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#844 決算分析 : 山形ガス株式会社 第163期決算 当期純利益 53百万円

1911年(明治44年)の創業以来、1世紀以上にわたって山形市のエネルギーインフラを支え続けてきた山形ガス株式会社。その第163期(2024年12月期)の決算公告が、2025年3月27日付の官報に掲載されました。地域の暮らしと共に歩んできた老舗企業が見据える未来を、財務データと多角的な事業展開から考察します。

20241231_163_山形ガス決算

第163期 決算のポイント(単位:百万円)
収益(売上高): 4,406百万円 (約44.1億円)
営業利益: 29百万円 (約0.3億円)
当期純利益: 53百万円 (約0.5億円)


資産合計: 4,796百万円 (約48.0億円)
純資産合計: 3,293百万円 (約32.9億円)


収益(売上高)約44.1億円に対し、当期純利益約0.5億円を確保。特筆すべきはその強固な財務基盤であり、純資産は約32.9億円、自己資本比率は約68.7%と極めて高い水準を誇ります。これは、100年以上の長きにわたる堅実な経営と、地域からの揺るぎない信頼の証左と言えるでしょう。

 

また、資産の部では固定資産が約36.4億円と全体の約76%を占めています。これは、都市ガスを安定供給するためのガス導管網や製造設備といった、大規模なインフラ資産を保有していることを示しており、地域社会に不可欠な役割を担う企業の責任と安定性を物語っています。 

 

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
山形ガスは、その名の通り都市ガス・LPガス事業を中核としながらも、時代のニーズに合わせて事業領域を拡大し、今や「総合生活インフラ企業」としての顔を持っています。

 

安定したエネルギー供給事業:

明治、大正、昭和、平成、そして令和と、時代の変遷とともにエネルギー源を石炭から天然ガスへと転換させながら、山形市の家庭や企業に「暖かさ」と「美味しさ」の源泉であるエネルギーを供給し続けています。


暮らしを支える多角化事業:

同社の特徴は、ガス事業で築いた顧客基盤と信頼を活かした事業の多角化にあります。ガス機器販売から発展したリフォーム事業、地域のエネルギー需要を面で捉えるガソリンスタンド事業、そして脱炭素社会を見据えた再生可能エネルギー事業など、暮らしのあらゆる場面をサポートするサービスを展開しています。


人を大切にする企業文化:

「健康経営優良法人」や「やまがたスマイル企業」といった外部認定を積極的に取得。従業員が心身ともに健康で、いきいきと働ける環境づくりに注力しており、その姿勢がサービスの質の向上、ひいては顧客満足度に繋がるという好循環を生み出しています。


【財務状況と今後の展望・課題】
営業利益率は約0.7%と、一見すると低い水準ですが、これはエネルギー価格の変動を受けやすく、かつ公共的な使命を帯びるガス事業の特性を反映したものです。重要なのは、いかなる経営環境下でも着実に黒字を確保し、利益剰余金を約31.4億円も積み上げているという事実です。これは、短期的な利益追求ではなく、長期的な視点で安定供給と持続的成長を目指す同社の堅実な経営姿勢を示しています。

 

山形ガスの成長戦略の核は、ガス事業という安定基盤の上で展開される「事業の多角化」にあります。これは、人口減少やオール電化との競争といった、地方のエネルギー企業が直面する構造的な課題に対する、的確な一手と言えます。例えば、ガスコンロや給湯器の交換をきっかけに、キッチンやバスルーム全体のリフォームを提案する。ガスの顧客に灯油やガソリンもセットで提供する。これらの事業は、顧客との接点を増やし、「山形ガスに頼めば、暮らしの困りごとは何でも解決できる」というワンストップサービスの提供者としての信頼を醸成します。この顧客との強固な関係性こそが、他社にはない競争優位性の源泉となっています。

 

さらに、再生可能エネルギー事業への取り組みは、脱炭素化という社会全体の要請に応える未来への投資です。これは、企業の社会的責任を果たすと同時に、将来のエネルギーシフトに対応し、企業としての持続可能性を高める上で不可欠な戦略です。

 

しかし、未来に向けてはいくつかの課題も存在します。


第一に、エネルギー自由化による競争の常態化です。顧客に「選ばれ続ける」存在であるために、価格だけでなく、安全性や利便性、そして多角化事業が提供する付加価値を常に磨き続ける必要があります。


第二に、地域の人口減少への対応です。中長期的にガス需要の漸減が見込まれる中で、リフォーム事業や生活関連サービスといった、ガス需要に直接依存しない事業の収益性をさらに高めていくことが求められます。


第三に、脱炭素化へのさらなる貢献です。都市ガス自体のカーボンニュートラル化(合成メタンの導入など)に向けた技術動向を注視し、地域全体の脱炭素化をリードしていく役割が期待されます。

 

山形ガスは、1世紀以上の歴史を持つ老舗でありながら、決して伝統に安住することなく、リフォーム、再エネ、健康経営といった新たな挑戦を続ける、進取の気性に富んだ企業です。これからも、山形県における「総合生活インフラプラットフォーマー」として、地域の暮らしを支え、その未来を明るく照らし続けていくことでしょう。

 

企業情報
企業名: 山形ガス株式会社
所在地: 山形県山形市白山三丁目1番31号
代表者: 代表取締役社長 永井 悟
事業内容: 都市ガス・LPガス事業を核に、再生可能エネルギー事業、ガス機器販売、リフォーム事業、ガソリンスタンド運営など、地域の暮らしを総合的に支える事業を展開。1911年創業の歴史を持つ、山形市の総合生活インフラ企業。

yamagatagas.co.jp

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