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#587 決算分析 : 株式会社アルファコード 第10期決算 当期純利益 ▲450百万円

株式会社アルファコードの第10期(2024年9月期)の決算公告が、2024年12月19日付の官報に掲載されましたので、その概要と事業内容を分析します。

20240930_10_アルファコード決算

第10期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 1,099百万円 (約11.0億円)
負債合計: 536百万円 (約5.4億円)
純資産合計: 563百万円 (約5.6億円)
当期純損失: 450百万円 (約4.5億円)


今回の決算では、当期純損失として450百万円(約4.5億円)が計上されています。資産合計は約11.0億円、負債合計は約5.4億円で、純資産合計は約5.6億円です。利益剰余金は▲1,143百万円(約▲11.4億円)と赤字が累積している状態ですが、資本金100百万円(約1.0億円)および資本剰余金1,670百万円(約16.7億円)により、純資産はプラスを維持しています。これは、事業の成長に向けた先行投資を、大型の資金調達によって支えている財務構造を示唆しています。

 

事業内容と今後の展望(考察)


【事業内容の概要】
株式会社アルファコードは、XR(VR/MR/AR)技術を核としたイマーシブ・エクスペリエンス(没入体験)の提供をミッションに掲げるテクノロジー企業です。同社の公式ウェブサイトによると、主な事業は以下の通りです。

 

イマーシブ・エクスペリエンス・プラットフォーム「Blinky」の開発・運営:
同社の中核事業であり、音楽ライブ、演劇、スポーツなどのイベントを、高精細な8K映像やVR/MRでライブ配信するプラットフォームです。視聴者が視点を自由に切り替えられる「マルチアングル機能」や、VR空間内に2D映像を挿入する機能、リアルタイムコメントやギフティング(投げ銭)機能などを搭載し、深い没入感とインタラクティブな視聴体験を提供しています。

 

法人向けXRソリューションの提供:
2015年の創業以来、数百件にのぼる豊富な実績を基に、企業の多様な課題を解決するXRソリューションをワンストップで提供しています。Doleの「バーチャル産地ツアー」や、旭酒造の「獺祭の酒蔵見学VR」といったプロモーション事例のほか、医療従事者向けの教育コンテンツ(心臓蘇生、せん妄症状体験)、東邦ガスの安全教育VR「火学VR」など、教育・研修分野でも高い評価を得ています。企画から撮影、アプリケーション開発、機材調達、運用までを一貫してサポートできる体制が強みです。

 

メタバース関連ソリューション「VRider」シリーズの開発・提供:
複数人が同時にメタバース空間を体験できる「VRider COMMS」、タブレット1台で多数のVR HMDを一元管理できる研修・イベント向けシステム「VRider ADMIN」など、特定のニーズに特化したソリューションを展開。これにより、教育効率の大幅な向上や、イベント運営における人的コストの削減といった具体的な価値を創出しています。

 

【財務状況と今後の展望・課題】
第10期決算で当期純損失が450百万円(約4.5億円)となった背景には、主力プラットフォーム「Blinky」の機能強化や、多様な業界に向けたXRソリューション開発など、事業拡大に向けた戦略的な先行投資があると推察されます。貸借対照表に見られる固定資産が611百万円(約6.1億円)と資産の半数以上を占めている点は、自社プラットフォームや関連技術への継続的な大規模投資が行われていることを示唆しています。

 

同社が取り組むXR・メタバース市場は、5G通信の普及や高性能なHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の登場を追い風に、今後大きな成長が見込まれる分野です。エンターテインメントの視聴体験を革新するだけでなく、遠隔での技能伝承、医療・安全教育の質の向上、物理的な制約を超えたコミュニケーションの実現など、多くの社会課題を解決する可能性を秘めています。

 

特に、同社の強みである、①元スクウェア社長の武市智行氏や天才プログラマー認定を持つ水野拓宏CTOを中心とした経験豊富な経営・開発陣、②「Blinky」が持つ8K配信やマルチアングルといった技術的優位性、③NTT西日本大日本印刷日本テレビWOWOWといった大手企業からの大型資金調達実績と強固なパートナーシップは、今後の成長における強力な推進力となるでしょう。

 

しかしながら、収益性の確立が最大の経営課題であると考えられます。現状の損失は、成長フェーズにおける戦略的な投資の結果と捉えられますが、継続的な事業運営のためには、投資を回収し利益を生み出すビジネスモデルを確立することが不可欠です。市場競争の激化も予想される中、技術的優位性を維持しつつ、新たな収益源の確保やコスト構造の最適化を進めていく必要があります。

 

今後のマイルストーンとしては、出資元である日本テレビWOWOWといった大手メディア企業との連携を活かした、大規模なVRライブ配信やプレミアムコンテンツの共同制作などが期待されます。また、教育や医療分野で実績を積んできた「VRider」シリーズをさらに横展開し、安定的な収益基盤を構築することも重要です。株式会社アルファコードがこれらの課題を克服し、「人類の映像視聴を『平面』から『空間』へ」という壮大なビジョンを実現できるか、その戦略と実行力に引き続き注目が集まります。

 

企業情報
企業名: 株式会社アルファコード
所在地: 東京都港区虎ノ門三丁目18番19号
代表者: 代表取締役 武市 智行
事業内容: VR/MRライブ映像配信プラットフォーム「Blinky」の開発・運営を中核に、XR技術を活用したソリューションを教育、医療、プロモーションなど幅広い分野にワンストップで提供。

www.alphacode.co.jp

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