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#1572 決算分析 : 長野都市ガス株式会社 第21期決算 当期純利益 723百万円

私たちの生活に欠かせないエネルギー。特に、冬の寒さが厳しい長野県において、安全で安定したガスの供給は、日々の暮らしの温もりと安心を支えるまさに生命線です。今回は、長野県の県営ガス事業の民営化から誕生し、2024年に創立20周年という節目を迎えた地域密着のエネルギー企業、長野都市ガス株式会社の決算を読み解きます。長野の広大なエリアにガスと電気を届け、地域社会のインフラとして深く根を下ろす同社が描く未来像と、その驚くほど盤石な経営基盤に迫ります。

20250331_21_長野都市ガス決算

決算ハイライト(第21期)
資産合計: 20,744百万円 (約207.4億円)
負債合計: 4,308百万円 (約43.1億円)
純資産合計: 16,435百万円 (約164.4億円)


売上高: 19,313百万円 (約193.1億円)
当期純利益: 723百万円 (約7.2億円)


自己資本比率: 約79.2%
利益剰余金: 8,043百万円 (約80.4億円)

 

まず何よりも注目すべきは、約79.2%という驚異的な自己資本比率です。これは企業の財務健全性を示す極めて高い数値であり、経営の安定性が盤石であることを物語っています。売上高193.1億円を計上し、経常利益10.6億円、当期純利益7.2億円を着実に確保しており、安定した収益力も証明しています。インフラ企業として理想的な、極めて堅牢な経営体質が見て取れます。

 

企業概要
社名: 長野都市ガス株式会社
創立: 2004年11月1日
株主: 東京ガス株式会社、株式会社INPEX、上田ガス株式会社、長野県
事業内容: 都市ガス事業、小売電気事業、ガス器具・住宅設備機器の販売・施工などを手掛ける総合エネルギー事業

www.nagano-toshi-gas.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、地域社会に不可欠なエネルギーを安全かつ安定的に供給する「総合エネルギーサービス」に集約されます。その根底には、県営事業を継承したというパブリックな使命感と、地域の未来を共創するパートナーでありたいという強い意志があります。

✔都市ガス事業(暮らしを支えるコア事業)
同社の中核を成す事業です。長野市上田市佐久市など北信・東信地域にまたがる8市3町、約95,000件のご家庭や企業に都市ガスを供給しています。これは県営ガス事業を継承した広大な供給エリアであり、同社の強固な事業基盤となっています。20年にわたり培ってきた安全・安定供給の実績と、各エリアに配置された支店・営業所による地域に密着したきめ細やかなサポート体制が、顧客からの厚い信頼に繋がっています。

✔小売電気事業(選択肢を広げるエネルギー供給)
2018年からは小売電気事業に参入。エネルギー自由化の流れの中で、従来のガス供給に加え、電気も合わせて提供できる体制を構築しました。これにより、顧客はエネルギーに関する相談窓口を一本化でき、ガスと電気のセット契約によるメリットも享受できます。顧客の多様なニーズに応えるワンストップのエネルギーソリューションを提供することで、総合エネルギー企業としての競争力を高めています。

✔「長野都市ガス2045ビジョン」(未来への羅針盤
創立20周年を機に策定されたこのビジョンは、同社が単なるエネルギー供給者に留まらないことを明確に示しています。「地域共創社会」「循環型社会」「災害に強く子育てしやすい安心安全な社会」など、20年後の未来を見据えた5つの社会像の実現を目標に掲げています。これは、脱炭素化や防災、地域の活性化といった社会課題に対し、エネルギー事業を通じて積極的に貢献していくという宣言であり、企業の持続的成長と地域貢献を両立させようとする未来志向の経営戦略の核となっています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境
エネルギー自由化による事業者間の競争激化、供給エリアにおける人口減少、そして国際情勢に大きく左右される燃料価格の変動など、事業を取り巻く環境は決して平坦ではありません。しかし一方で、世界的な脱炭素化への潮流は、家庭用燃料電池エネファーム」のような高効率ガス機器や、将来的にはカーボンニュートラルガスといった次世代エネルギーの普及を後押しする大きなビジネスチャンスでもあります。

✔内部環境
北信・東信の広大なエリアにおける独占的なガス供給インフラと約95,000件の顧客基盤が、何物にも代えがたい安定収益の源泉です。また、東京ガスINPEXといった日本のエネルギー業界をリードする企業が株主であることは、技術力、燃料の安定調達、経営ノウハウの面で大きな強みとなっています。県営事業の継承者として、利益追求だけでなく地域社会に貢献するという使命感が企業文化として深く根付いていることも、顧客との強い信頼関係を築く上で重要な要素となっています。

✔安全性分析
自己資本比率79.2%という数値は、企業の財務分析において特筆すべきものです。これは、総資産約207億円のうち、返済義務のない純資産が約164億円を占め、借入金などの負債はわずか約43億円に過ぎないことを意味します。実質的な無借金経営に極めて近い状態であり、金利変動などの影響を受けにくい、極めてリスク耐性の高い財務構造です。約80億円にのぼる潤沢な利益剰余金は、将来のインフラ更新投資や、「2045ビジョン」で掲げる新規事業への挑戦を自己資金で賄えるだけの十分な体力を有していることの証明です。社会インフラを担う企業として、最高レベルの財務安定性を確保していると言えるでしょう。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・長野県の広域にわたる独占的なガス供給網と約95,000件の強固な顧客基盤
自己資本比率79.2%という極めて健全で安定した財務体質
東京ガスINPEX、長野県という安定した株主構成による高い信用力と技術力
・ガスと電気を両方提供できる総合エネルギー企業としての提案力
・地域に深く根差し、20年間で築き上げた顧客や地域社会との信頼関係

弱み (Weaknesses)
・供給エリアの人口減少や高齢化による長期的なエネルギー需要の減少リスク
オール電化住宅の普及によるガス顧客獲得への逆風
LNGの国際価格変動が経営に与える影響が大きい

機会 (Opportunities)
・脱炭素社会への移行に伴う、高効率ガス機器や省エネソリューションの需要拡大
・「長野都市ガス2045ビジョン」を核とした、地域課題解決型ビジネスの創出
・防災意識の高まりを背景とした、災害に強い分散型エネルギーシステムへの関心増
・DX推進による業務効率化と、スマートメーターなどを活用した新サービスの開発

脅威 (Threats)
・電力・ガス小売全面自由化による、他エネルギー事業者との競争激化
地政学リスク等に起因する、世界的な燃料価格の高騰と安定調達への懸念
地震や豪雨などの大規模自然災害による供給インフラへの物理的ダメージ
・急進的な脱炭素政策が、中長期的にガス事業そのものへ与える影響

 

【今後の戦略として想像すること】
強固な財務基盤と地域との信頼関係を礎に、「2045ビジョン」の実現に向けた取り組みが戦略の中心となります。

✔短期的戦略
不安定な燃料価格の動向を注視し、安定供給を維持しつつ、顧客への丁寧な説明を通じて料金への理解を求めていくことが重要です。ガスと電気のセット契約のメリットを訴求し、顧客エンゲージメントを高めていきます。そして、何よりも優先されるのが既存インフラの保安・安全対策の徹底です。

✔中長期的戦略
「2045ビジョン」の具現化が経営の核となります。具体的には、カーボンニュートラルガスの導入に向けた調査・研究、地域のバイオマス資源などを活用したエネルギーの地産地消モデルの構築などが考えられます。また、防災への貢献として、災害時にもエネルギー供給が可能な分散型エネルギーシステムの提案や、非常用発電機、LPガスとの連携などを強化し、地域のレジリエンス向上に貢献していくでしょう。DXをさらに推進し、スマートメーターの全面的な導入や、オンラインでの各種手続きの完結、顧客のエネルギー使用状況に応じた最適なプラン提案など、顧客サービスの高度化と業務効率化を両立させていくことが期待されます。

 

まとめ
長野都市ガス株式会社は、県営ガス事業の継承者として、長野県の広域にわたり人々の暮らしと産業を支える重要な社会インフラ企業です。第21期決算で示された79.2%という傑出した自己資本比率は、その経営がいかに安定しているかを何よりも雄弁に物語っています。創立20周年を機に掲げた「長野都市ガス2045ビジョン」は、同社が単なるエネルギー供給者の枠を超え、脱炭素、防災、地域共創といった社会課題の解決に主体的に取り組む「地域の未来を共創するパートナー」へと進化しようとする強い意志の表れです。盤石な経営基盤の上で、地域と共に持続的な成長を遂げていく同社の今後の歩みが大いに期待されます。

 

企業情報
企業名: 長野都市ガス株式会社
所在地: 長野県長野市鶴賀1017
代表者: 代表取締役社長 中山 潔
創立: 2004年11月1日
資本金: 38億円
事業内容: ガス事業、小売電気事業、燃焼器具および住宅設備機器の販売、土木・建築・電機給排水衛生・配管工事に関する設計・施工および監理など
株主: 東京ガス株式会社、株式会社INPEX、上田ガス株式会社、長野県

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