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#1743 決算分析 : ナラサキ石油株式会社 第66期決算 当期純利益 199百万円


北の大地・北海道。その広大な大地を駆け巡る車、厳しい冬を暖める家庭のストーブ、そして国内外の物資を運ぶ港の船舶。これらの活動すべてに不可欠な「エネルギー」を、道民の暮らしと経済の最前線で供給し続ける企業があります。それが、札幌に本社を置く総合エネルギー企業「ナラサキ石油株式会社」です。単なるガソリンスタンド運営に留まらず、家庭への灯油・ガス配達から、北海道の物流拠点・苫小牧港での船舶給油まで、「陸・海・暮らし」の全方位を支える独自の事業ポートフォリオを構築しています。第66期決算では約2億円という大きな当期純利益を計上し、その強固な経営基盤を見せつけました。この安定性と収益性の源泉はどこにあるのか。決算データから、北海道経済の血液ともいえるエネルギーを供給し続ける同社の、巧みな経営戦略に深く迫ります。

20250331_66_ナラサキ石油決算

決算ハイライト(第66期)
資産合計: 3,275百万円 (約32.8億円)
負債合計: 1,707百万円 (約17.1億円)
純資産合計: 1,568百万円 (約15.7億円)


当期純利益: 199百万円
自己資本比率: 約47.9%
利益剰余金: 1,438百万円 (約14.4億円)

 

決算公告の数字は、同社の経営がいかに健全であるかを明確に示しています。自己資本比率は約47.9%と、在庫資産などが多くなりがちな石油販売業としては非常に高い水準であり、財務の安定性は盤石です。約14.4億円に達する利益剰余金は、資本金1.3億円の11倍以上にもなり、長年にわたって着実に利益を積み上げてきた歴史を物語っています。そして、当期純利益も約2億円と、高い収益力を維持していることがわかります。この安定性と収益性の両立こそ、同社の最大の強みと言えるでしょう。

 

企業概要
社名: ナラサキ石油株式会社
設立: 1959年12月
株主: ナラサキ産業株式会社、ENEOS株式会社、札幌通運株式会社
事業内容: 石油製品の販売を核に、SS(サービスステーション)運営、ホームエネルギー供給、マリンサービス(船舶給油)などを展開する総合エネルギー企業。

narasaki-sekiyu.com

 

【事業構造の徹底解剖(陸・海・暮らしを支える三本柱)】
ナラサキ石油の強さは、特定の分野に依存せず、北海道の特性に合わせた3つの主要事業を有機的に連携させている点にあります。

✔SS部(陸のモビリティをトータルサポート)
札幌近郊に16拠点を展開するENEOSのサービスステーションは、同社の顔となる事業です。しかし、その役割は単なる燃料販売に留まりません。自社認証工場を保有し、年間4万台の実績を誇る車検事業、KeePerコーティング、オイル交換、さらには「ENEOSカーリース」まで、お客様のカーライフ全体をサポートする体制を構築。EV化の時代を見据え、給油所から「総合モビリティサービス拠点」への進化を遂げています。

✔ホームエネルギー部(北国の暮らしに寄り添う生命線)
厳しい冬を越える北海道において、家庭や施設への灯油やLPGの供給は、まさに生命線です。このホームエネルギー事業は、景気変動の影響を受けにくい安定した収益基盤として、会社経営を力強く支えています。さらに、ストーブやガスコンロ、給湯器などの設備販売・設置、さらにはリフォーム工事まで手掛けることで、顧客との関係を深め、生活に密着したワンストップサービスを提供しています。

✔マリンサービス部(北海道の物流を担うインフラ)
北海道の物流の玄関口である苫小牧港。同社は4隻の自社給油船保有し、この港に出入りするフェリーや貨物船へA重油やC重油を供給する、マリンサービス事業を展開しています。苫小牧港に就航するフェリーの約7割に給油を行うなど、その役割は北海道の物流インフラそのものと言っても過言ではありません。これは、他の石油販売会社にはない、BtoBの安定した大規模事業です。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
この盤石な経営は、事業の多角化と強力なバックボーンに支えられています。

✔外部環境
長期的にはEV化によるガソリン需要の減少という課題に直面する一方、北海道の物流拠点としての苫小牧港の重要性は増しており、マリン燃料の需要は底堅いものがあります。また、北海道の気候特性上、家庭用暖房燃料の需要が急激になくなることは考えにくく、安定した事業環境が続いています。

✔内部環境
・事業の多角化によるリスク分散: SS事業、ホームエネルギー事業、マリンサービス事業という三本柱を持つことで、見事なリスクヘッジを実現しています。例えば、ガソリン需要が変動しても、家庭用燃料の需要は安定しており、船舶燃料の需要は物流全体の動向に連動します。この多角的なポートフォリオが、約2億円という安定した高収益の源泉です。
・強力な株主シナジー: 同社の株主構成は、その戦略を理解する上で非常に重要です。総合商社のナラサキ産業石油元売最大手のENEOS、そして北海道の物流を担う札幌通運。この3社が株主であることにより、原料の安定調達、ブランド力、物流網、そして新たなビジネスチャンスの獲得において、計り知れないシナジー効果が生まれています。
・積極的なM&Aの歴史: 同社の沿革は、地域の石油関連会社との合併・統合の歴史でもあります。これは、経営陣が現状に甘んじることなく、事業規模の拡大と経営効率の向上を常に追求してきた、攻めの経営姿勢の表れです。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・「SS」「ホームエネルギー」「マリンサービス」という、リスク分散された安定的な事業ポートフォリオ
ナラサキ産業ENEOS札幌通運という、強力な株主とのシナジー効果
ENEOSブランドの高い認知度と、北海道市場における長年の信頼と実績。
・給油船などの重要資産を自社で保有していること。

弱み (Weaknesses)
・事業全体が原油価格の変動という外部要因に大きく影響される。
・EV化の進展による、中核事業の一つであるガソリン販売の長期的な縮小リスク。

機会 (Opportunities)
・SSを拠点とした、EV充電サービスや次世代モビリティ関連サービスへの事業展開。
・家庭向けエネルギー事業における、太陽光発電や省エネリフォームなど、脱炭素化ソリューションへの展開。
・苫小牧港の物流拠点としての重要性向上に伴う、船舶給油事業のさらなる拡大。

脅威 (Threats)
・想定を上回るスピードでのEVシフトと、それに伴うSS事業の収益性低下。
・エネルギー小売業界における価格競争の激化。
・ドライバー、整備士、船員といった、事業継続に不可欠な専門人材の不足。
・北海道の人口減少による、ホームエネルギー市場の長期的な縮小。

 

【今後の戦略として想像すること】
ナラサキ石油は、化石燃料を基盤としながらも、次代を見据えた変革を着実に進めていくでしょう。

✔SSの「次世代サービス拠点」化
ガソリンスタンドから「モビリティ&ライフ・サービスステーション」へ。EV急速充電インフラの整備はもちろん、カーシェアリングの拠点や、地域物流のラストワンマイルを担うデポとしての活用など、既存の立地と顧客基盤を活かした新たな価値創造が期待されます。

✔ホームエネルギーの「脱炭素化」
灯油やLPGといった既存のエネルギー供給を続けながら、太陽光発電システムの販売・設置、高断熱リフォームの提案、さらには家庭用蓄電池の販売など、顧客の「脱炭素化」と「光熱費削減」に貢献する総合的なホームソリューション事業へと進化していく可能性があります。

✔マリンサービスの「次世代燃料」への対応
世界の海運業界では、LNGアンモニア、水素といった次世代燃料への転換が始まっています。苫小牧港のインフラを支える企業として、これらの新燃料の供給体制をいち早く構築できれば、未来にわたってその優位性を維持できるでしょう。

 

まとめ
ナラサキ石油株式会社は、「ガソリンスタンド」という一面的なイメージをはるかに超え、北海道の「陸・海・暮らし」のすべてをエネルギーで支える、懐の深い総合企業です。第66期決算で示された約2億円の純利益と健全な財務内容は、巧みな事業の多角化と、強力な株主との連携によって築き上げられたものです。脱炭素という世界的な大きな潮流に直面しながらも、その強固な経営基盤と地域に深く根差した事業は、変化に対応し、進化していくための十分な体力を備えています。これからもナラサキ石油は、北海道の経済と人々の暮らしを動かす、力強い「エンジン」であり続けることでしょう。

 

企業情報
企業名: ナラサキ石油株式会社
本社所在地: 札幌市中央区北1条西7丁目1番地 プレスト1・7ビル 10F
代表者: 小松 誠一
設立: 1959年12月
資本金: 1億3,000万円
事業内容: SS(サービスステーション)運営、石油製品・液化石油ガスの販売、船舶への燃料供給、自動車整備、住宅設備リフォームなど
株主: ナラサキ産業株式会社、ENEOS株式会社、札幌通運株式会社

narasaki-sekiyu.com

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