「THE NORTH FACE」や「HELLY HANSEN」など数々の人気ブランドを展開する大手スポーツアパレルメーカー、株式会社ゴールドウイン。同社によって設立され、日本の未来を担う若者たちを支援する「公益財団法人ゴールドウイン西田育英財団」の第5期決算公告(令和6年12月17日官報掲載)が公開されました。その財務内容からは、次世代育成にかける揺るぎない意志と、盤石な活動基盤が見て取れます。

第5期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 7,030百万円 (約70.3億円)
負債合計: 1百万円 (約0.0億円)
正味財産合計: 7,029百万円 (約70.3億円)
うち指定正味財産: 3,428百万円 (約34.3億円)
うち一般正味財産: 3,602百万円 (約36.0億円)
今回の決算で最も注目すべきは、約70.3億円という極めて潤沢な正味財産です。負債はほとんどなく、財団の財務基盤が非常に安定していることを示しています。この盤石な財産が、長期にわたる継続的な奨学金給付事業を可能にしています。また、資産の大部分(約99%)を固定資産が占めていますが、これは奨学金事業の原資となる基本財産(有価証券等の運用資産)であると推察され、財団の永続的な活動への強い意志がうかがえます。
財団の目的と社会貢献活動(考察)
【設立の背景とゴールドウインの理念】
ゴールドウイン西田育英財団は、株式会社ゴールドウインの代表取締役会長である西田明男氏が理事長を務めることからもわかる通り、同社とその創業家が、事業で得た利益を社会に還元し、未来へ投資するために設立した公益財団法人です。その活動の根幹には、ゴールドウインが富山県小矢部市で創業したという歴史と、企業としての人材育成への強い想いが色濃く反映されています。
財団の事業の柱は、原則として返還義務のない「給付型」の奨学金事業であり、経済的な理由で夢を諦めることのないよう、若者たちを力強く支援しています。その内容は、ゴールドウインの企業精神と創業の地への想いを映し出す、特色ある2つの事業で構成されています。
【未来を創る2つの奨学金事業】
スポーツ・アパレル西田育英事業:
これは、ゴールドウインが事業を展開する「スポーツ」と「ファッション」の分野で、専門的な知識や技術を学ぶ学生を対象とする奨学金です。将来、業界の最前線で活躍するであろうアスリートのサポーター、トレーナー、デザイナー、パタンナーといった人材の育成を目的としています。これは単なる社会貢献に留まらず、業界全体の未来を豊かにし、ひいては自社の事業環境をより良くしていくという、長期的かつ戦略的な視点を持つ、未来への投資と言えます。
富山西田育英事業:
こちらは、ゴールドウインの創業の地である富山県の高等学校を卒業し、4年制大学で学ぶ学生を対象とする奨学金です。学部を問わず、幅広い分野で学ぶ若者を支援することで、育ててくれた地域社会への「恩返し」を果たすとともに、将来、富山県の、そして日本の発展に貢献する多様な人材を育成することを目的としています。役員・評議員に富山県の教育関係者や金融機関の役員が名を連ねていることからも、地域に深く根差した活動を目指していることがわかります。
【財団が担う社会的役割と意義】
ゴールドウイン西田育英財団の活動は、単なる資金援助ではありません。それは、企業の社会的責任(CSR)を具現化し、持続可能な社会の実現に貢献する、極めて意義深い取り組みです。返還義務のない奨学金は、学生が借金を負うことなく学業に専念できる環境を提供し、意欲ある若者に平等な機会を与えます。
盤石な財務基盤のもと、未来のアスリートを支える人々、世界を彩るデザイナー、そして地域社会のリーダーを育む。この財団の活動は、スポーツとファッションの力を通じて、人々の生活を、そして日本の未来をより豊かにしていくための、静かですが力強い原動力となっています。
財団情報
名称: 公益財団法人ゴールドウイン西田育英財団
所在地: 富山県小矢部市清沢1061番地
代表者: 理事長 西田 明男
事業内容: スポーツ・アパレル分野、または富山県出身の学生を対象とした、原則として返還義務のない給付型奨学金事業。