決算公告データ倉庫

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#579 富士正酒造株式会社 第1期決算 当期純利益 ▲28百万円

富士正酒造株式会社の第1期の決算公告が掲載されましたので、その概要をピックアップします。

20240930_1_富士正酒造決算

第1期 決算のポイント(単位:百万円)

資産合計: 383 (約3.8億円)
負債合計: 400 (約4.0億円)
純資産合計: ▲18 (約▲0.2億円)
当期純損失: 28 (約0.3億円)


今回の決算は、同社が2024年3月に合資会社から株式会社へ組織変更してからの最初の決算です。当期純損失として28百万円が計上され、純資産は▲18百万円の債務超過となっています。ただし、これは組織変更に伴う一時的な会計処理や、新体制での先行投資などが影響している可能性があり、150年以上の歴史を持つ同社の実力をこの数値だけで判断することはできません。むしろ、新たな経営体制で次なる成長を目指す、重要なスタート地点の決算と言えるでしょう。 

事業内容と今後の展望(考察)

 

【事業内容の概要】
富士正酒造株式会社は、1866年(慶応2年)に創業した、静岡県富士宮市に蔵を構える老舗酒蔵です。「日本一富士山に近い酒蔵」として、その恵まれた自然環境を最大限に活かした酒造りを行っています。

 

富士山の恵みを活かした酒造り: 標高900mの朝霧高原に蔵を構え、富士山の清冽な伏流水と、酒造好適米の王様「山田錦」や地元産の「誉富士」などを使い分け、高品質な日本酒を醸しています。早くから純米酒造りに取り組むなど、伝統的に品質を重視する姿勢が特徴です。


体験型マーケティングと直販: 蔵元では、しぼりたての生原酒などが楽しめる直営店を運営するほか、試飲や蔵見学ツアーを積極的に開催。顧客との直接的なコミュニケーションを通じて、日本酒の魅力と造り手の想いを伝えています。


多彩な商品ラインナップ: 鑑評会で最高賞を受賞した純米大吟醸から、普段の晩酌で楽しめる本醸造、さらには梅酒用の日本酒まで、幅広いニーズに応える商品を取り揃えています。


【財務状況と今後の展望・課題】
株式会社としての第1期決算が債務超過という結果になった背景には、組織変更という大きな節目があったことが強く影響していると考えられます。新会社として新たなスタートを切るにあたり、設備投資やマーケティング活動を強化した結果、一時的に費用が先行した可能性があります。

 

同社の最大の強みは、150年以上にわたって受け継がれてきた酒造りの技術と、「富士正」というブランドが持つ歴史的な信頼です。そして、「日本一富士山に近い」という唯一無二のロケーションは、国内外の観光客を惹きつける強力な武器となります。

 

今後の課題としては、まず財務体質の改善を図り、安定した経営基盤を再構築することが挙げられます。また、国内の日本酒市場が縮小傾向にある中で、若者層へのアプローチや、海外市場の開拓といった新たな需要創出が不可欠です。

 

今回の株式会社化は、まさにこれらの課題を乗り越え、次の100年へと事業を継承していくための重要な一手と見られます。法人格を変更することで、外部からの資金調達がしやすくなり、これまで以上に大胆な設備投資や海外展開が可能になります。今後は、「富士山」という世界的なブランド力を活かし、インバウンド観光客向けの体験コンテンツをさらに充実させるとともに、海外への輸出を本格化させていくことが期待されます。富士正酒造が、この新たな船出を機に、伝統と革新を両輪としてどのように飛躍していくのか、その挑戦に大きな注目が集まります。

 

企業情報

企業名: 富士正酒造株式会社
所在地: 静岡県富士宮市根原450番地の1
代表者: 沓間大作
事業内容: 日本酒の製造・販売。「日本一富士山に近い酒蔵」として、富士山の伏流水を用いた高品質な日本酒を醸造。蔵元での直販や蔵見学も行う。

https://www.fujimasa-sake.com/