決算公告データ倉庫

いつか、なにかに役立つかもしれない決算公告データを自分用に収集しストックしている倉庫です。自分用のため網羅的ではありませんが、気になる業界・企業等を検索してみてください!なお、引用する決算公告を除いた記事本文の正確性/真実性は保証できません。

#964 株式会社ピーチ・ジョン 第32期決算 当期純利益 ▲190百万円

「元気・ハッピー・セクシー」をコンセプトに、デザイン性と機能性を兼ね備えたランジェリーで女性から絶大な支持を得る、株式会社ピーチ・ジョン。国内下着最大手ワコールホールディングスの中核企業でもある同社の第32期(令和7年3月31日現在)の決算公告が、令和7年5月28日付の官報に掲載されました。今回の決算内容と、ライフスタイルブランドとして進化を続ける同社の現在地、そして未来への戦略を分析します。 

20250331_32_ピーチ・ジョン決算

第32期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 8,790 (約87.9億円)
負債合計: 919 (約9.2億円)
純資産合計: 7,871 (約78.7億円)
当期純損失: 190 (約1.9億円)


今回の決算では、当期純損失として190百万円が計上されました。一方で、特筆すべきはその財務基盤の圧倒的な強固さです。純資産は約78.7億円、中でも利益剰余金が約77.8億円と巨額に積み上がっており、自己資本比率は驚異の約89.5%に達しています。このことから、今回の損失はすぐに経営の根幹を揺るがすものではなく、EC強化や新規ブランドへの投資といった戦略的なコスト先行、あるいは円安による仕入価格の高騰といった外部環境の変化による一時的な影響である可能性が高いと推察されます。

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
株式会社ピーチ・ジョンは、1994年に輸入下着の通信販売会社としてスタートして以来、常に時代の半歩先を行く商品とプロモーションで、日本のランジェリー市場を牽引してきました。現在は、ワコールホールディングスの一員として、その事業領域を広げています。

 

インナーウェア・アパレル事業:

「ナイスバディブラ」「ミラクルブラ」といったヒット商品を次々と生み出すランジェリーを中核に、ルームウェア、アパレル、水着まで、女性のライフスタイルをトータルで彩るアイテムを展開しています。


マルチブランド戦略:

PEACH JOHN

トレンド感と機能性を両立させたメインブランド。

・SALON by PEACH JOHN

より上質で洗練されたデザインを好む大人の女性に向けたブランド。

・GiRLS by PEACH JOHN

「カワイイ」を求めるティーンの気持ちに寄り添う、手に取りやすい価格帯のブランド。


オムニチャネル展開:

伝説的なカタログ通販から始まり、現在は公式オンラインストアと全国の直営店舗、ZOZOTOWNなどの外部ECサイトをシームレスに連携。Webで気になった商品を店舗で試着できる「WEBで選んでストアでお試し」サービスなど、顧客の利便性を追求しています。


グローバル展開:

香港、台湾にも直営店を持ち、アジア市場でのブランド展開も行っています。


【財務状況と今後の展望・課題】
第32期決算で損失を計上したものの、約89.5%という鉄壁の自己資本比率は、同社がこれまでに築き上げてきたブランド力と収益力の高さを物語っています。この強固な財務基盤は、変化の激しいアパレル業界において、次なる一手を打つための大きなアドバンテージとなります。

 

ピーチ・ジョンが長年にわたり顧客を魅了し続ける強みは、以下の点にあります。

圧倒的なブランド力と企画力

「PJ」の愛称で親しまれ、その世界観は多くの女性にとって憧れの対象です。毎シーズンの新作や話題のコラボレーションは常に注目を集め、機能性にキャッチーなネーミングを掛け合わせたヒット商品開発力は、他の追随を許しません。


ワコールグループのシナジー

親会社であるワコールは、日本人女性の体型に関する膨大なデータと、人間科学に基づいた研究開発力を有しています。ピーチ・ジョンの持つトレンドを捉える感性と、ワコールの持つ科学的知見や高品質な生産背景を融合させることで、唯一無二の価値を創造できます。


時代を捉える巧みなプロモーション

創業期の斬新なカタログ表現から、テレビCM、そして現在のインフルエンサーSNSを活用したデジタルマーケティングまで、常に時代に合った手法で顧客とのコミュニケーションを図り、ブランドの鮮度を保ち続けています。


今後の成長戦略としては、このブランド力と財務基盤を活かし、「顧客体験」を軸とした事業の深化が進むと考えられます。

1.OMO(Online Merges with Offline)の加速

オンラインと店舗の境界線をなくし、顧客がいつでもどこでも、自分に合った方法で商品を検討・購入できる体験を強化していくでしょう。店舗でのパーソナルな接客データのオンライン活用や、オンライン上でのバーチャルフィッティングなど、新しい購買体験の提供が鍵となります。


2.顧客のライフステージに寄り添うブランド戦略

PEACH JOHN、SALON by PEACH JOHN、GiRLS by PEACH JOHNという3つのブランドを通じて、ティーンから大人の女性まで、顧客の年齢やライフステージの変化に寄り添い、生涯にわたってファンでいてもらうためのアプローチを強化していきます。


3.アジア市場への再注力

国内市場が成熟する中、香港・台湾での実績を足がかりに、成長著しいアジア市場への展開を再加速させることが期待されます。ECを活用した越境ECの強化も、重要な戦略の一つとなるでしょう。


株式会社ピーチ・ジョンは、ランジェリーを通じて、女性の「なりたい自分」を応援し続けてきました。短期的な損失は、未来の成長に向けた変革の過程に過ぎません。その強固な財務基盤とブランド力を武器に、これからも時代をリードするライフスタイルブランドとして、私たちに新たな「元気・ハッピー・セクシー」を届け続けてくれるに違いありません。

 

企業情報
企業名: 株式会社ピーチ・ジョン
所在地: 東京都港区北青山3-1-2 青山セント・シオンビル
代表者: 西澤 恒地
事業内容: 国内下着最大手ワコールホールディングスの100%子会社。ランジェリー、ルームウェア、アパレル、コスメ等の企画・製造・販売を、店舗・通販・ECのオムニチャネルで展開するライフスタイルブランド。

www.peachjohn.co.jp