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#666 決算分析 : 北日本コンピューターサービス 第56期決算 当期純利益 1,015百万円

秋田市に本社を置き、地方自治体向け業務システムで圧倒的な全国シェアを誇る、北日本コンピューターサービス株式会社の第56期(2024年9月期)の決算公告が、令和7年1月8日付の官報に掲載されました。日本の行政DXを支える「知る人ぞ知る超優良企業」の驚くべき財務内容と、その強さの秘密に迫ります。

20240930_56_北日本コンピューターサービス決算

第56期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 9,898 (約99.0億円)
負債合計: 2,475 (約24.8億円)
純資産合計: 7,423 (約74.2億円)
当期純利益: 1,015 (約10.2億円)


今回の決算で特筆すべきは、その圧倒的な収益性と財務の健全性です。当期純利益として1,015百万円(約10.2億円)という、地方のIT企業としては驚異的な額を計上しています。

 

純資産は7,423百万円(約74.2億円)に達し、自己資本比率は約75%と極めて高い水準です。特に、資本金10百万円に対して利益剰余金が7,413百万円(約74.1億円)と、利益が莫大に積み上がっている点から、長年にわたり高収益を維持し続けてきたことが明確にうかがえます。これは、同社のビジネスモデルがいかに強固で安定的であるかを証明しています。

 

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
北日本コンピューターサービスは、1969年の設立以来、地方自治体の業務に特化したITソリューションを提供し続けてきました。その事業の根幹には、他社が容易に模倣できない「ニッチトップ戦略」と、顧客との共存共栄を目指す経営理念があります。

 

圧倒的No.1「生活保護システム ふれあい」:

同社を象徴するのが、生活保護業務を支援する「ふれあい」シリーズです。このシステムは、全国の自治体で50%を超える圧倒的なシェアを誇ります。この強さの源泉は、①複雑な法制度や運用を熟知した「ドメイン知識」、②システムの企画・開発から販売・導入・保守サポートまで自社で一気通貫して行う「三位一体体制」にあります。顧客に深く寄り添い、ニーズを的確に反映し続けることで、揺るぎない信頼を勝ち得ています。

 

専門ノウハウの横展開:

「ふれあい」で培ったノウハウと顧客基盤を活かし、「滞納管理システム」や「貸付システム」「健康管理サービス」など、専門性が求められる他の行政業務へソリューションを横展開。各分野で着実に実績を積み重ね、事業の安定性を高めています。

 

行政DXを牽引する新技術への挑戦:

近年では、AIを活用したFAQシステム「ふれあいコンシェルジュ」や、データ分析に基づき収納率向上を目指す「OneDrip」など、最新技術を駆使したサービス開発にも積極的です。単なる業務効率化に留まらず、データに基づいた政策立案(EBPM)を支援するなど、行政サービスの質の向上に貢献しています。

 

【財務状況と今後の展望・課題】
当期純利益10億円超、利益剰余金74億円超という驚異的な財務内容は、同社のビジネスモデルがいかに盤石であるかを物語っています。一度導入されると、職員の習熟やデータ移行のコストから他のシステムへの乗り換えが難しい行政システムの特性(高いスイッチングコスト)を最大限に活かし、安定した保守・運用料を継続的に得ることで、着実に利益を積み上げてきた結果です。

 

この潤沢な自己資本を背景に、同社は未来への投資も積極的に行っています。2022年に竣工した秋田本社の新事業拠点「C-CUBE」は、その象徴です。貸借対照表上の固定資産が約30.7億円計上されていることからも、こうした投資の規模がうかがえ、優秀な人材の確保や開発力の強化を通じて、さらなる成長基盤を固めています。

 

市場機会(追い風):

現在、国策として進められている行政DX(デジタル・トランスフォーメーション)の波は、同社にとって最大の追い風です。全国の自治体でシステムの標準化・共通化(ガバメントクラウド)が進む中、クラウド対応(AWS公共部門パートナー)も済ませている同社には、既存システムの更新や新たなDXソリューションへの需要がますます高まることが予想されます。

 

成長戦略:

今後は、圧倒的な市場シェアと財務基盤を武器に、行政DXのトップランナーとしての地位をさらに盤石なものにしていくでしょう。既存事業の深耕に加え、M&Aによる事業領域の拡大や、AI・データ分析といった新技術を核としたサービスをさらに強化していくことが期待されます。

 

課題とリスク:

一方で、事業の継続には専門性の高いドメイン知識を持つIT人材の確保・育成が不可欠であり、地方に本社を置く企業として、その採用と定着は常に重要な経営課題です。また、「生活保護システム」という単一事業への依存度が高い構造は、万が一のリスクを内包しており、新規事業の育成による収益源の多角化も長期的な課題と言えるでしょう。

 

北日本コンピューターサービスは、秋田から全国の行政を支える、まさに「巨象」のような存在です。安定した事業基盤の上で、未来を見据えた変革にも果敢に挑戦する同社が、日本の行政、そして社会の発展にどう貢献していくのか、その動向に引き続き注目が集まります。

 

企業情報
企業名: 北日本コンピューターサービス 株式会社
所在地: 秋田県秋田市南通築地15番32号
代表者: 代表取締役社長 江畑 佳明
事業内容: 自治体向け業務システムの開発・販売・サポート。「生活保護システム ふれあい」は全国シェアNo.1。その他、滞納管理やAIを活用したDXソリューションなどを提供。

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