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#1301 決算分析 : 株式会社アンパスィ 第43期決算 当期純利益 ▲99百万円

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今平周吾、松田鈴英、櫻井心那――。多くのトッププロゴルファーが身にまとい、グリーン上で華やかに躍動するゴルフウェアブランド「and per se(アンパスィ)」。その運営会社が今、大きな変革の時を迎えています。同社は長年、名門ゴルフウェア「ブラック&ホワイト」のライセンス事業を柱としてきましたが、2024年末にその契約が終了。2025年1月、「株式会社アンパスィ」として社名を変更し、自社ブランド一本で再出発を切りました。その変革の渦中で発表された第43期決算は、債務超過、そして約99百万円の当期純損失という厳しい現実を映し出しています。今回は、この大きな決断の裏側と、親会社ゴールドウインの支えのもと、新たなスタートを切った同社の再起への道のりを徹底的に分析します。

20250331_43_アンパスィ決算

決算ハイライト(第43期)
資産合計: 1,304百万円 (約13.0億円)
負債合計: 1,571百万円 (約15.7億円)
純資産合計: ▲290百万円 (約2.9億円の債務超過)
当期純損失: 99百万円 (約1.0億円の当期純損失)


自己資本比率: ▲22.2%
利益剰余金: ▲335百万円 (約3.4億円の繰越損失)

 

今回の決算で最も重要な点は、純資産の部がマイナス、すなわち「債務超過」に陥っていることです。これは、会社の負債が資産を上回っている状態を示します。また、当期純利益も約99百万円の損失を計上し、利益剰余金もマイナス(繰越損失)となっています。この厳しい財務状況は、後述する長年の主力事業であった「ブラック&ホワイト」のライセンス契約終了に伴う、事業構造の抜本的な転換が大きく影響していると推測されます。まさに、同社が「第二の創業期」の痛みを経験していることの証左です。

 

企業概要
社名: 株式会社アンパスィ
設立: 1983年7月
株主: 株式会社ゴールドウイン
業務内容: ゴルフ及びライフスタイルへ向けた衣類、装飾品の企画、製造、販売

www.andperse.com

 

【事業構造の徹底解剖】
株式会社アンパスィの現在は、その劇的な事業転換の歴史を理解することが不可欠です。

✔大きな転換点:「ブラック&ホワイト」との別れ
同社の前身は「ブラック&ホワイトスポーツウエア株式会社」であり、1980年代から40年以上にわたり、スコッチウイスキーのテリア犬ロゴで知られる名門ゴルフウェア「ブラック&ホワイト」のライセンス製造・販売を手掛けてきました。これは同社の事業の根幹であり、長年の安定した収益源でした。しかし、2024年12月をもってそのライセンス契約が終了。これは、会社のアイデンティティそのものを変えるほどの、極めて大きな事業転換です。

✔未来を託す自社ブランド「and per se(アンパスィ)」
「ブラック&ホワイト」に代わり、今後の事業の全てを担うのが、2011年に立ち上げられたオリジナルブランド「アンパスィ」です。ラテン語で“&”を意味する言葉を語源とし、「異なる二つのものを繋ぎあわせることで、想像以上の楽しさを」というコンセプトを掲げています。ゴルフのパフォーマンスに不可欠な「機能性」と、グリーンに映える洗練された「デザイン性」を高いレベルで融合。今平周吾プロをはじめとする多くのトップアスリートをサポートすることで、その価値を高めてきました。今、このブランドが、会社の未来の全てをその双肩に担っています。

✔最強のバックボーン「ゴールドウイングループ」
この困難な事業転換期において、同社の最大の支えとなっているのが、親会社である株式会社ゴールドウインの存在です。「THE NORTH FACE」などを手掛ける国内屈指のアパレル企業であるゴールドウインのグループの一員であることは、財務的な支援はもちろん、生産、物流、マーケティング、研究開発といったあらゆる面で、計り知れないシナジーと安定性をもたらします。

 

【財務状況等から見る経営戦略】
債務超過」と「当期純損失」という数字は、事業転換に伴う「産みの苦しみ」を色濃く反映しています。

✔外部環境: 
日本のゴルフ市場は、コロナ禍を経て若者や女性といった新たな層を取り込み、堅調に推移しています。特にゴルフウェアにおいては、従来のクラシックなスタイルだけでなく、機能的で、かつ日常でも着用できるような、アスレジャーライクなデザインへの需要が高まっています。これは、「機能と感性の融合」を掲げるアンパスィにとって、大きな追い風となる市場環境です。

✔内部環境と財務分析:
今回の損失計上や債務超過は、ライセンス契約終了に伴う一時的なコストが大きく影響していると考えられます。例えば、旧ブランドの最終在庫の処分損、新ブランド「アンパスィ」への集中を告知するためのマーケティング投資、店舗のリニューアル費用などが考えられます。
通常の独立企業であれば、債務超過は即座に経営危機に繋がる危険信号です。しかし、同社の場合は状況が異なります。親会社であるゴールドウインにとって、アンパスィはゴルフカテゴリーにおける重要な戦略的ブランドです。この事業転換は、グループ全体の戦略の一環として行われているものであり、一時的な財務悪化は織り込み済みで、ゴールドウインによる強力な財務支援体制が敷かれていると見るのが妥当です。安定性という点では、親会社の存在が最大の担保となっています。

 

SWOT分析で見る事業環境】
強み (Strengths)

・親会社ゴールドウインの強力な経営基盤、開発力、ブランド力によるバックアップ。

・今平周吾プロを筆頭とする、トッププロゴルファーとの契約による高い製品訴求力とブランド認知度。

・「機能とデザインの融合」という、現代のゴルファーのニーズに合致した明確なブランドコンセプト。

・長年のアパレル事業で培った、企画・製造・販売のノウハウ。

弱み (Weaknesses)

債務超過という、現在の脆弱な財務状況。

・事業の柱が「アンパスィ」という単一ブランドに集中しており、リスク分散が難しい。

・長年親しまれてきた「ブラック&ホワイト」ブランドの顧客を、完全に引き継げるかという課題。

機会 (Opportunities)

・ライセンスの制約から解放され、自社ブランド「アンパスィ」のコンセプトを100%追求できる自由度の獲得。

・ゴルフ市場における、アスレジャーや高機能ウェアへのトレンドシフト。

・親会社のリソースを活用した、新たな素材開発や海外展開の可能性。

・若年層や女性ゴルファーなど、新たな顧客層の開拓。

脅威 (Threats)

・国内外の多数のブランドがひしめく、ゴルフアパレル市場における熾烈な競争。

・景気後退による、高価格帯であるゴルフウェアへの消費マインドの低下。

・「アンパスィ」ブランドが、旧事業の売上規模をカバーできずに、赤字が定着化するリスク。

 

【今後の戦略として想像すること】
大きな岐路に立つアンパスィ。その再起への道のりは、ブランド価値の最大化に集約されます。

✔短期的戦略:
まずは、新生「アンパスィ」のブランドイメージを市場に強く浸透させることが最優先課題です。契約プロの活躍を最大限に活用したマーケティングSNSやデジタルコンテンツを通じた情報発信を強化し、旧ブランドからの顧客の移行と、新規顧客の獲得を加速させるでしょう。同時に、旧事業に関わるコストを整理し、徹底した損益管理で、一日も早い単年度黒字化を目指します。

✔中長期的戦略:
「アンパスィ」ブランドの基盤が固まった後は、その世界観を拡張していくフェーズに入ります。ゴルフシーンに留まらない、日常でも着られるライフスタイルウェアのラインナップを拡充し、ブランドの裾野を広げていくことが考えられます。また、親会社ゴールドウインが持つグローバルな販売網を活用し、アジア、北米、欧州といった海外市場への本格的な展開も視野に入ってくるでしょう。数年かけて収益性を改善し、最終的には自己資本をプラスに転換させ、名実ともに自立したブランドとして成長していくことが、中長期的な目標となります。

 

まとめ
株式会社アンパスィは今、40年以上続いた「ライセンスブランド」という安定した船を降り、自らの名を冠した「オリジナルブランド」という新たな船で、未知なる大海原へと漕ぎ出したばかりです。決算書に刻まれた「債務超過」や「当期純損失」という数字は、その船出の厳しさを物語っています。しかし、その手には、トッププロが認める製品力、明確なブランドコンセプト、そして何よりも「ゴールドウイン」という強力な羅針盤とエンジンがあります。この大きな試練を乗り越えた時、アンパスィは、日本のゴルフアパレル界を代表する、より強く、より輝かしいブランドへと生まれ変わっているに違いありません。

 

企業情報
企業名: 株式会社アンパスィ
所在地: 東京都千代田区飯田橋1-5-10 教販九段ビル4F
代表者: 代表取締役社長 古塩 和秀
設立: 1983年7月
資本金: 4,500万円
株主: 株式会社ゴールドウイン
業務内容: ゴルフ及びライフスタイルへ向けた衣類、装飾品の企画、製造、販売

www.andperse.com

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