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#892 決算分析 : 京阪京都交通株式会社 第87期決算 当期純利益 35百万円

京都市西部と、そのベッドタウンであり豊かな自然にも恵まれた亀岡市を結び、地域住民の足として、また観光客の移動手段として重要な役割を担う京阪京都交通株式会社。京阪グループの一員として地域交通を支える同社の第87期(2025年3月期)決算公告が、2025年6月17日付の官報に掲載されました。本記事では、その決算内容を分析し、現代の地方交通事業者が直面する課題と、その中での同社の取り組みや今後の展望に迫ります。 

20250331_87_京阪京都交通決算

第87期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 1,306百万円 (約13.1億円)
負債合計: 560百万円 (約5.6億円)
純資産合計: 747百万円 (約7.5億円)
当期純利益: 35百万円 (約0.4億円)


今回の決算では、当期純利益として35百万円を確保しました。総資産13.1億円に対し、純資産が7.5億円と自己資本比率は約57%に達しており、安定した財務基盤を維持しています。6.9億円という潤沢な利益剰余金は、2005年の事業開始以来、地域に根差した経営で着実に利益を積み上げてきた結果と言えるでしょう。

 

事業内容と今後の展望(考察)

【事業内容の概要】
京阪京都交通株式会社は、2005年に京都交通株式会社から路線バス事業を譲受する形で営業を開始した、京阪バス100%出資の子会社です。京都府亀岡市京都市西部(西京区右京区など)を主な事業エリアとし、地域の公共交通インフラとして多岐にわたる役割を担っています。

 

生活を支える路線バス事業:

JR亀岡駅や阪急桂駅、JR桂川駅といった主要な鉄道駅を拠点に、周辺の住宅地や公共施設、商業施設などを結ぶきめ細かな路線網を展開。地域住民の通勤・通学、通院、買い物といった、日々の暮らしに欠かせない移動手段を提供しています。


古都の観光を支えるアクセス輸送:

保津川下りの乗船場嵯峨野トロッコ列車亀岡駅、あるいは紅葉の名所として知られる西山地域の光明寺・善峯寺など、京都を代表する観光地へのアクセス路線も運行。国内外から訪れる多くの観光客の移動をサポートし、地域の観光振興にも貢献しています。


多様なニーズに応える貸切・特定バス事業:

路線バスだけでなく、地域の団体旅行や学校の遠足、スポーツチームの遠征といった貸切輸送や、企業や学校と契約して従業員・児童生徒の送迎を行う特定輸送も手掛け、柔軟な輸送サービスを提供しています。


【財務状況と今後の展望】
今期、35百万円の純利益を確保できた背景には、コロナ禍からの人流回復が大きく寄与していると考えられます。特に、インバウンド観光の急回復により、嵐山・嵯峨野方面への観光客の利用が収益を押し上げたことでしょう。また、亀岡市洛西ニュータウンといったベッドタウンから京都市内への通勤・通学需要も、事業の安定した基盤となっています。

 

しかし、その一方で、他の多くの地方交通事業者と同様、同社も厳しい経営環境に直面しています。原油価格の高騰による燃料費の上昇、そして「2024年問題」に象徴される、深刻な運転士不足とそれに伴う人件費の増加は、コスト面で大きな圧力となっています。その中で利益を確保できたのは、利用実態に合わせた効率的なダイヤ編成や、京阪グループとしての車両整備・購買におけるスケールメリットの活用など、日々の経営努力が実を結んだ結果と推察されます。

 

同社が事業を展開するエリアにおいて、路線バスは単なる移動手段以上の、社会インフラとしての重要な意味を持ちます。高齢化が進む地域では、免許を返納した高齢者にとって、バスは病院やスーパーへ向かうための「命綱」です。京阪京都交通は、日々の運行を通じて、地域住民が自立した生活を送り、社会とのつながりを維持するための基盤を支えているのです。

 

この事業における同社の最大の強みは、京阪グループの一員であることです。京阪バス本体との連携による車両の共同購入や高度な整備体制、人材育成プログラムの共有、そして京阪ホールディングスとしての高いブランド力と信用力は、独立系のバス事業者にはない大きなアドバンテージです。

 

今後の最大の経営課題は、やはり運転士不足への対応です。必要な運行サービスを維持・確保するためには、働きがいのある職場環境の整備や待遇改善などを通じて、運転士という職業の魅力を高め、新たな人材を確保・育成していくことが不可欠です。

 

また、利用者の利便性向上に向けた取り組みも重要です。キャッシュレス決済(ICカード等)のさらなる拡充や、スマートフォンのアプリでバスの現在地がリアルタイムにわかる「バスロケーションシステム」の導入・改善など、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進は、顧客満足度の向上に直結します。

 

長期的には、沿線地域の人口動態を見据え、亀岡市京都市と緊密に連携し、地域のまちづくりと一体となった路線網の最適化や、利用者が少ない地域でのAI活用型オンデマンド交通のような、新しい輸送サービスの導入を検討していくことも、持続可能な公共交通を維持するための重要な戦略となるでしょう。

 

京阪京都交通が目指すのは、単に時刻表通りにバスを運行する会社ではありません。それは、「地域の暮らしと観光を支える、安全・安心で持続可能なモビリティサービス・プロバイダー」です。京阪グループの総合力を活かし、安全運行という最大の使命を守りつつ、時代の変化に柔軟に対応していく。これからも京都西部地域の住民にとってなくてはならない足として、そして国内外の観光客を温かく迎える地域の顔として、日々走り続けることが期待されます。

 

企業情報
企業名: 京阪京都交通株式会社
所在地: (本社事務所)京都府亀岡市篠町篠向谷10番
代表者: 代表取締役社長 阪本 和宏
事業内容: 京阪グループの一員として、京都府亀岡市京都市西部を地盤に、路線バス、貸切バス、特定バス事業を展開。地域住民の生活交通と、京都の観光輸送を担う。

www.keihankyotokotsu.jp

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