネルギー効率の改善や、原材料の調達方法の見直しが求められます。同時に、利益率の高いリサイクル事業や、技術支援サービスの受注を強化し、収益構造の改善を図る必要があります。

✔中長期的戦略
経営再建のためには、株主による増資などを通じて自己資本を増強し、債務超過の状態を解消することが根本的な解決策となります。その上で、持続的な成長軌道に乗るためには、同社の強みであるリサイクル技術をさらに磨き、「環境に配慮する宮城りんかいアスコン」としてのブランドを確立することが重要です。再生材の利用率を高めた環境配慮型のアスファルト合材を開発・供給することで、価格競争から一線を画し、高付加価値な製品で市場をリードしていくことが期待されます。

 

まとめ
宮城りんかいアスコン株式会社は、「この道この街と共に」というスローガンのもと、東日本大震災からの復興という重大な使命を担い、地域のインフラ整備を支えてきた企業です。その事業は、循環型社会の実現に貢献するリサイクル事業を組み込むなど、現代社会の要請に応える先進性も備えています。

しかしその一方で、第9期決算では、78百万円の当期純損失を計上し、純資産がマイナス1.7億円の債務超過に陥るなど、財務的には極めて厳しい状況にあります。復興という大義を支えてきた企業の灯を消さないためにも、今後は株主や金融機関の支援のもと、収益構造の抜本的な改革と財務体質の改善を断行することが不可欠です。同社がこの経営危機を乗り越え、再び宮城の道を力強く舗装していくことができるか。その再建への道のりが注目されます。

 

企業情報
企業名: 宮城りんかいアスコン株式会社
本社所在地: 宮城県多賀城市栄2-217-6
代表者: 代表取締役 櫻井 勝規
設立: 2016年12月
資本金: 1,000万円
事業内容: アスファルト合材の製造販売、産業廃棄物処理アスファルト殻、コンクリート殻)、アスファルト乳剤販売、各種現場試験、土木・舗装工事など。

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