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#1554 決算分析 : 栃木ガス株式会社 第62期決算 当期純利益 57百万円

私たちの生活に欠かせないエネルギー。その安定供給は、地域社会の基盤そのものです。栃木県栃木市において、昭和39年の創立以来、60年以上にわたりその重責を担い続けてきたのが栃木ガス株式会社です。「蔵の街」として知られるこの地で、市民株主が多くを占めるという成り立ちからもわかるように、地域と共に歩み、地域に尽くすことを使命としてきました。現在では、都市ガスやLPガスといった中核事業に加え、電力販売、リフォーム、さらにはミネラルウォーターの宅配まで手掛ける「ホーム・エネルギーパートナー」へと進化を遂げています。今回は、同社の第62期決算を読み解き、地域社会のライフラインを支える企業の堅実な経営と、未来に向けた戦略に迫ります。

20250331_62_栃木ガス決算

決算ハイライト(第62期)

資産合計: 786百万円 (約7.9億円)
負債合計: 419百万円 (約4.2億円)
純資産合計: 367百万円 (約3.7億円)
当期純利益: 57百万円 (約0.6億円)


自己資本比率: 約46.7%
利益剰余金: 303百万円 (約3.0億円)

 

今回の決算で注目すべきは、57百万円の当期純利益を確保し、利益剰余金が約3.0億円まで着実に積み上げられている点です。これにより、自己資本比率も約46.7%と健全な水準を維持しており、地域に不可欠なインフラ企業としての安定した財務基盤がうかがえます。エネルギー価格の変動など、厳しい外部環境の中にあっても、堅実な経営手腕で利益を確保し、地域社会への安定供給という使命を果たしていることが見て取れます。

 

企業概要

社名: 栃木ガス株式会社
設立: 1964年6月2日
株主: 市民株主40名(令和6年3月31日時点)
事業内容: 都市ガス・LPガスの供給、電力販売、ガス機器・住宅設備機器の販売・施工、建設業、ミネラルウォーター宅配事業など

www.tochigi-gas.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、地域に深く根差したエネルギー供給を核としながら、顧客の暮らしを多角的にサポートする複合的な構造になっています。

✔安定収益の基盤「ガス供給事業」
・都市ガス事業

栃木市中心部を供給エリアとし、クリーンな天然ガスを家庭や事業所に届ける中核事業です。パイプラインというインフラを基盤とするため、非常に安定した収益源となっています。
LPガス事業

都市ガスの供給エリア外をカバーする形でLPガスを販売。シリンダー供給からバルク供給まで、顧客のニーズに合わせた供給方式で、栃木市周辺の広範なエネルギー需要に応えています。

✔成長を牽引する「多角化事業」
同社はガスの供給に留まらず、顧客との接点を活かして生活関連サービスを幅広く展開しています。
・電力販売

「エネワンでんき」のブランドで電力も販売。ガスとセットで契約することで、顧客の利便性と経済的メリットを高めています。
・リフォーム・住宅設備事業

ガス機器の販売・施工で培ったノウハウを活かし、キッチンやバスルームのリフォーム、空調設備工事なども手掛けています。
・その他事業

ミネラルウォーター「Water One」の宅配事業や、土木・管工事といった建設業も展開し、収益源の多様化を図っています。

✔競争力の源泉「ガスワングループとの連携」
2017年より、株式会社サイサンが率いる「ガスワングループ」と連携。これにより、エネルギーの共同仕入れによるコスト競争力の強化や、グループが持つ幅広い商品・サービスのノウハウを活用することが可能となり、地域密着型企業でありながら大手企業に伍する競争力を確保しています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】

✔外部環境
近年、エネルギー業界は、世界的な燃料価格の変動、カーボンニュートラルへの対応、電力・ガス小売全面自由化による競争激化など、大きな変革の波に晒されています。顧客は価格だけでなく、サービスの質や環境への配慮といった多面的な価値を求めるようになっています。

✔内部環境
栃木市という限られたエリアで60年以上にわたり築き上げてきた顧客との「信頼の絆」が最大の経営資源です。これを基盤に、ガス、電気、水、リフォームといった生活に不可欠なサービスをワンストップで提供できる体制は、他社に対する大きな強みとなっています。また、ガスワングループとの連携により、仕入れコストの抑制や新サービスの導入が容易になっており、収益性を下支えしています。

✔安全性分析
自己資本比率が約46.7%と、資本集約的なインフラ事業としては安定した水準を確保しています。利益剰余金も着実に積み上がっており、大規模な設備投資や修繕にも対応できる財務的な体力を有しています。地域社会のライフラインを担う企業として、高いレベルの財務安全性を維持していると言えるでしょう。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)
・60年以上の歴史で培った、地域社会からの絶大な信頼とブランド力
・都市ガス、LPガス、電力、リフォーム、水宅配などを手掛ける多角的な事業ポートフォリオ
・ガスワングループとの連携による、仕入れコストの競争力と幅広いサービス展開能力
・健全な財務基盤と安定した収益力

弱み (Weaknesses)
・事業エリアが栃木市周辺に限定されており、地域の人口動態の影響を受けやすい
・インフラ企業としての性質上、急激な事業拡大が難しい

機会 (Opportunities)
カーボンニュートラルへの流れを捉えた、高効率ガス機器(エネファーム等)や省エネリフォームの提案強化
・既存顧客に対するガス・電気・水などのセット契約の推進による、顧客単価の向上(クロスセル)
スマートメーター導入など、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化と新たなサービス創出
・地域社会との連携による、防災や高齢者見守りサービスなどへの事業展開

脅威 (Threats)
・世界情勢に起因する、予測困難な原料価格の高騰
オール電化住宅など、競合エネルギーとの顧客獲得競争の激化
・大規模な自然災害発生時の、供給インフラへのダメージリスク
・地域の人口減少や産業構造の変化による、長期的なエネルギー需要の減少

 

【今後の戦略として想像すること】
「信頼を永久に」という理念のもと、同社は地域社会の持続可能性に貢献する戦略を推進していくと考えられます。

✔短期的戦略
既存顧客との関係性をさらに深耕し、ガスと電気、さらにはウォーターサーバーやリフォームといったサービスのセット提案を強化することで、顧客一人ひとりとの結びつきを強め、収益基盤を盤石なものにしていくでしょう。顧客の生活に寄り添う「ホーム・エネルギーパートナー」としての地位を確固たるものにします。

✔中長期的戦略
カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みが重要となります。家庭用燃料電池エネファーム」や高効率給湯器の普及促進、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)関連の提案など、環境配慮型のエネルギーソリューションを事業の柱の一つとして育てていくことが期待されます。また、ガスワングループとの連携をさらに深化させ、IoTを活用した遠隔監視や保安の高度化など、DXへの投資も加速させていくと考えられます。

 

まとめ

栃木ガス株式会社は、単にガスを供給する企業ではありません。それは、栃木市という「蔵の街」で、60年以上にわたり人々の暮らしに寄り添い、信頼という名のパイプラインを地域社会の隅々まで張り巡らせてきた、まさに地域のライフラインそのものです。ガスを基盤としながら、電気、水、リフォームへと事業を広げ、時代の要請であるカーボンニュートラルにも真摯に向き合う。盤石な財務基盤と、大手エネルギーグループとの連携という強みを活かしながら、「最も身近なホーム・エネルギーパートナー」として、これからも栃木の街の未来を明るく照らし続けていくことでしょう。

 

企業情報

企業名: 栃木ガス株式会社
所在地: 栃木県栃木市城内町2丁目2番23号
代表者: 吉田 佳紀
設立: 1964年6月2日
資本金: 6,000万円
事業内容: 都市ガス(天然ガス)供給事業、ガス機器および住宅設備機器の販売・施工、ガス工事、簡易ガス事業、LPG販売、一般建設業(土木事業・管工事業)、電気事業、ミネラルウォーター「Water One」宅配事業

www.tochigi-gas.co.jp

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