決算公告データ倉庫

決算公告を自分用に収集・コメントし保管する倉庫。あくまで自分用であり、引用する決算公告を除き内容の正確性/真実性を保証できない点はご容赦ください。

#942 決算分析 : 株式会社阪急トラベルサポート 第41期決算 当期純利益 170百万円

旅の感動を演出し、旅行業界を裏方として支えるプロフェッショナル集団、株式会社阪急トラベルサポート。阪急交通社を親会社に持つ同社の第41期(令和7年3月31日現在)の決算公告が、2025年6月17日付の官報に掲載されました。コロナ禍という未曽有の危機を乗り越え、その事業領域を拡大しながら力強い回復を示す同社の経営状況と、「トータルサポートカンパニー」として描く未来像を分析します。 

20250331_41_阪急トラベルサポート決算

第41期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 1,840 (約18.4億円)
負債合計: 1,006 (約10.1億円)
純資産合計: 834 (約8.3億円)
当期純利益: 170 (約1.7億円)


今回の決算では、当期純利益として170百万円(約1.7億円)を計上しました。旅行需要の本格的な回復を背景に、堅実な業績を上げています。純資産は約8.3億円、利益剰余金も約7.5億円と潤沢に積み上がっており、自己資本比率も約45.3%と、多くの人材を抱える労働集約型事業でありながら健全な財務基盤を維持しています。

 

事業内容と今後の展望(考察)

【事業内容の概要】
株式会社阪急トラベルサポートは、1984年の設立以来、阪急阪神ホールディングスグループの一員として、旅行業界に特化した人材サービスと業務サポートを提供してきました。その事業は、旅の品質を左右する重要な役割を担っています。

 

人材派遣・職業紹介事業:

国内・海外ツアーに同行し、旅の安全と楽しさを演出する「ツアーコンダクター(添乗員)」の派遣を中核事業としています。この分野では業界のリーディングカンパニーであり、長年のノウハウを蓄積。また、旅行会社のカウンター業務や事務、さらにはコールセンターや販売スタッフなど、高いホスピタリティが求められる多様な職種への人材派遣・紹介も行っています。


旅行サポート事業(BPO):

旅行会社から、日程表やパンフレットの作成・発送、顧客データの入力、ビザ(査証)申請代行といったバックオフィス業務を一括して請け負うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを展開。顧客企業がコア業務に集中できるようサポートしています。


多角的な事業展開:

上記に加え、自社でも団体旅行の手配やパッケージツアーの販売を行う「旅行事業」や、旅行関連の「物販事業」も手掛けています。


【財務状況と今後の展望・課題】
第41期決算で約1.7億円の利益を確保したことは、旅行需要の力強い回復と、同社がコロナ禍を経て事業構造をより強靭なものへと進化させたことを示しています。パンデミックにより旅行業界が停滞した時期、同社はその高い人材力とオペレーション能力を異業種へ展開しました。ワクチン接種会場の運営受託やコールセンタースタッフ、百貨店の催事スタッフ、国際的競技大会の運営スタッフ派遣など、社会の緊急ニーズに迅速に対応した実績は、同社のポテンシャルの高さを証明しました。

 

この経験は、同社を単なる「旅行業界専門」の会社から、「質の高いホスピタリティを軸とする、総合人材サービス・BPOカンパニー」へと脱皮させる大きなきっかけとなったはずです。

今後の成長戦略は、この新たなアイデンティティを軸に展開されていくと考えられます。

 

1. 旅行業界におけるBPO事業の深化
人手不足が深刻化する旅行業界において、専門性の高いバックオフィス業務をアウトソーシングしたいというニーズはますます高まります。日程表作成のような定型業務だけでなく、旅程管理やWEBページの作成・更新といった、より付加価値の高い業務まで受託範囲を広げることで、なくてはならないパートナーとしての地位を不動のものにしていくでしょう。

 

2. 異業種へのホスピタリティ人材提供の加速
コロナ禍で示した実績を活かし、MICE(国際会議、展示会)、大型イベント、高級ブランドの販売、富裕層向けサービスなど、質の高いコミュニケーション能力や臨機応変な対応力が求められる分野への人材サービスを本格的に拡大していくことが期待されます。これは、旅行業界の景気変動に左右されない、安定した収益源の確立に繋がります。

 

3. DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用
求職者(ツアーコンダクターなど)と、仕事のマッチング精度を高めるシステムの開発や、BPO業務の効率化・自動化など、DXへの投資も重要な鍵となります。テクノロジーを活用して生産性を向上させることで、競争優位性をさらに高めることができます。

 

最大の強みは、阪急交通社を筆頭とするグループの強力な基盤と、40年かけて築き上げた「人材の質」への信頼です。旅行業界が活況を取り戻し、人々の交流が再び活発化する中で、その最前線を支える阪急トラベルサポートの役割はますます重要になります。旅の感動を創出するプロとして、そして社会の多様なニーズに応えるホスピタリティのプロとして、同社がどのように事業領域を拡げ、成長していくのか、大いに期待が持たれます。

 

企業情報
企業名: 株式会社阪急トラベルサポート
所在地: 大阪市北区梅田二丁目5番25号
代表者: 河野 哲也
事業内容: 阪急交通社(阪急阪神ホールディングスグループ)の100%子会社。ツアーコンダクター派遣を中心とした旅行業界向け人材サービス、バックオフィス業務の受託(BPO)を中核事業とする。旅行業で培ったホスピタリティ人材を異業種へも展開。

www.hts-net.co.jp

©Copyright 2018- Kyosei Kiban Inc. All rights reserved.