ポップカルチャーニュースサイト「ナタリー」を運営する株式会社ナターシャの第20期(令和7年3月31日現在)の決算公告が掲載されましたので、その概要をピックアップします。
第20期 決算のポイント(単位:百万円)
資産合計: 1,464 (約14.6億円)
負債合計: 435 (約4.4億円)
純資産合計: 1,028 (約10.3億円)
当期純利益: 210 (約2.1億円)
今回の決算では、当期純利益として210百万円(約2.1億円)が計上されました。利益剰余金も705百万円(約7.0億円)と潤沢に積み上がっており、自己資本比率も非常に高く、極めて安定した財務基盤を築いていることがわかります。
事業内容と今後の展望(考察)
【事業内容の概要】
株式会社ナターシャは、「愛情を原動力にした仕事を重ね、文化の発展の一翼を担う」という使命のもと、日本を代表するポップカルチャー専門のウェブメディア事業を展開しています。
ニュースメディア「ナタリー」の運営: 音楽、マンガ・アニメ、お笑い、映画、ステージの5つの専門サイトからなる「ナタリー」を運営。月間6,300万PV、2,100万ユニークユーザーという絶大な影響力を誇ります。
EC事業「ナタリーストア」: メディアで取り上げたコンテンツと連動したオリジナルグッズの企画・販売を行うEコマースサイト。メディアのファンを直接購買につなげる強力な収益源となっています。
イベント事業「ライブナタリー」: 独自の企画による音楽ライブや複合オンラインイベントを主催。メディアブランドを活かして、リアルな体験価値を創出しています。
【財務状況と今後の展望・課題】
第20期決算で2.1億円という高い水準の当期純利益を達成できた背景には、この「メディア・EC・イベント」という三位一体のビジネスモデルが強力なシナジーを生み出していることにあります。圧倒的な集客力を誇る「ナタリー」でファンとのエンゲージメントを深め、その熱量を「ナタリーストア」でのグッズ購入や、「ライブナタリー」でのイベント参加という形で収益化する、見事なエコシステムを構築しています。
同社の最大の強みは、2007年のサービス開始以来、一貫して「誠実、公正な仕事」を貫くことで築き上げてきた、読者やアーティストからの絶大な「信頼」です。この信頼が「ナタリー」ブランドの根幹を成しており、広告収益だけでなく、物販やイベント事業においても高い訴求力を発揮しています。また、2014年からKDDI株式会社の連結子会社となっており、大手資本の安定した経営基盤も強みの一つです。
今後の課題としては、デジタルメディア業界全体の競争激化と、ユーザーのコンテンツ消費形態の多様化への対応が挙げられます。常に新しい挑戦を続けるという理念のもと、ショート動画などの新しいフォーマットへの対応や、ファンコミュニティをさらに活性化させる新たなサービス開発が求められます。
今後のマイルストーンとしては、既存5ジャンルに次ぐ新たな専門サイトの立ち上げや、EC・イベント事業のさらなる拡大が考えられます。株式会社ナターシャが、そのカルチャーへの深い愛情と信頼を武器に、変化の速いメディア業界でどのような新しい価値を提供し続けるのか、その動向に引き続き注目が集まります。
企業情報
企業名: 株式会社ナターシャ(KDDIグループ)
所在地: 東京都渋谷区神宮前1-2-4
代表者: 代表取締役社長 清水 信行
事業内容: ポップカルチャー専門ニュースサイト「ナタリー」(音楽・コミック・お笑い・映画・ステージ)の運営を核に、ECサイト「ナタリーストア」、イベント事業「ライブナタリー」などを展開。