決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に収集・コメントし保管する倉庫。あくまで自分用であり、引用する決算公告を除き内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。

#1223 決算分析 : 株式会社アバンアソシエイツ 第39期決算 当期純利益 1百万円

スマートシティ、地方創生、エリアマネジメント、そして防災。現代の日本が直面する、複雑で多岐にわたる「まちづくり」の課題。これらの課題に対し、単なる調査や提言に留まらず、具体的なプロジェクトとして実現まで導く「Think & Do Tank」として、国内外で数多くの実績を積み上げてきたプロフェッショナル集団があります。それが、スーパーゼネコン鹿島建設を株主にもつ、株式会社アバンアソシエイツです。創立から40年近く、都市計画の最上流から関わり続けてきた同社の第39期決算が公開されました。今回は、その決算内容を読み解き、自己資本比率68%という鉄壁の財務基盤の秘密と、これからの日本の都市・地域をデザインする、その仕事の神髄に迫ります。

20250331_39_アバンアソシエイツ決算

決算ハイライト(第39期)

資産合計: 153百万円 (約1.5億円)
負債合計: 49百万円 (約0.5億円)
純資産合計: 104百万円 (約1.0億円)
当期純利益: 1百万円 (約0百万円)


自己資本比率: 約68.0%
利益剰余金: 22百万円 (約0.2億円)

 

まず注目すべきは、自己資本比率が68.0%という、極めて高い水準にあることです。企業の財務が非常に健全であり、安定した経営基盤が確立されていることを示しています。当期の純利益は1百万円と小幅ながらも黒字を確保しており、着実な経営が行われていることがうかがえます。資産規模は約1.5億円と比較的コンパクトですが、これは同社が物理的な資産ではなく、専門知識やノウハウ、人的ネットワークといった「知的資本」を事業の源泉としていることの表れです。

 

企業概要

社名: 株式会社アバンアソシエイツ
設立: 1986年8月5日
株主: 鹿島建設株式会社
事業内容: 都市計画、地域開発、市街地再開発等に関する調査・企画・設計・監理、及びコンサルティング業務

www.avant-a.jp

 

【事業構造の徹底解剖】

同社の最大の特長は、自らを「Think & Do Tank」と位置づけている点にあります。これは、単に調査・分析・提言を行う「シンクタンク」機能と、具体的なプロジェクトを前に進める「プロジェクトマネジメント」機能を併せ持つことを意味します。

✔事業領域:まちづくりの「最上流」を担う
同社の仕事は、建物を一つ建てる、道を一本造るといった個別の事業に留まりません。その地域が将来どのような姿になるべきか、どのような産業を育て、どうやって人を呼び込むか、といった、まちづくり全体の「構想」を描く、最も上流の段階から関わります。その構想を実現するために、調査研究、政策提言、情報発信、そしてプロジェクトマネジメントという4つのアクションを駆使し、新たな価値を創造していきます。

✔多彩なソリューションテーマ:現代社会の課題への挑戦
同社が取り組むテーマは、現代社会が抱える課題そのものです。

1.地方創生・SDGs

人口減少に直面する地方において、その地域の特性を活かした魅力あるまちづくりを提案し、事業化を支援します。リニア中央新幹線の新駅周辺のまちづくり(長野県伊那谷)など、国家的なプロジェクトにも深く関与しています。

2.スマートシティ

鹿島建設が手掛ける「羽田イノベーションシティ」に推進事務局として参画するなど、都市型の最先端スマートシティから、北海道鹿追町でのバイオガスを活用した地方型スマートシティまで、多様な実績を持ちます。

3.エリアマネジメント

建物(ハード)を整備するだけでなく、そのエリアの価値を持続的に高めていくための活動(ソフト)を企画・実践します。清掃活動や防災訓練、イベントの開催などを通じて、地域コミュニティを醸成し、魅力ある街を育てていきます。

4.防災、官民連携(PPP/PRE)、次世代交通システム

その他にも、激甚化する災害への対策、財政が厳しい自治体における官民連携プロジェクトの組成、LRTや自動運転といった次世代交通システムと連携したまちづくりなど、極めて専門的かつ社会貢献性の高い分野で、その知見を発揮しています。

 

【財務状況等から見る経営戦略】

✔外部環境
人口減少、インフラの老朽化、自然災害の激甚化、そしてDXやGX(グリーン・トランスフォーメーション)への対応など、日本の都市・地域が抱える課題はますます複雑化・多様化しています。こうした課題は、行政だけでは解決が困難であり、民間企業の知見や活力を活用する「官民連携」の重要性が高まっています。この流れは、まさに同社のような、官民双方の言語を理解し、両者をつなぐことができる専門家集団にとって、大きな事業機会となっています。

✔内部環境:鹿島建設グループの「羅針盤
同社は、スーパーゼネコンである鹿島建設を株主に持つことで、絶大な信用力と安定した事業基盤を得ています。鹿島建設が手掛ける大規模プロジェクトにおいて、企画・構想段階から参画し、事業全体の方向性を定める「羅針盤」のような役割を担うことができます。また、グループ内外の様々な専門家との幅広いネットワークを活かし、最適なチームを組成して課題解決にあたることができるのも、大きな強みです。

✔安定性分析
自己資本比率68.0%という数字は、同社の経営がいかに安定しているかを物語っています。借入金に頼らない健全な財務運営により、目先の収益に左右されることなく、数年、数十年単位の長期的な視点が不可欠な「まちづくり」という事業に、じっくりと腰を据えて取り組むことが可能です。この財務的な安定性が、クライアントである自治体や企業からの信頼にも繋がっています。

 

SWOT分析で見る事業環境】

強み (Strengths)

・「Think & Do Tank」として、構想から実現までを一気通貫で支援できる総合力。

鹿島建設グループの一員であることによる、圧倒的な信用力、情報力、そして大規模プロジェクトへの参画機会。

・地方創生、スマートシティ、エリアマネジメントなど、現代的な都市課題に関する豊富な実績と専門知識。

自己資本比率68%という、極めて健全で安定した財務基盤。

弱み (Weaknesses)

コンサルティング事業の特性上、属人的なスキルに依存する部分が大きく、優秀な人材の確保・育成が常に課題となる。

・親会社である鹿島建設の経営方針や事業戦略に、業績が影響を受ける可能性がある。

機会 (Opportunities)

・官民連携(PPP/PFI)市場の拡大と、複雑なプロジェクトをマネジメントできる専門家への需要増加。

・国土強靭化や防災・減災、インフラ老朽化対策といった、継続的な社会インフラ投資。

・企業のESG経営やSDGsへの関心の高まりに伴う、サステナブルな地域開発へのコンサルティング需要。

脅威 (Threats)

・景気後退による、公共事業や民間設備投資の大幅な削減。

・大手総合コンサルティングファームや、他の建設コンサルタントとの競争激化。

・人口減少の加速による、地方における開発プロジェクト自体の減少。

・コンセプト倒れで十分な効果検証が行われず、存在価値そのものが陳腐化する可能性。

 

【今後の戦略として想像すること】

今後、同社は「まちづくり」の概念をさらに拡張し、新たな価値創造に挑戦していくでしょう。

✔短期的戦略
これまでの実績で培ったノウハウを、より体系化・パッケージ化し、様々な自治体や企業に横展開できるようなソリューションとして提供していくことが考えられます。特に、成功事例がまだ少ないスマートシティやエリアマネジメントの分野では、同社の知見は大きな価値を持つはずです。

✔中長期的戦略
長期的には、単なるコンサルタントやプロジェクトマネージャーに留まらず、自らが事業主体の一部となって地域事業に参画する、「デベロッパー型コンサルタント」へと進化していく可能性があります。例えば、鹿島建設や地域の事業者と共に特別目的会社(SPC)を設立し、再生可能エネルギー事業や観光事業などを立ち上げ、その運営までを担うといった形です。これにより、コンサルティングフィーだけでなく、事業そのものからの収益を得ることができ、より持続可能なビジネスモデルを構築できるでしょう。

 

まとめ

株式会社アバンアソシエイツは、地図に描かれた未来を、現実の街の姿へと変えていく、稀有な専門家集団です。その仕事は、決して表舞台で脚光を浴びるものではありませんが、私たちが暮らし、働く街の質を決定づける、極めて重要な役割を担っています。68%という高い自己資本比率が示す鉄壁の財務基盤は、長期的な視点で社会と向き合うという、同社の誠実な企業姿勢の表れに他なりません。これからも、鹿島建設グループの「知恵袋」として、そして日本の未来をデザインする「Think & Do Tank」として、複雑化する社会課題に挑み続けてくれることを期待します。

 

企業情報

企業名: 株式会社アバンアソシエイツ
所在地: 東京都港区赤坂3-11-3 赤坂中川ビルディング3階
代表者: 代表取締役社長 清代 整
設立: 1986年8月5日
資本金: 50百万円
事業内容: 都市計画、地域開発、土地利用等の調査・企画・設計・監理、市街地再開発事業の支援、及び関連するコンサルタント業務など
株主: 鹿島建設株式会社

www.avant-a.jp

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.