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#1667 決算分析 : 株式会社KANSOテクノス 第52期決算 当期純利益 1,758百万円

私たちが毎日利用する電気や、安全な暮らしを支える橋、トンネル、ビル。これらの巨大な社会インフラは、目に見えない専門家たちの高度な技術によって支えられています。今回分析する株式会社KANSOテクノスは、まさに関西電力グループの「技術的頭脳」とも言うべき、総合環境エンジニアリング企業です。

普段、その名を目にすることは少ないかもしれません。しかし、同社は環境調査から土木・建築の設計・施工、そしてインフラの維持管理まで、私たちの生活基盤を守る極めて重要な役割を担っています。今回は、17億円超という高い利益を叩き出した、このプロフェッショナル集団の強さの秘密と、その安定した経営の源泉を決算データから紐解いていきます。

20250331_52_KANSOテクノス決算

決算ハイライト(第52期)
資産合計: 20,753百万円 (約207.5億円)
負債合計: 10,517百万円 (約105.2億円)
純資産合計: 10,235百万円 (約102.4億円)

当期純利益: 1,758百万円 (約17.6億円)

自己資本比率: 約49.3%
利益剰余金: 10,135百万円 (約101.4億円)

 

まず目を引くのが、その盤石な財務体質と高い収益性です。自己資本比率は49.3%と極めて健全な水準にあり、企業の安定性を示しています。さらに驚くべきは、利益剰余金が101億円を超えている点です。これは、資本金1億円の会社が、長年にわたりいかに着実に利益を積み上げてきたかを物語っています。当期純利益も約17.6億円と非常に高く、専門技術を基盤とした高付加価値サービスがいかに収益に結びついているかがうかがえます。

 

企業概要
社名: 株式会社KANSOテクノス
設立: 1974年1月17日
株主: 関西電力株式会社
事業内容: 環境、土木、建築の3分野における総合エンジニアリング(研究調査、測定分析、計画、設計、工事、保守管理など)

www.kanso.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
KANSOテクノスは、関西電力グループの一員として、社会インフラの安全と環境保全を技術で支える企業です。その事業は大きく3つの柱で構成されており、これらが連携することでワンストップのソリューションを提供しています。

✔環境分野
事業の原点であり、環境アセスメント(影響評価)、水質や大気の測定分析、放射能分析など、専門的な調査・分析サービスを提供。発電所などの大規模施設が環境に与える影響を評価し、持続可能な社会の実現に貢献します。ISO/IEC 17025などの国際規格認定を受けた計測分析所を保有し、その技術力は国内外で高く評価されています。

✔土木分野
発電用のダムや水路、送電線の鉄塔基礎といった電力インフラの調査、設計、施工、メンテナンスが中心です。地盤調査、測量、コンクリート構造物の診断、法面保護工事など、国土強靭化に不可欠な技術を提供。近年では、ドローンを活用した点検サービスなど、DXを駆使した技術革新にも積極的に取り組んでいます。

✔建築分野
発電所関連の建物の新増築や改修工事、耐震補強工事などを手掛けています。また、施設のライフサイクル全体を見据えた長期保全計画の策定や、ゼロカーボン化計画の支援など、建物の価値を最大化するファシリティマネジメントにも力を入れています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
同社にとって、現在の社会情勢は大きな追い風となっています。第一に、インフラの老朽化です。高度経済成長期に建設された橋、トンネル、ダムなどが一斉に更新時期を迎え、点検・補修・改修の需要は増大し続けています。第二に、頻発する自然災害です。国土強靭化の観点から、防災・減災のための調査や対策工事のニーズは非常に高いレベルで推移しています。第三に、脱炭素化の流れです。再生可能エネルギー、特に水力発電所の保全・運用管理や、環境アセスメントの重要性はますます高まっています。

✔内部環境と経営戦略
KANSOテクノスの最大の強みは、関西電力グループの中核企業であることです。これにより、関西電力保有する膨大なインフラ設備(水力・火力・原子力発電所、送配電設備など)の維持管理という、安定的かつ高度な技術力が求められる事業基盤を確保しています。この安定した基盤の上で、官公庁や他の民間企業へも事業を拡大。博士や技術士といった高度専門人材を多数擁し、「技術力」そのものを商品として提供することで、高い利益率を確保しています。100億円を超える潤沢な利益剰余金は、新たな技術開発や人材育成への再投資を可能にし、さらなる競争力強化に繋がる好循環を生んでいます。

✔安全性分析
自己資本比率49.3%という数字が示す通り、財務の安全性は極めて高いです。総資産約208億円のうち、半分近くを返済不要の自己資本で賄っています。負債も健全な範囲にコントロールされており、財務リスクは非常に低いと言えます。この盤石な財務基盤があるからこそ、長期にわたる大規模プロジェクトや、先行投資が必要な研究開発にも安心して取り組むことができるのです。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
関西電力グループという強力な事業基盤と、そこから得られる安定的・継続的な受注。
・環境・土木・建築の3分野を融合させ、調査から設計、施工、保守まで一貫して提供できる総合力。
・多数の博士号取得者や技術士が在籍する、国内トップクラスの高度な専門技術者集団。
・101億円の利益剰余金と49.3%の自己資本比率が示す、盤石な財務体質と高い信用力。

弱み (Weaknesses)
・良くも悪くも関西電力グループへの依存度が高く、グループ外での売上比率拡大が今後の課題。
・事業内容がBtoB(対法人)かつ専門的であるため、企業としての知名度が一般に浸透しにくい。

機会 (Opportunities)
・全国的なインフラ老朽化対策の本格化に伴う、点検・診断・補修市場の拡大。
・脱炭素社会の実現に向けた、再生可能エネルギー関連(特に水力)の調査・保守需要の増加。
・ドローン、AI、IoTなどを活用したインフラDXによる、新たな保守・管理サービスの創出。
ベトナムへの合弁会社設立など、海外でのインフラ整備事業への参画。

脅威 (Threats)
・国の公共事業予算の変動による、受注機会の増減リスク。
・建設・エンジニアリング業界全体に共通する、深刻な技術者不足と後継者の育成問題。
・日進月歩で進化する技術(DX、新素材など)に追随するための、継続的な研究開発投資の負担。

 

【今後の戦略として想像すること】
今後、KANSOテクノスは、その専門性をさらに深化させ、社会課題解決型企業としての役割を強化していくと考えられます。

✔短期的戦略
・インフラメンテナンス事業の深耕:親会社である関西電力のインフラを確実に守るという使命を果たしつつ、そこで培った最新の点検・診断技術(ドローン活用など)をパッケージ化し、他の電力会社や官公庁、民間企業への横展開を加速させる。
・人材育成と技術継承の強化:豊富な利益剰余金を活用し、若手技術者の育成プログラムや、熟練技術者のノウハウをデジタル化して継承するシステムへの投資を強化する。

✔中長期的戦略
・「インフラの総合医」としての地位確立:個別の施設を点検・補修するだけでなく、エリア全体のインフラ網を俯瞰し、最適な保全計画や防災計画を提案する、より上流のコンサルティング事業を強化する。
・環境・エネルギー分野での海外展開:ベトナムでの実績を足掛かりに、日本の高度な環境技術やインフラ管理ノウハウを、経済成長が著しいアジア諸国へ展開していく。

 

まとめ
株式会社KANSOテクノスは、関西電力グループの技術的な中核を担う、極めて収益性が高く、財務的にも安定した優良企業です。その決算内容は、専門性の高い技術サービスがいかに確固たる収"&"益源となるかを如実に示していました。

私たちの目に直接触れることはなくとも、同社の技術者たちが日々、ダムを診断し、環境を測定し、建物を補強することで、私たちの安全で快適な生活は守られています。インフラの老朽化、激甚化する自然災害、そして脱炭素化という日本社会が直面する大きな課題は、すべてKANSOテクノスにとっての事業機会となります。この「社会インフラのドクター」が、今後ますますその重要性を増していくことは間違いないでしょう。

 

企業情報
企業名: 株式会社KANSOテクノス
所在地: 大阪市中央区安土町1丁目3番5号
代表者: 代表取締役社長 岡田 達志
設立: 1974年1月17日
資本金: 1億円
事業内容: 環境、土木、建築分野に関する研究調査、測定分析、影響評価、計画、設計、監理、工事請負、機器販売など
株主: 関西電力株式会社

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