「いつでも、どこでも、セキュアに繋がる」――あらゆるモノがインターネットに繋がるIoT時代において、この当たり前を支えることは、社会の根幹を支えることと同義です。株式会社IPモーションは、「地上波(モバイル通信網)」と「宇宙(衛星通信)」の両面から、法人や社会インフラの特殊な通信ニーズに応えるICTソリューション企業。IMAGICA GROUPの一員でもある同社の第28期(令和7年3月31日現在)の決算公告が、令和7年6月16日付の官報に掲載されました。その好調な業績と、ニッチながらも社会に不可欠な事業の強み、今後の成長戦略を分析します。 ![]()

第28期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 1,450 (約14.5億円)
負債合計: 731 (約7.3億円)
純資産合計: 719 (約7.2億円)
当期純利益: 121 (約1.2億円)
今回の決算では、当期純利益として121百万円を計上。利益剰余金も約6.7億円と、資本金(50百万円)の13倍以上に積み上がっており、安定した高収益体質を確立しています。自己資本比率も約49.6%と健全であり、着実な経営が行われていることがうかがえます。
事業内容と今後の展望(考察)
【事業内容の概要】
株式会社IPモーションは、1997年に日本航空の情報システム部OBによって設立されたというユニークな経緯を持つICTソリューション企業です。現在は、映像技術に強みを持つIMAGICA GROUPおよび株式会社フォトロンの傘下で、その専門性を発揮しています。
MVNOソリューション事業:
大手通信キャリアのモバイル通信網を借り受け、法人向けに独自の通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)です。特に、外部のインターネットから隔離された「閉域SIM」を用いたセキュアなリモート監視・操作サービスなど、高いセキュリティが求められる分野で強みを発揮しています。
Globalstar 衛星通信ソリューション:
米国の衛星通信大手Globalstar社と合弁会社「株式会社Globalstar Japan」を設立。携帯電話の電波が届かない山間部や海上、そして大規模災害時でも通信を確保できる、衛星携帯電話や衛星IoTサービスを提供しています。
システムインテグレーション事業:
企業のニーズに合わせ、Wi-Fi環境の設計・構築(Ruckus製品)、LAN・電源工事、サーバールームの構築から、ネットワークの24時間365日監視・保守、技術者派遣まで、ICTインフラをトータルでサポートしています。
【財務状況と今後の展望・課題】
第28期決算で示された高い収益性と健全な財務基盤は、同社が「通信」という巨大市場の中で、独自のニッチトップ戦略を成功させていることを物語っています。貸借対照表では、資産の約97.6%が流動資産であり、固定資産をほとんど持たない「アセットライト」な経営モデルであることがわかります。これは、同社の価値の源泉が、工場や設備ではなく、高度な技術力と顧客ニーズに応えるサービス、そしてそれを支える「人材」にあることを示しています。
IPモーション社の最大の強みは、「地上波(MVNO)」と「宇宙(衛星通信)」という2つの通信手段をハイブリッドで提供できる点にあります。
あらゆる場所をカバーする通信網:
都市部ではセキュアで安価なMVNOサービスを、山間部のインフラ監視や、洋上の船舶、災害時のバックアップ回線としては衛星通信を。このように、顧客の利用シーンに合わせて最適な通信手段をワンストップで提案・提供できる企業は非常に稀であり、これが強力な競争優位性となっています。
社会インフラを支える実績:
国土交通省の河川監視用データ通信サービスや、大手キャリアの通信設備の保守業務など、高い信頼性と安定性が求められる分野での豊富な実績が、顧客からの信頼の基盤となっています。
親会社であるフォトロンは放送・映像システムのプロフェッショナルです。その関係性を活かし、放送局向けのシステム保守業務を受託するなど、グループ内でのシナジーを着実に生み出しています。
IoTやDX化の流れが加速する中、同社の事業領域は今後さらに拡大していくことが予想されます。
1.IoT/M2M市場での成長
工場の機械監視、建設現場の遠隔管理、農業分野でのセンサーネットワーク、物流トラックの動態管理など、あらゆるモノが通信するIoT/M2M市場は、同社のセキュアなMVNOサービスや、エリアを問わない衛星IoTソリューションにとって、まさに主戦場です。この分野でのソリューション提供を強化することで、大きな成長が期待できます。
2.災害対策・BCPソリューションの強化
近年、自然災害の激甚化や地政学リスクの高まりを受け、企業のBCP(事業継続計画)や自治体の防災対策において、通信インフラの冗長化は最重要課題の一つです。地上波の通信網が途絶しても通信を確保できる衛星通信は、この分野で不可欠なソリューションであり、需要はますます高まっていくでしょう。
3.ローカル5G/プライベート5Gへの展開
特定の工場や施設、敷地内だけで利用できる、高速・大容量・低遅延なプライベートネットワーク「ローカル5G」の構築・運用サービスは、同社が持つネットワークインテグレーションの知見と、法人向け通信サービスのノウハウを活かせる、親和性の高い新規事業領域です。
株式会社IPモーションは、「繋がらない」という社会や企業の課題を、ニッチで高度な技術力をもって解決する、まさに現代に不可欠なICTパートナーです。「感動と驚きを与える会社でありたい」という理念のもと、これからも日本の通信インフラを、目には見えない場所から力強く支え続けていくに違いありません。
企業情報
企業名: 株式会社IPモーション
所在地: 東京都港区芝浦1-3-3 浜松町ライズスクエア6階
代表者: 安藤 浩
事業内容: IMAGICA GROUPの株式会社フォトロンを親会社に持つICTソリューション企業。法人向けMVNOサービス、衛星通信サービス(Globalstar)、Wi-Fi構築、ネットワークインテグレーション、BPOなどをワンストップで提供する。