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#1373 決算分析 : 都築クロスサポート株式会社 第59期決算 当期純利益 56百万円

私たちが日々働くオフィス、学ぶ学校、治療を受ける病院。その空間が「当たり前」に快適で、安全であることの裏側には、建物の神経や血管ともいえる情報通信設備や環境設備を、昼夜を問わず支えるプロフェッショナルたちの存在があります。特に、現代のビジネスにおいて不可欠なネットワークインフラと、人々の健康や生産性を左右する空調・衛生環境は、企業の競争力そのものと言っても過言ではありません。
今回は、東証プライム上場の都築電気グループの中核企業として、これら社会インフラの構築から保守までをワンストップで手掛ける都築クロスサポート株式会社の決算を読み解きます。50年以上の長い歴史の中で、いかにして安定した成長を続け、社会の「快適」を創造してきたのか。その強固な事業基盤と経営戦略に迫ります。

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決算ハイライト(第59期)
資産合計: 1,942百万円 (約19.4億円)
負債合計: 1,200百万円 (約12.0億円)
純資産合計: 742百万円 (約7.4億円)
当期純利益: 56百万円 (約0.6億円)


自己資本比率: 約38.2%
利益剰余金: 435百万円 (約4.4億円)

 

総資産約19.4億円に対し、純資産が約7.4億円と、自己資本比率は38.2%の健全な水準を維持しています。特に、利益剰余金が4.3億円以上積み上がっている点は、長年にわたり着実に利益を蓄積してきた経営の安定性を物語っています。今期も5,600万円近い当期純利益を確保しており、社会に不可欠なサービスを提供することで、安定した収益力を維持していることが明確に見て取れます。

 

企業概要
社名: 都築クロスサポート株式会社
設立: 1973年10月1日 (創業: 1967年9月28日)
株主: 都築電気株式会社 (100%)
事業内容: 情報通信設備、環境設備(空調・給排水・消火)の設計・施工・保守、および専門技術者の派遣事業。

www.tsuzuki.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、現代社会を支える「情報」と「環境」という2つのインフラを軸に、専門性の高い3つのセグメントで構成されています。これらが相互に連携することで、顧客に対して唯一無二の価値を提供しています。

✔情報通信設備事業
ビジネスの生命線である情報通信ネットワークを構築・保守する事業です。小規模オフィスから大規模ビル、工場、学校、病院まで、あらゆる施設の電話交換設備やネットワーク設備の設計・施工・保守を一手に担います。長年の信頼と実績を基に、顧客の要望に合わせた最適な通信環境をトータルで提供できる技術力が強みです。変化の激しい情報化社会において、安心・安全なインフラを提供し続ける、まさに縁の下の力持ちです。

✔環境設備事業
人々が過ごす空間の「空気と水」をコントロールし、快適で安全な環境を創造する事業です。具体的には、温度・湿度・気流を最適化する「空調換気設備」、生活に不可欠な水を供給・排出する「給排水衛生設備」、そして万一の事態に備える「消火設備」の設計・施工・メンテナンスを手掛けています。特筆すべきは、熱流体解析ソフト「FlowDesigner」を駆使した科学的なアプローチです。これにより、空調設備導入前後の空気の流れや温度分布をシミュレーションし、勘や経験だけに頼らない、最適な設備配置と省エネ効果を顧客に提示。専門性の高い技術提案で、他社との差別化を図っています。

労働者派遣事業
情報通信設備の保守・点検・メンテナンスに精通した、経験豊富な自社の技術者を顧客先に派遣する事業です。これは単なる人材派遣ではありません。同社が長年培ってきた専門知識と技術力を持つ「即戦力」を、必要な時に必要な場所へ提供することで、顧客が抱える技術者不足の課題をダイレクトに解決します。自社の事業で培ったノウハウを持つ人材だからこそ提供できる、質の高いサービスが特徴です。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
✔外部環境:社会の変化が事業の追い風に
現代社会は、同社にとって追い風となる複数のトレンドに満ちています。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化は、より高度で安定したネットワークインフラへの需要を喚起します。また、脱炭素社会への移行は、省エネルギー性能の高い空調設備への更新投資を後押ししています。さらに、インフラの老朽化に伴うリニューアル市場の拡大や、専門技術者の不足による派遣ニーズの高まりも、同社の事業機会を大きく広げています。

✔内部環境:シナジーを生む事業ポートフォリオ
同社の最大の強みは、「情報通信」と「環境設備」という2つの異なる領域の専門部隊を社内に擁していることです。これにより、例えば新しいオフィスビルを建設する際に、ネットワーク配線から空調・衛生設備までをワンストップで提案・施工することが可能です。顧客にとっては発注の手間が省け、事業者にとってはクロスセルによる収益機会の拡大に繋がります。この事業間のシナジーが、安定した経営基盤を築く上で重要な役割を果たしています。また、親会社である都築電気の強力な顧客基盤と全国ネットワークを活用できることも、大きなアドバンテージです。

✔安定性分析:着実な利益蓄積が示す堅実経営
自己資本比率38.2%、4.3億円超の利益剰余金という数字は、同社が50年以上の歴史の中で、一貫して堅実な経営を続けてきた証左です。資産の約88%が流動資産で占められており、これは受注した工事に対する売掛金や材料などの棚卸資産が中心である、設備工事業の典型的な財務構造です。今期もしっかりと利益を計上しており、浮き沈みの激しい経済環境の中でも、社会に必要とされるインフラ事業を手掛けることで、安定した収益を上げられるビジネスモデルを確立しています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)

・「情報通信」と「環境設備」の両方を手掛けることによる、強力なワンストップ提案力と事業シナジー

都築電気グループとしての高い信用力、安定した顧客基盤、全国規模のサービスネットワーク。

・50年以上の歴史で培われた、豊富な施工実績と信頼、高度な技術ノウハウ。

・熱流体解析ソフトなどを活用し、科学的根拠に基づいた付加価値の高い提案ができる技術力。

弱み (Weaknesses)

・事業の根幹を優秀な技術者に依存する労働集約型のビジネスモデルであり、人材の確保・育成が常に経営課題となる点。

・親会社やグループ企業への依存度が比較的高く、グループ外での独自の市場開拓が今後の課題となる可能性。

機会 (Opportunities)

・企業のDX推進、5G、IoTの普及に伴う、高度な情報通信インフラへの投資拡大。

カーボンニュートラルSDGsへの関心の高まりによる、省エネ・環境配慮型設備への更新需要の増加。

・高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化に伴う、リニューアル・メンテナンス市場の持続的な成長。

脅威 (Threats)

公共投資や民間設備投資など、建設・設備投資市場全体の景気変動の影響を受けやすい点。

・同業他社との価格競争の激化による収益性の低下リスク。

・世界的な半導体不足や地政学リスクによる、建設資材の価格高騰や納期遅延。

 

【今後の戦略として想像すること】
安定した事業基盤を持つ同社は、既存事業の深化と新たな価値創造の両面で成長を目指していくと考えられます。

✔短期的戦略
既存顧客との関係を深め、提供価値を最大化する「深耕戦略」が中心となるでしょう。例えば、ネットワーク設備を納入した顧客に対し、省エネ性能の高い最新の空調設備への更新を提案したり、設備の法定点検やフロンガス漏洩点検といった保守メンテナンス契約を推進したりすることで、顧客単価とLTV(生涯顧客価値)の向上を図ります。

✔中長期的戦略
「フロー型」の施工ビジネスに加え、保守・メンテナンスといった「ストック型」の安定収益をさらに拡大していくことが予想されます。また、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化支援や、IoTセンサーを活用したスマートビルの設備管理ソリューションなど、環境とデジタルを融合させた新たなサービス領域を開拓し、単なる工事会社から、顧客の経営課題を解決するソリューションパートナーへと進化していくでしょう。

 

まとめ
都築クロスサポート株式会社は、「情報通信」と「環境設備」という、現代社会において人々が快適かつ安全に活動するために不可欠なインフラを両輪で支えることで、半世紀以上にわたり安定した成長を遂げてきました。その根幹には、歴史に裏打ちされた確かな技術力と、都築電気グループとしての強固な信頼基盤があります。
社会がどのように変化しようとも、快適で安全な環境を求める人々のニーズがなくなることはありません。同社はこれからも、社会の「当たり前」を支えるという使命を胸に、着実な経営で日本のビジネスと生活の基盤を創造し続けていくことでしょう。

 

企業情報
企業名: 都築クロスサポート株式会社
所在地: 東京都品川区小山台一丁目20番20号
代表者: 清水 規之
創業: 1967年9月28日
資本金: 9,000万円
事業内容: 情報通信設備事業(電話交換設備、ネットワーク設備)、環境設備事業(空調換気設備、給排水衛生設備・消火設備)、労働者派遣事業
株主: 都築電気株式会社 (100%)

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