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#1323 決算分析 : 株式会社ポリテック・エイディディ 第50期決算 当期純利益 84百万円

私たちが暮らす街は、どのようにして形作られていくのでしょうか。駅前の再開発、新しい公園の誕生、川沿いの遊歩道整備。その背後には、未来の都市像を描き、環境との共生を考え、複雑な権利関係を調整する「計画の専門家」の存在があります。今回は、まさにその「都市と環境のデザイナー」として、日本のまちづくりを支える建設コンサルタント、株式会社ポリテック・エイディディの決算を読み解きます。設立50期という節目に、84百万円の純利益を達成した同社の知的生産力の源泉と、その事業の核心に迫ります。

20250331_50_ポリテック・エイディディ決算

決算ハイライト(令和7年3月31日現在)

資産合計: 877百万円 (約8.8億円)
負債合計: 499百万円 (約5.0億円)
純資産合計: 378百万円 (約3.8億円)
当期純利益: 84百万円 (約0.8億円)


自己資本比率: 約43%
利益剰余金: 348百万円 (約3.5億円)

 

総資産8.8億円に対し、84百万円という高い当期純利益を計上しており、知的サービスを主体とする事業の高い収益性を示しています。自己資本比率も約43%と健全であり、3.5億円近い利益剰余金は、安定した経営基盤が築かれていることの証明です。

 

企業概要

社名: 株式会社ポリテック・エイディディ
設立: 1975年5月
事業内容: 建設コンサルタント(都市及び地方計画、造園、建設環境、河川・砂防・海岸等)

www.polyadd.co.jp

 

【事業構造の徹底解剖】

同社の社名は、多様な技術(POLYTECH: Poly-technic)を、地域の開発・デザイン(ADD: Area Development Design)に反映させるという理念を表しています。その名の通り、物理的な建設を行うのではなく、その前段階の「計画」「調査」「設計」「調整」といった頭脳労働を担う専門家集団です。事業の主な顧客は、国や都道府県、市区町村といった官公庁であり、公共性の高いプロジェクトを支えています。

✔都市・造景計画、再開発計画:
事業の柱の一つは、未来のまちの青写真を描くことです。市区町村の総合計画や都市マスタープランの策定支援から、駅前広場の再開発、老朽化した住宅団地の共同建替事業のコンサルティングまで、多岐にわたります。特に、権利者が多く複雑な調整を要する市街地再開発事業において、準備組合の設立支援から事業計画、権利変換計画の策身まで、専門知識を駆使して事業の推進をサポートします。

✔環境計画・生物多様性:
同社のもう一つの大きな柱が「環境」です。大規模開発に伴う環境アセスメント(環境影響評価)はもちろん、再生可能エネルギーの導入計画、公園の「かいぼり」に代表されるビオトープ(生物生息空間)の保全・再生計画、外来生物の駆除計画など、生物多様性保全に深く貢献しています。都市開発と環境保全という、時に相反する要素を両立させる知見は、同社の大きな強みです。

✔海外プロジェクト:
国内で培ったノウハウを活かし、JICA(国際協力機構)の業務支援など、海外の都市開発や環境分野のプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。

 

【財務状況等から見る経営戦略】

✔外部環境:
建設コンサルタントの市場は、公共事業の動向に大きく左右されます。近年のトレンドである「都市再生・地方創生」「国土強靭化」「脱炭素社会の実現」「生物多様性保全」といった国の大きな方針は、すべて同社の事業領域と直結しており、安定した事業機会を生み出しています。

✔内部環境(好業績の要因):
84百万円という高い利益は、同社が公共事業の入札などで安定的に受注を獲得し、プロジェクトを堅実に遂行している証です。その強さの源泉は「人」にあります。技術士一級建築士、再開発プランナー、環境アセスメント士といった多岐にわたる分野の専門家を多数擁し、複合的で難易度の高い課題に対応できる組織力が、顧客である官公庁からの高い信頼につながっています。ウェブサイトに掲載された膨大な業務経歴一覧が、その実績と信頼を何よりも雄弁に物語っています。

✔安定性分析:
自己資本比率約43%という財務内容は、知識集約型産業であるコンサルタント業として非常に健全です。大規模な工場設備などを必要としないため、比較的スリムな資産構成でありながら、約3.5億円の利益剰余金を確保している点は、突発的な外部環境の変化にも耐えうる経営体力を示しています。

 

SWOT分析で見る事業環境】

強み (Strengths)
・「都市」と「環境」という2大テーマに関する、半世紀近い歴史で培われた高度な専門知識と実績。
・官公庁を主要顧客とする、安定した事業基盤と高い参入障壁。
・多様な分野の有資格者が集う、総合的な課題解決能力を持つ人材力。
・健全な財務体質と、安定した収益性。

弱み (Weaknesses)
・事業が公共事業に大きく依存するため、国の予算や政策の変更に影響を受けやすい。
・専門性の高い人材の確保と育成が、事業継続の生命線となる点。

機会 (Opportunities)
・全国各地で進行する都市の再開発や、インフラの老朽化対策に伴う、コンサルティング需要の増大。
カーボンニュートラル生物多様性保全といった、環境関連市場の拡大。
・防災・減災や、スマートシティ化など、新たな社会課題に対応する新規業務の創出。

脅威 (Threats)
・公共事業費の削減リスク。
・同業の建設コンサルタントとの、専門人材の獲得を含めた競争の激化。

 

【今後の戦略として想像すること】

持続可能な社会形成に貢献するという理念のもと、同社はどのような未来を描くのでしょうか。

✔短期的戦略:
得意分野である市街地再開発や環境アセスメントにおいて、これまでの実績を武器に受注を重ね、安定した経営基盤をさらに強化していくことが基本戦略となります。また、「えるぼし認定(3段階目)」を受けている強みを活かし、女性活躍推進を重視する公共事業案件で優位性を発揮していくでしょう。

✔中長期的戦略:
長期的には、既存の技術領域を深化させることが重要になります。例えば、都市計画にデジタルツイン技術を導入する支援や、気候変動に適応するための防災・減災計画、ネイチャー・ポジティブ(生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる)に貢献する都市デザインなど、時代の一歩先を行く提案力が求められます。海外プロジェクトの経験を国内にフィードバックし、グローバルな視点でのコンサルティング能力を高めていくことも、持続的な成長の鍵となるでしょう。

 

まとめ

株式会社ポリテック・エイディディは、建物を建てるのではなく、私たちが暮らす「まちの未来」そのものを計画・デザインする、知のプロフェッショナル集団です。その事業は、一見すると地味かもしれませんが、持続可能で豊かな社会を形成するためには不可欠な役割を担っています。
設立50期を経て達成した84百万円の純利益は、同社が提供する知的サービスの価値の高さと、社会からの揺るぎない信頼を明確に示しています。これからも、「都市」と「環境」の専門家として、日本の未来づくりに貢献し続けてくれることでしょう。

 

企業情報

企業名: 株式会社ポリテック・エイディディ
所在地: 東京都中央区新富1-18-8 RBM築地スクエア3F
代表者: 代表取締役社長 望月 宣典
設立: 1975年5月
資本金: 3,000万円
事業内容: 建設コンサルタント(都市及び地方計画部門、造園部門、建設環境部門、河川、砂防及び海岸・海洋部門)、一級建築士事務所

www.polyadd.co.jp

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