「より良い建物を未来へ」という理念を掲げ、建築設備設計の深い知見と、BIMに代表される最先端のデジタル技術を融合させ、建設業界の未来を創造するIZUMIグループ株式会社。同グループの司令塔であるホールディングカンパニーの第8期決算公告(令和7年1月14日官報掲載)が公開されました。その決算内容は、グループ再編を経て、新たな成長軌道に乗り出したことを示唆しています。
第8期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 2,411百万円 (約24.1億円)
負債合計: 527百万円 (約5.3億円)
純資産合計: 1,884百万円 (約18.8億円)
当期純利益: 76百万円 (約0.8億円)
今回の決算では、当期純利益として76百万円を計上し、黒字化を達成しています。利益剰余金は現時点でマイナス(▲302百万円)ですが、それをはるかに上回る潤沢な資本剰余金(約21.6億円)により、純資産は約18.8億円と非常に厚く、財務基盤は極めて安定しています。固定資産が総資産の大半を占めているのは、ホールディングカンパニーとして傘下の有力な事業会社の株式を保有しているためであり、グループ全体の価値を示しています。
事業内容と今後の展望(考察)
【事業内容の概要】
IZUMIグループ株式会社は、単なる持株会社ではありません。その中核には、約50年の歴史を誇る群馬県前橋市創業の「株式会社イズミコンサルティング」と、約30年の歴史を持つ宮城県仙台市創業の「株式会社鰐設計」という、実績豊富な建築設備設計事務所が座っています。
グループの事業の核心は、この伝統的なエンジニアリング力と、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の切り札であるBIM(Building Information Modeling)技術を融合させ、建築物のライフサイクル全体にわたる価値を提供することにあります。
中核事業: 建築設備設計をルーツとしながら、イズミコンサルティングではシステム開発、環境・省エネルギーコンサルティング、防災事業などへ多角化。
DX推進:
3次元モデルに建築物のあらゆる情報を統合するBIMを駆使し、設計・施工・維持管理の全段階で生産性向上と品質向上を実現。
グローバル体制:
ベトナムと中国(瀋陽)にも拠点を構え、グローバルな知見とコスト競争力を活かしたエンジニアリングサービスを展開しています。
【好業績の背景と企業の強み】
当期の黒字化達成は、2022年に行われたグループ体制の再編が実を結び、各社の強みが効果的なシナジーを生み始めた結果と考えられます。
建設DX需要の拡大:
建設業界では、深刻な人手不足と生産性の向上が喫緊の課題となっており、BIMをはじめとするDXソリューションへの需要が急速に高まっています。IZUMIグループは、この潮流を的確に捉え、事業を拡大していると推察されます。
歴史に裏打ちされた専門性:
長年にわたり培ってきた建築設備設計の深い知見と信頼が、DXソリューション提案の説得力を高めています。単なるITベンダーではない、「建物を知り尽くした専門家集団」であることが最大の強みです。
多角的な収益構造:
伝統的な設備設計に加え、システム開発や環境コンサルなど、多様な収益の柱を持つことで、建設市況の変動に強い安定した経営基盤を構築しています。
【今後の展望と課題】
今後の成長の鍵は、建設業界のDX化という大きな波に乗り、いかにリーダーシップを発揮していくかにかかっています。課題としては、日進月歩で進化するテクノロジーへの継続的な投資と、それを使いこなす高度なスキルを持つエンジニアやBIM技術者の育成・確保が挙げられます。
しかし、同社の展望は明るいと言えるでしょう。
建設DXソリューションの深化:
今後は、BIMデータを活用した維持管理(ファシリティマネジメント)領域への展開や、AIを活用した設計プロセスの自動化など、提供価値のさらなる向上が期待されます。
環境・省エネ分野での貢献:
脱炭素社会の実現に向け、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の設計・コンサルティングはますます重要となります。この分野で同社が果たす役割は大きいでしょう。
異業種連携の可能性:
関連会社である人材サービス大手「ひと・コミュニケーションズ株式会社」との連携により、建設業界に特化した新たな人材ソリューションの創出など、異業種間のシナジーも期待されます。
IZUMIグループは、古き良きエンジニアリングの魂と、未来を切り拓くデジタルの力を併せ持つ、ユニークな企業グループです。「より良い建物を未来へ」という理念のもと、日本の建設業界が抱える課題を解決し、その生産性革命をリードする存在へと進化していくことが大いに期待されます。
企業情報
企業名: IZUMIグループ株式会社
所在地: 東京都新宿区下宮比町2-1 第一勧銀稲垣ビル6階
代表者: 代表取締役 小池 康仁
事業内容: 建築設備設計を祖業とする㈱イズミコンサルティング、㈱鰐設計などを傘下に持つホールディングカンパニー。BIMなど最新技術を活用した建設DXを推進。