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#737 華為技術日本(ファーウェイ・ジャパン) 第20期決算 当期純利益 3,131百万円

グローバルなICTインフラとスマートデバイスのリーディングプロバイダーであるファーウェイの日本法人、華為技術日本株式会社。同社の第20期(2024年1月1日~2024年12月31日)の決算公告が、2025年4月1日付の官報に掲載されました。本記事では、この決算内容を詳細に分析するとともに、同社が日本市場で展開する事業の現在地と、地政学的な逆風の中で進める独自の成長戦略について考察します。

20241231_20_華為技術日本決算

第20期 決算ハイライト
売上高: 87,275百万円 (約872.8億円)
営業利益: 4,460百万円 (約44.6億円)
経常利益: 4,654百万円 (約46.5億円)
当期純利益: 3,131百万円 (約31.3億円)


資産合計: 63,054百万円 (約630.5億円)
純資産合計: 14,202百万円 (約142.0億円)


第20期は、売上高872億円、当期純利益31億円という非常に堅調な業績を記録しました。売上高営業利益率は約5.1%と高い収益性を確保しており、利益剰余金も96億円以上を積み上げています。これは、様々な外部環境の変化に直面しながらも、日本市場において同社の事業が安定的かつ持続的に成長していることを力強く示しています。

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
ファーウェイ・ジャパンは、「In Japan, For Japan」の理念のもと、日本の社会と産業に深く根ざした事業を展開しています。その領域は多岐にわたります。

 

ICTインフラ事業:

5G/5.5Gといった最先端の通信技術を核に、通信事業者向けのネットワーク機器やソリューションを提供。日本のデジタル社会の基盤を支えています。


法人向けICTソリューション:

クラウドサービス「HUAWEI CLOUD」、データストレージ、Wi-Fi 7対応のネットワーク機器などを通じ、金融、医療、放送、製造、小売といった幅広い産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援。ウェブサイトには、津山中央病院やスクウェア・エニックスなど、多数の国内導入事例が掲載されています。


デジタルパワー事業:

太陽光発電のパワーコンディショナーやデータセンター向けのエネルギーソリューションなど、カーボンニュートラルに貢献するクリーンエネルギー技術を提供。


コンシューマー向け製品:

スマートフォンで培った技術を活かし、スマートウォッチやワイヤレスイヤホンなどのウェアラブル・オーディオ製品で高い市場評価を獲得。


スマートカーソリューション:

インテリジェントドライビング領域で、自動車産業の変革を支援する新たなソリューションを展開。


【逆風下の好業績を支えるもの】
ファーウェイが米国政府による厳しい輸出規制下に置かれていることは周知の事実です。このような向かい風の中で、なぜ日本法人はこれほど安定した業績を上げることができたのでしょうか。その背景には、同社の巧みな事業ポートフォリオ戦略と、揺るぎない技術開発への意志が見て取れます。

 

法人向け事業の深化:
スマートフォン事業がGMSGoogle Mobile Services)非搭載という制約を受ける一方で、ファーウェイ・ジャパンは法人向けICTソリューション事業に注力し、着実に成果を上げています。特に、性能とコストパフォーマンスに優れたデータストレージやネットワーク機器は、企業のDX投資が活発化する中で需要を捉えています。また、日本のエネルギー転換政策を追い風に、デジタルパワー事業も新たな収益の柱として成長していると推察されます。

 

圧倒的な研究開発投資:
ファーウェイの強さの源泉は、売上の2割以上という巨額の研究開発投資にあります。この投資は、米国技術への依存から脱却し、独自の技術エコシステムを構築するための原動力となっています。独自OS「HarmonyOS」、AIプラットフォーム「Pangu」、サーバー用CPU「Kunpeng」といった技術は、制裁という逆境から生まれたイノベーションの結晶です。これらの独自技術に裏打ちされた製品力が、法人・個人問わず顧客を惹きつけています。

 

「調達・開発拠点」としての日本の重要性:
「In Japan, For Japan」という理念は、「For Global」という側面も持ち合わせています。日本は、世界トップクラスの部品・素材メーカーが集積する、ファーウェイにとって極めて重要な「調達拠点」です。同時に、優れた技術を持つ日本のパートナー企業との「共同開発拠点」としての役割も担っています。グローバルなサプライチェーンの再構築が急務である同社にとって、日本法人が持つパートナーシップと信頼関係は、計り知れない価値を持っています。

 

【今後の展望と成長戦略】
ファーウェイ・ジャパンは、今後も独自の技術エコシステムを軸に、日本市場での存在感を高めていくと予想されます。

 

独自エコシステムの本格展開:
10億台以上のデバイスに搭載された「HarmonyOS」は、もはや単なるモバイルOSではありません。PC、タブレットウェアラブル、そして自動車までをもシームレスに連携させる、次世代のインテリジェントな体験を提供します。このHarmonyOSを搭載したスマートカーソリューションや各種デバイスが日本市場に投入されれば、新たなユーザー体験を創出する可能性があります。

 

AIとクラウドの融合による産業DXの加速:
気象予測などで世界的な評価を得たAI「Panguモデル」を、法人向けクラウドサービスと融合させることで、より高度な産業ソリューションの提供が可能になります。製造業の品質管理、金融機関のリスク分析、小売業の需要予測など、日本のあらゆる産業のインテリジェント化に貢献することが期待されます。

 

オープンなパートナーシップの継続:
「安心と信頼」を最優先事項として掲げる同社にとって、日本の顧客やパートナー企業とのオープンな対話と協業は不可欠です。技術的な優位性をアピールするだけでなく、セキュリティや透明性を確保する取り組みを継続し、日本の社会の一員として信頼を醸成していくことが、持続的な成長の鍵となります。

 

2025年3月には新たな代表取締役社長として李飛(リ・フェイ)氏が就任し、新体制でのスタートを切ったファーウェイ・ジャパン。厳しい外部環境を乗り越え、技術力と日本への深いコミットメントを武器に、どのような価値を創造していくのか。その挑戦から目が離せません。

 

企業情報
企業名: 華為技術日本株式会社(ファーウェイ・ジャパン
所在地: 東京都千代田区大手町一丁目5番1号
代表者: 代表取締役社長 李飛(2025年3月就任)※決算期末時点では侯濤氏
事業内容: 通信事業者向けネットワーク事業、法人向けICTソリューション事業、クラウド事業、デジタルパワー事業、コンシューマー向けスマートデバイス事業などを展開するグローバルICT企業ファーウェイの日本法人。

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