決算公告データ倉庫

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#600 J-STAR株式会社 第19期決算 当期純利益 177百万円

企業の潜在能力を解き放ち、次なる成長ステージへと導くプライベート・エクイティ(PE)ファンド。その中でも、日本の中堅・中小企業の「駆け込み寺」として、独自の存在感を示すJ-STAR株式会社。同社の第19期(2024年9月期)の決算公告が、2025年2月4日付の官報に掲載されました。日本の産業界の舞台裏で、数々の企業の成長を支えるプロフェッショナル集団の経営実態と、その投資哲学に迫ります。

20240930_19_J-STAR決算

第19期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 3,673百万円 (約36.7億円)
負債合計: 1,723百万円 (約17.2億円)
純資産合計: 1,950百万円 (約19.5億円)
当期純利益: 177百万円 (約1.8億円)


今回の決算では、当期純利益として177百万円(約1.8億円)を計上し、安定した収益力を示しています。特筆すべきは、利益剰余金が約19億円と極めて厚く積み上がっており、自己資本比率も約53%と非常に健全な状態である点です。これは、同社が運営する複数のファンドから得られる管理報酬や成功報酬が、安定した収益基盤を形成していることを物語っています。

 

一方で、貸借対照表には180百万円(約1.8億円)の「訴訟損失引当金」が計上されています。これは、何らかの法的紛争に備える引当金であり、多数の企業への投資と売却を手掛けるPEファンドの事業に内在するリスクの一端を示しています。しかし、その額は19.5億円にのぼる潤沢な純資産に対して限定的であり、同社の財務基盤の安定性を揺るがすものではありません。 

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
J-STAR株式会社は、2006年に設立された、日本を代表する独立系のプライベート・エクイティ(PE)ファンド運営会社です。そのビジネスモデルは、一般には馴染みが薄いかもしれませんが、日本の経済にとって極めて重要な役割を担っています。

 

PEファンドの組成・運営:
銀行や保険会社、年金基金といった機関投資家から資金を集め、「投資事業有限責任組合」という形でファンドを組成します。そのファンドを通じて、成長のポテンシャルを秘めた中堅・中小企業の株式を取得(投資)し、経営権を握ります。

 

ハンズオンによる企業価値向上:
J-STARの真骨頂は、単なる投資に留まらない「ハンズオン支援」にあります。投資先企業に専門家を派遣し、経営戦略の策定、業務プロセスの改善、新規事業開発、M&Aによる事業拡大、ガバナンス体制の強化などを、経営陣と二人三脚で実行します。

 

投資回収(Exit)とリターンの創出:
3~7年程度の期間をかけて企業価値を最大限に高めた後、株式を他の事業会社へ売却したり、経営陣自身による株式の買い戻し(MBO)を支援したり、あるいは新規株式公開(IPO)を実現させることで、投資を回収(Exit)します。この売却益が、ファンドに出資した投資家へのリターンとなります。J-STAR自身は、ファンドの運営・管理手数料と、このExitが成功した際の成功報酬を収益源としています。

 

【財務状況と今後の展望・課題】
1.8億円という安定した当期純利益は、同社が運営するファンドの規模が順調に拡大していることを背景としています。1号ファンドの約120億円からスタートし、現在運営中の5号ファンドでは約768億円に達するなど、その運用資産残高は着実に増加。これに比例する管理報酬が、安定収益の源泉となっています。加えて、過去に投資した企業のExit成功に伴う成功報酬も、業績に貢献していると推察されます。

 

社会課題を解決する「育成型ファンド」
PEファンドと聞くと、「ハゲタカ」のような厳しいイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、J-STARの投資哲学は「融和と調和」です。ウェブサイトでは、株主が一方的に経営を変えるのではなく、経営陣や従業員との対話を尽くし、納得の上で変革を進める姿勢を強調しています。このアプローチは、特に現代日本の大きな社会課題である「事業承継問題」の解決において大きな力を発揮します。後継者不足に悩む優良な中堅・中小企業にとって、J-STARは事業と雇用、そして技術を守り、次世代へと繋いでくれる頼れるパートナーなのです。

 

その実力は、豊富な投資実績が証明しています。アパレルの「ウィゴー」、シニア向け通販の「ハルメクホールディングス」、法律相談ポータルサイトの「アシロ」、介護サービスの「日本ホスピスホールディングス」など、同社が支援し、IPO(新規株式公開)へと導いた企業は数多く、その価値向上(バリューアップ)能力の高さは業界でも高く評価されています。

 

今後の課題としては、PEファンド間の競争が激化する中で、いかにして独自の強みを持つ魅力的な投資先企業を発掘し続けられるかが挙げられます。また、金利動向や景気後退といったマクロ経済の変動は、投資先の業績やExit戦略に直接影響を与えるため、常に市場環境を注視する必要があります。

 

J-STARは、日本経済の「縁の下の力持ち」として、企業のポテンシャルを開花させ、新たな価値を創造するプロフェッショナル集団です。これからも、事業承継に悩むオーナーの信頼できる受け皿となり、投資先企業の成長を通じて、日本経済の新陳代謝と活性化に貢献していくことでしょう。その動向は、日本の産業界の未来を占う上でも見逃せません。

 

企業情報
企業名: J-STAR株式会社
所在地: 東京都千代田区有楽町一丁目13番2号 第一生命日比谷ファースト18階
代表者: 代表取締役 原 禄郎
事業内容: 2006年設立の独立系プライベート・エクイティファンド運営会社。中堅・中小企業を主な対象とし、ファンドを通じて投資を実行。経営に深く関与する「ハンズオン支援」により企業価値を高め、IPOや事業会社への売却等を通じて投資を回収する。

www.j-star.co.jp