昭和13年(1938年)の創業以来、80年以上にわたり北海道・道南地区の産業と医療を支え続けてきた函館酸素株式会社。地域唯一の酸素・窒素メーカーとして、また産業ガス国内最大手「大陽日酸グループ」の中核企業として、地域社会に不可欠なインフラを担う同社の第137期(2025年3月期)決算公告が2025年6月16日に掲載されました。その盤石な財務内容から、地域と共に歩む企業の強さと未来への展望を読み解きます。 ![]()

第137期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 5,164 (約51.6億円)
負債合計: 1,506 (約15.1億円)
純資産合計: 3,658 (約36.6億円)
当期純利益: 235 (約2.4億円)
今回の決算では、235百万円の当期純利益を計上し、安定した収益力を示しました。特筆すべきは、その傑出して強固な財務基盤です。総資産約51.6億円に対し、純資産が約36.6億円を占め、自己資本比率は約70.8% という極めて高い水準にあります。3,628百万円(約36.3億円)にものぼる利益剰余金は、長年にわたる健全経営の歴史と、地域からの厚い信頼を物語っています。
事業内容と今後の展望(考察)
【事業内容の概要】
函館酸素の事業は、単なるガスメーカーに留まりません。産業と医療の現場で必要とされる製品・サービスを幅広く提供する「総合サプライヤー」として、地域経済を根底から支えています。
高圧ガス事業:
道南地区唯一の酸素・窒素メーカーとして、鉄鋼・造船・建設といった基幹産業から、食品、農業、水産、そして医療の現場まで、現代社会に不可欠な「産業の血液」ともいえる各種高圧ガスを製造し、安全・安定的に供給しています。
産業機器・資材事業:
高圧ガスを利用する現場で必ず必要となる、溶接・溶断機器やその材料、労働安全衛生保護具、消火器といった関連商品を幅広く取り扱っています。
医療関連事業:
病院内で使用される医療用ガスの供給はもちろんのこと、高齢化社会のニーズに応える在宅医療ビジネスも展開。医療機器や医療用品の販売・レンタル・修理までを手掛け、地域医療に深く貢献しています。
エンジニアリング事業:
専門知識を活かし、病院や工場の高圧ガス設備・配管工事、各種機械器具の設置工事など、ハード面でのソリューションも提供しています。
【財務状況と今後の展望・課題】
今期2.4億円の純利益を計上し、自己資本比率70%超という鉄壁の財務基盤を持つ函館酸素。この強さの背景には、地域に根ざした事業構造と、大陽日酸グループという強力なバックボーンがあります。
【強みと機会】
地域インフラとしての圧倒的ポジション:
「道南地区唯一の酸素・窒素メーカー」という地位は、極めて強力な参入障壁を持つ事業基盤です。地域の産業や医療にとって、同社は代替の難しい「ライフライン」であり、これが景気変動に強い安定した収益を生み出しています。
大陽日酸グループの総合力:
国内最大の産業ガスメーカーである大陽日酸グループの一員であることは、大きな強みです。最新のガス応用技術や、グローバルなネットワークを活かした製品調達、高度な技術情報へのアクセスが可能となり、地域企業でありながら全国トップレベルの競争力を維持することができます。
医療・介護分野の成長性:
高齢化の進展は、医療用酸素の需要をますます高めます。特に、同社が早くから取り組んでいる在宅医療分野は、国の医療政策の後押しもあり、今後も安定した成長が見込まれる市場です。
北海道の産業との親和性:
同社の高圧ガスは、北海道の基幹産業と密接に結びついています。食品の鮮度保持(窒素充填)、水産養殖(酸素供給)、農業施設の暖房(LPG)、公共事業や民間設備投資に伴う建設・造船(溶接ガス)など、地域の産業が元気であることが、そのまま同社の成長機会につながります。
【課題とリスク】
安全・安定供給という使命: 高圧ガスは、一歩間違えれば大事故につながる危険物です。保安体制の維持・強化と、従業員への安全教育の徹底は、企業の存続に関わる最重要課題です。また、地震や停電といった自然災害時にも供給を止めないための事業継続計画(BCP)の重要性も増しています。
コスト管理:
ガスの製造プラントは大量の電力を消費するため、昨今の電気料金の高騰は製造コストに直接的な影響を与えます。省エネ設備の導入や生産効率の改善といった継続的なコスト管理が求められます。また、プラント設備の維持・更新には多額の投資が必要であり、計画的な資金計画が不可欠です。
地域経済への依存:
地域密着は強みであると同時に、道南地区の経済や人口の動向に業績が左右されるという側面も持ちます。札幌営業所を拠点とした道央圏への事業展開は、リスク分散と新たな成長機会の獲得という点で重要な戦略となります。
企業理念に「高圧ガスメーカーとしての使命と誇り」「進取の気概」を掲げる函館酸素。その言葉通り、80年以上の歴史の中で、地域に不可欠なインフラ企業としての責任を果たしつつ、在宅医療など新たな事業にも挑戦してきました。大陽日酸グループの総合力と、地域に深く根ざした顧客との信頼関係を両輪に、これからも函館・道南、そして北海道全体の産業と医療の発展を支える「縁の下の力持ち」として、社会に貢献し続けていくことでしょう。
企業情報
企業名: 函館酸素株式会社
所在地: 北海道函館市浅野町1番3号
代表者: 綿引 秀幸
事業内容: 大陽日酸グループの一員として、道南地区を基盤に高圧ガスの製造・販売を行う。産業用機械、医療用機器、設備工事なども手掛け、産業と医療の現場を総合的にサポートする。