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#1583 決算分析 : セメダイン株式会社 第91期決算 当期純利益 1,417百万円

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一家に一つ、黄色いチューブの「セメダインC」。工作や模型作りで誰もがお世話になったであろう、この国民的接着剤ブランドが2023年に創業100周年を迎えたことをご存知でしょうか。その名は、海外製品を市場から「攻め出せ」という創業者・今村善次郎の闘志に由来します。今回は、日本の「つける」文化を創造し、今なお進化を続ける接着剤のパイオニア、セメダイン株式会社の決算を読み解きます。家庭用から建築、エレクトロニクス、自動車産業の最前線まで。モノとモノ、そして人と人をつなぐ老舗化学メーカーの現在地と、次の100年を見据えた未来戦略に迫ります。

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決算ハイライト(第91期)
資産合計: 22,953百万円 (約229.5億円)
負債合計: 7,799百万円 (約78.0億円)
純資産合計: 15,155百万円 (約151.6億円)


売上高: 26,003百万円 (約260.0億円)
当期純利益: 1,417百万円 (約14.2億円)


自己資本比率: 約66.0%

売上高260億円という安定した事業規模を誇り、当期純利益として14.2億円を確保しています。特筆すべきは、自己資本比率が約66.0%という非常に高い水準にある点です。これは、財務基盤が極めて強固で、経営が安定的であることを示しています。100年の歴史の中で着実に利益を積み重ねてきた、老舗優良企業の姿がうかがえます。

 

企業概要
社名: セメダイン株式会社
創業: 1923年11月(設立は1948年4月)
株主: 株式会社カネカ(100%)
事業内容: 接着剤、シーリング材、粘着剤、特殊塗料などの製造販売、および接着・防水に関する施工請負

www.cemedine.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、私たちの暮らしに身近な「家庭用」から、日本のものづくりを支える「工業用」、そして社会インフラを構築する「建築用」まで、接着・シーリング技術を核として多岐にわたります。

✔家庭用事業(暮らしに寄り添う信頼のブランド)
「セメダイン」の名を国民的ブランドに押し上げたのが、この家庭用事業です。初の国産合成接着剤として誕生し、現在は国立科学博物館重要科学技術史資料にも登録されている「セメダインC」を原点に、多用途・弾性接着剤の金字塔「スーパーX」シリーズ、強力瞬間接着剤「3000」シリーズなど、時代と共に進化する多種多様な製品を世に送り出してきました。DIYやホビー、家庭での補修といったシーンで、同社の製品は今もなお多くの人々に愛用され、安定した事業基盤を形成しています。

✔工業用事業(最先端技術を支えるソリューション)
同社の成長を牽引するのが、自動車やエレクトロニクスといった最先端産業向けの工業用事業です。ここでは、単に接着剤を供給するだけでなく、顧客の製造プロセスにおける課題を解決するソリューションパートナーとしての役割を担っています。例えば、自動車分野では、車体の軽量化や異種材料の接合、電子部品の固定・封止などに貢献。エレクトロニクス分野では、スマートフォンや電子部品の組み立てに不可欠な、熱を逃がす放熱性接着剤や、電気を通す導電性接着剤などを開発しています。茨城県古河市に構える開発センターが、これらの高機能製品を生み出す心臓部となっています。

✔建築・土木用事業(安全で快適な空間づくり)
建物の外壁の隙間を埋めて雨水の侵入を防ぐシーリング材や、タイルを壁に貼り付ける接着剤など、建築・土木分野も同社の重要な柱です。特に、建物の動きに追従する柔軟性を持つ変成シリコーン系シーリング材「POSシール」や、強力タイル用接着剤「タイルエース」は、長年にわたりプロの現場で高い評価を得ています。建物の長寿命化や、地震などの自然災害から人々を守るという、社会的に極めて重要な役割を担う事業です。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
化学業界は、原油価格の変動による原材料コストの上昇や、世界的な環境規制の強化といった課題に直面しています。しかし、同社がターゲットとする市場には大きな機会も存在します。自動車業界ではEVシフトによる軽量化・電装化が、エレクトロニクス業界では5GやIoTの普及が、それぞれ新たな高機能接着剤の需要を生み出しています。また、国内ではインフラの老朽化対策や、住宅リフォーム市場の拡大が、建築用製品の安定した需要を下支えしています。

✔内部環境
「セメダイン」という100年の歴史を持つ強力なブランド力は、何物にも代えがたい資産です。この高い認知度と信頼性が、家庭用からプロ向けの建築用まで、全ての事業の基盤となっています。また、2016年に大手化学メーカーである株式会社カネカのグループに入り、2022年に完全子会社となったことも大きな転換点です。これにより、カネカが持つグローバルな販売網や、高機能ポリマーなどの先進的な素材技術を活用できるようになり、よりダイナミックな事業展開が可能となりました。

✔安全性分析
自己資本比率66.0%という数値は、製造業として極めて健全な財務体質であることを示しています。総資産約229.5億円に対し、返済義務のない自己資本(純資産)が約151.6億円と、資産の3分の2近くを占めています。これは、長年の安定した黒字経営による利益の蓄積の賜物であり、景気の変動に対する高い抵抗力と、未来への研究開発投資を支える十分な体力を有していることの証明です。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・創業100年の歴史を持つ「セメダイン」の圧倒的なブランド力と信頼性
・家庭用、工業用、建築用というバランスの取れた事業ポートフォリオ
・「スーパーX」に代表される、市場をリードする独自技術と製品開発力
自己資本比率66.0%という、極めて健全で強固な財務基盤
・親会社であるカネカグループとのシナジー(素材技術、グローバル展開)

弱み (Weaknesses)
・国内市場への依存度が高く、海外売上比率の向上が課題
・家庭用製品における、低価格な海外製品との競争

機会 (Opportunities)
・自動車のEV化、軽量化、マルチマテリアル化に伴う、高機能構造用接着剤の需要拡大
・5G、IoT、ウェアラブル端末など、次世代エレクトロニクス分野での新たな接着・封止ニーズ
・インフラ老朽化対策やリフォーム市場の拡大による、建築用シーリング材・補修材の安定需要
サステナビリティへの関心増を背景とした、環境配慮型(低VOC、バイオマス由来など)接着剤の開発

脅威 (Threats)
原油価格高騰による、主原料であるナフサ価格の上昇
・国内の人口減少や新設住宅着工戸数の減少による、一部市場の縮小
・接着剤に関する国内外の化学物質規制の強化
・海外競合メーカーの技術力向上とグローバルな価格競争

 

【今後の戦略として想像すること】
100周年を機に策定されたミッション「つけるが、価値。」を核に、次の100年を見据えた変革を加速させていくと考えられます。

✔短期的戦略
原材料価格の上昇に対応するため、生産プロセスの効率化によるコストダウンと、製品価格への適切な転嫁を進めることが急務です。同時に、収益性の高い工業用・建築用分野でのシェア拡大に注力するでしょう。

✔中長期的戦略
カネカグループとのシナジーを最大限に活用し、グローバル市場、特に成長著しいアジア市場への展開を本格化させることが最重要課題となります。自動車分野では、EVのバッテリーやモーター周辺の熱対策、電磁波対策といった新たなニーズに応える高機能材料の開発を加速。エレクトロニクス分野でも、フレキシブルデバイスや次世代半導体実装といった新領域に挑戦していくでしょう。そして、サステナビリティは避けて通れないテーマです。植物由来の原料を用いた接着剤や、リサイクルしやすい接着技術の開発など、環境負荷低減に貢献する製品群を拡充し、新たな企業価値を創造していくことが期待されます。

 

まとめ
セメダイン株式会社は、「セメダインC」という一つの製品から始まり、日本の暮らしと産業の発展と共に歩んできた、まさに国民的化学メーカーです。第91期決算では、100年の歴史の中で築き上げた強固な財務基盤と、安定した収益力を改めて示しました。そして今、同社はカネカグループの一員として、単なる接着剤メーカーから、モノとモノ、コトとコト、ヒトとヒトをつなぎ、社会課題に答えを出すソリューション企業へと、大きな飛躍を遂げようとしています。「つけるが、価値。」というミッションのもと、次の100年に向けて、セメダインがどのような驚きと感動を世の中に届けてくれるのか。その新たな挑戦から目が離せません。

 

企業情報
企業名: セメダイン株式会社
所在地: 東京都品川区大崎1-11-2 ゲートシティ大崎イーストタワー
代表者: 代表取締役会長兼社長 水澤 伸治
創業: 1923年11月
資本金: 30億5,037万5千円
事業内容: 接着剤・シーリング材・粘着剤・特殊塗料・コーティング材およびその加工品の製造販売、接着および防水等に関する施工および請負
株主: 株式会社カネカ(100%)

www.cemedine.co.jp

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